【KAC20243】励まし方は計画的に【800文字】

ほわりと

第1話

「ぐすっ。すばるん、痛いよー」


 小学校の放課後に友達と公園で遊んでいたら七海が転けて膝を擦りむいてしまった。泣き止まないので、家が隣の昴が家まで腕を引いて帰っている。すると、昴が駄菓子屋を見つけた。


「あ、そうだ。ほら、あそこで駄菓子をひとつ買ってやるからさ。だから泣き止め、な?」


「駄菓子? なんでもいいの?」


「ああ、昨日お小遣いを貰ったからなんでもいいぞ。武士に二言はないっ!」


「あははっ。すばるんは武士じゃないでしょ」


「これはことわざだ。だから武士じゃなくても武士って言うんだよ」


 七海は「なにそれ」と笑いながら涙を拭った。駄菓子屋に入ると店内を見回り、駄菓子を見ていると七海が笑顔になってく。そして買いたい物を決めたようで商品に指を指した。


「すばるん、私これがいい!」


 それは一パック四個入りのおやつドーナツ。七海は嬉しそうに商品を持つとレジに向かった。欲しいゲームを買うためにお金を貯めてはいるが、八十円でこんなに笑顔になれるのなら安い買い物だ。そう思って昴がレジまで行くと、レジの表示を見て固まった。


「一箱千六百円だよ。こんなに買っていいのかい? 食べれるのかい?」


「うんっ。すばるんが買ってくれるって言ったから!」


 七海が店員のおばあさんと話している中、やっとの思いで昴が正気を取り戻した。


「誰も箱買いしてもいいなんて言ってないだろ。一箱じゃなくて一個にしろ」


「すばるん、これは四個入りだから一個だけは買えないんだよ」


「あのなあ、箱買いだと二十パックだから八十個になるぞ?」


「一箱はひとつの箱だもん。それに、なんでも買ってくれるって言ったでしょ。えーっと、かつお節には二言はないんだよね?」


「かつおは余計だ。まあ、一度言ったから仕方ないか。七海なんて励ますんじゃなかった……」


「やったー。すばるん大好き!」


「はいはい。どうせ駄菓子を買ってくれる人は、みんな大好きなんだろ?」


「そんなことないもんっ!」

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