第17王女
今現在、エリーにぶん投げられてグーンと空を飛んでおります。まずは武器の準備だ。というわけでワンドサイズのクリティカルロッドをベルトから外し魔力を注ぐとムククッと大きくなり打撃に最適な大きさになる。この持ち運びやすさも愛用している一端だよなー。ほんとダンジョンでいいものがドロップしたもんだ。しかしまずいな。このままだとあいつが魔法を打つ方が早い。しかもその視線の先には倒れて動けない親子の姿が。ちっ、胸クソが悪くなるな。おっ、親子を叩かれてた子がかばったぞ。うーん、仮に魔法を撃たれても俺が回復魔法を使えるから問題はないって言えばないんだが……女の子のかわいそうな姿は見たくないよね☆ というわけで挑発のスキルはないけどあの男の意識をこっちに向けさせましょう。大きく息を吸い込んで、さあ、いくぞっ!
ですがやはり大人になりたての子どもの浅知恵だったのでしょうか……わたしは見張られていたのです。王宮を抜け出せたまでは良かったのですがギルドにいく途中でやつに見つかってしまいました。やつのジョブは炎術師という魔法使い系のジョブ。レベルさえ上げることができれば力では私が勝るでしょうが天職を得たての私では難しいでしょう。そしてさんざん自慢された愛用の杖で私を打ち据えるのも飽きたのか、それとも私がまだどうにか逃げられないかと考えているのがわかったのか、それはわかりませんが魔術で生み出した火の玉を周りの人間に向けて”お姫様はこちらのほうがいい顔を見せてくれそうだ”といって……正直この後のことはよく覚えていません。やつに殴りかかったような気もするし、何もできずただ涙を流していたのかもしれません。ただやつの視線の先で子供が転び、親が助けようと駆け寄ったのをやつが私に意味ありげな視線をよこしたときには体が勝手に動いていました。
「屑だ屑だとは思っていましたがここまで屑だとは思いませんでした」
「はーっはぁ! 何言ってやがる。言っとくがお前が盾になっても止めねーからな! 女ってーのは穴さえついてりゃ十分なんだよ! 心配するな! たとえ肉塊になっても孕ませてだけはやるからよ!」
ああ……どうしてこんな事になってしまったんでしょう。あのまま王宮で大人しくしていればよかったのでしょうか? でも、嫌だったんです! 今まで散々見せられた素直になったという快楽を与えられてやつに追従するだけの人形に成り下がるのは! だから私は力を込めて睨みつけます。 対するやつはニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべたまま。もうどうしようもない私は神様にすがるしかありませんでした。ああ、女神様。どうか私を助けてくれとは言いません。せめてこの眼の前のクズに裁きの鉄槌をお与え下さい! するとどうしたことでしょう。なにか叫び声のようなものが聞こえてきました。しかもだんだんこっちに近づいてきて……
「Ruaaaaaaaaaaaaaaaaaai!!」
お、女の人が空を飛んできてるーー!! 私が願ったから神様が助けをよこしてくれたんでしょうか? って、やつが魔法の向きを変えました!
「あ、あぶなっ”ZuGaaaaaaaaaaaaaaaan!!”」
あ、あああ、なんということでしょう。私を助けに来てくれたであろう女の人はやつの魔法に焼かれて私の目の前に投げ出されました。……これは私の罪でしょうか? 普段信じてもいない女神様に都合の良いときだけ神頼みをする。なんと愚かなんでしょう。はっ、そうでした。冒険者になるにあたって持ち出したものの中に確かポーションが! しかしポーションを探り当て女の人に駆け寄ろうとしたところで私はあっけにとられてしまいます。
魔法に焼かれ倒れていたはずの女の人がやつから私達をかばうように立っていたから。
その姿は……魔法に焼かれてただれてしまった顔のハズなのに……とても神聖なものに思えて……
私はこの日、運命と出会ったのです……
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