お返しのクッキー

矢斗刃

お返しのクッキー

俺は高校を卒業して、進路も決まってこれから好きな子と別々の道に歩むはずだったが・・・

なんの因果かあの日チョコをもらったことにより状況が動き出して、彼女と付き合うことになった。

今日はそのお返しをしないといけない。

バックの中にはラッピングされたクッキーの箱が入れられている。

気合を入れすぎたか?気負うなよ。

まるで何かに立ち向かうかのようだった。

そう今日はホワイトデーなのだ。


いつもの待ち合わせ場所の駅に着く。

どうやらまだ待ち合わせ場所に来ていないようだ。

俺はスマホを開いて連絡が来ていないかを確認する。


”ちょっと待っててね。”


いつも微妙に遅れてくる。

なぜだろうか、わからなかった。

「待ったー。」と急ぎ足で来て声を掛けて来たりする

「いや、大丈夫!」

見つめ合いながら・・・

「行こうか。」と声をかける。

なんだか微妙な顔をされてしまうと言うのが一連の流れだったりする。

何かちょっといつも不機嫌だったりする。

「もう!」とか独り言を行っているので何か気に障ることをしているのかもしれない。

女の子はわからない。


彼女side

いつも遅れて来るのはちょっと身だしなみに気をつけたり可愛く美人に見えているか、鏡の前で見ていたりするからだ。

気付いたら時間になっていていつも遅くなってしまっていた。

それは申し訳ないともうが・・・もっとこうおめかししてきた女の子を褒めるとかあるでしょ!と言うのが彼女の本音だったりする。

「もう!」と言ってしまうのは仕方ない。

思わず背中を叩いた。

そんな私の反応に首を傾げる彼だった。

いつまでも気づかないかもしれない。


彼氏side

それから手を繋いで一緒に歩いて買い物をしたりするが・・・中々二人話すのが苦手みたいで初々しい関係のまま今まで来ていたりする。


もっと話したい、だけど心臓がバクバクで何を話したらいいのかわからなかった。

こんな関係で彼女は満足しているのだろうか?

お互いに目が合うと反らしてしまう。


彼女side

高校に入った時から時々見てくるなーと感じていて、それでも何も言ってこない。

おかしい。私結構可愛い方なのに、どうしてだろうと思っていたりする。

逆に私が目で追いだしたりしていた。

そしてたまに目があったりする。

平静をその時は装うが、目線が反らされたりしたら顔が赤くなっていたりしていた。

それを親友が見ていて。

「ははーん。」と何かを悟ったような目を向けられた時は何かムカついてほっぺたを引っ張たりしていたな。とバカみたいな事を思い出したりする。

そして親友の彼女から。

「貴女は彼が好きなのよ!このままじゃ後悔するわ!」とチョコを渡すように促されてしまった。

その日彼が休んだ事でほっとした私。

「まさか、ここまで来て逃げるの?」と彼女が挑発して来るので次の日、渡したりしていた。

その時ムカつくこと言っていたからちょっと怒ったけど・・・

それわ八つ当たりのように親友のほっぺたをつねり回していた。

「いひゃい、いひゃい。」と言っていたので溜飲が下がった。まぁ、親友のおかげでこうして一緒にいられるのだ感謝しなければ。

晴れたほっぺたでにやけ面してたので、感謝するのはなんだか違うと思い直した。

もう一回ほっぺたをつねり回して許すことにした。

今、こうして彼と一緒にいられるのはなんだかうれしかった。

特に何も喋ってないけど・・・それでも私の心はルンルンだった。

手を握ってちょっと嬉しそうに振っている姿に気付かない彼はどうかと思ったけどね。


彼氏side

俺達は今亀のように遅い交際をしている。

健全と言えば健全過ぎるだろうと言えるかもしれない。

しかし、時間は有限だ。

卒業後別々の場所に行くみたいだから・・・遠距離になってしまう。

今を楽しまないとそう思う。

別れたくない、離れたくない。

そう思っても時間は過ぎてもうデートの時間は終わりだったりする。


「それじゃ。」と行ってしまいそうになる彼女。

「待って。」と思わず声を掛ける。


振り向いてくれた。


「これチョコのお礼。」と震えている手で思わずクッキーの箱をグシャたかもしれない。

なんとなく自分が情けなく見えてくる。

「ありがとう。」と言って笑顔を向けてくる彼女。

俺は思わず抱き締めてしまった。

その衝撃でクッキーの箱を落としている。

心臓がバクバク言っている。このまま恋の発作で死んでしまうのではないだろうか?

そこまで身体全体が赤くなっているのかもしれない。

「行かないで欲しい。」と耳元でささやく。

「うん、私ももっと一緒にいたい。」

しばらく二人往来で抱き合っていた。


「食べよっか。」と彼女が言ってくる。

ゆっくり丁寧に紙包を取り、箱を開けると割れたクッキーのオンパレードだった。

「ああ、うん。」と戸惑いながら答える。

手でグシャたり、落ちたりした割れたクッキーを差し出してくる彼女。

「ほらあーんして。」

「えっえっ。」と戸惑いながらもかじりついた。


「割れてても一緒に食べれば一緒だよ。離れてても一緒に食べたんだから、一緒だよ。」

なにか怖いことを言ってる気がする。

「ああ、うん。」

彼の髪をかき上げながら彼女が耳元で囁く。

「浮気は絶対許さないから・・・。」と。


「あーうん。」

鼻先にに人差し指を突き付けて。

「よろしい。」と言っていた。


またそれから、イチャイチャをしながら、二人は夜遅くまでそこにいて・・・




















補導されてしまった。

未成年の遅い時間までの徘徊はやめましょう!

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お返しのクッキー 矢斗刃 @ini84dco5lob

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