ある転生者は天職を授かる

「次、ニーナの子、リオ」


 俺の名前が呼ばれたので前に出る。周りからはリオちゃん頑張れーって声援が飛んできたので振り返って手をふっておく。とうとう俺も10歳になって天職の儀を受けることになった。これで初期ジョブやら運が良ければスキルなんかを授かるんだが、ゲームのリオはヒーラーだったかな?

 エリーとトトリは去年受けてそれぞれ聖騎士とマジックユーザーのジョブを得ている。ゲームのとおりに……。聖騎士は攻撃寄りのナイトって感じで全体物理技も覚える使い勝手の良い職業だったのを覚えている。マジックユーザーは育てればほぼすべての攻撃魔法を覚えて強いんだけど初期は全属性の初期魔法を覚えている分パラメーターは低く設定されており言い方は悪いが主人公の餌にされがちな職業だ。そこまでレベルを上げずにクリアできるというのもあるし。ついでと言っては何だがエリーもトトリも下位回復魔法を少し覚えるので特にエクストラダンジョンなんてものが用意されてなかったゲームではそれで必要十分だったりする。俺は……データとりには使われたと思うがわざわざ連れ回してレベルを上げる酔狂なユーザーは少ないと思う。高位回復が必要な攻撃してくる敵が出てこなかったからね。そのてんはマジックユーザーと同じ不遇職である。ゲームの中では。

 この世界では10階より深いダンジョンはそれほど山のようにあるしそもそもゲームのダンジョンもたまたま倒した階層ボスが”無限射精”のスキルを得られるスキルストーンを持っていてそれに満足した主人公が探索を打ち切りエンディングへという流れだったと思う。だから10階より上の階層があってもおかしくはない。……まぁ全ては寝取られなければと言う前提がつくけどねー。

 いっときは俺も抗ってみようかと二人から距離を取ろうとしたことがある。でもね、ふたりとも押しが強いんですよ。好き好きオーラ背負って迫ってくるんですよ。二人してちっぱいで挟むのは卑怯だと思う。ゲフンゲフン、まぁすっかり絆されてしまったわけですはい。今では二人のことちゃんと好きだって言えますよ。


 そんなことをつらつらと考えながら魔法陣の中に入り神様に祈りをささげる。……神様……どうかマジカルおにんにんに対抗できるようななんかすごいスキルを授けてください! お願いします! 俺は脳を破壊されたくないです!


 かくして儀式は終わり俺のジョブが発表される。


「習得したジョブはヒーラー。そして珍しいことにセカンドジョブを習得しておる」


 そのことに周りがおおと歓声を上げる。だが俺はそんなことより神様に向かって”対マジカルおにんにんスキルお願いします。どうかよろしくお願いします!”と祈りをささげるのに必死だった。そして発表された俺のセカンドジョブは……


……”せいしょくしゃ”かぁ…… 回復と生産の効果とコストに大幅な補正がかかるらしい。……これって効果に生産があるってことはダブルミーニングだよね。ある意味神様に祈りが通ったんだろうけど……マジカルおにんにん相手には心もとないなぁ……


 なんて検分していると「天使ちゃーん」とエリーがこっちに向かって突進してきてじゃーんぷそしてそのまま俺のほうに……っておいあぶねえなぁ。

 なんて思いながらもしっかりと受け止めてやる。……俺のゲーム内での記号がショタ男の娘だったせいか俺の成長は鈍い。でもエリーは普通に成長するわけで、何が言いたいのかというと体格差がひどい。まぁ俺も男だから見栄を張りたいから鍛えてるけどさぁ、いつか受け止め損ねてけがをさせるんじゃないかと心配で仕方がないよ。


「天使ちゃん! 天使ちゃん! 天職は何だった?」

「ヒーラーだな」

「じゃぁ前衛と魔法使いと回復役かー。バランスのいいパーティーになりそうだね!」


 ……エリーとトトリは去年天職を授かったんだがもう一人パーティーメンバーを見つければダンジョンに挑めるにもかかわらず俺が天職を授かるのを待っていたのだ。ちょっと愛が重い気がしなくもないが嬉しく思う。じゃあこの一年何をしていたのかというとこの町を守る衛兵の訓練に混じったりギルドで魔法の勉強などをして経験値をためていたらしい。一年遅れなのを後ろめたく思っていたのだがちゃんと成長の場があるのは幸いだった。


 で、トトリはどうしたのかと周りを見回してみればエリーをうらやましそうに見てて……まぁトトリはちょっと引っ込み思案なところがあるからなぁ。俺は抱きかかえていたエリーを地面におろしてトトリに向かってこいこいのジェスチャーをする。

 するとトトリはちょっと戸惑いながらもテトテトと俺のそばまでやってきて……えいっというかわいい掛け声とともに俺に飛びついてきた。


 ちょっとトトリさーん、あんたもですか。体格差というものがあるんですからもう少しですねぇ……


 なんてことをエリーと比較して成長著しい部分におぼれながらつらつらと考えるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る