アフロ仏像はア☆フ☆ロ☆
『まだ来られないの?お盆なのに忙しいの?私も忙しいんだけど』
西へ西へと進む私の携帯には、母から鬼電が掛ってきます。
「皆もう手がかかる年じゃないし、ほっといても大丈夫だよ。寂しいとか言ってる?」
『全然。長女は北海道の友達の所に遊びに行ったよ』
そういえば、そんな話をしてた気がする。未成年だから泊るホテルの承諾書にサインしたのをすっかり忘れてた。しかしやるな、長女。さすが我が子よ。
などとは言えず、引き続き下の子の世話を頼み、私は奈良へと向かいます。奈良ではゲストハウスに予約をしていたので、ちょっと楽しみにしていたのです。
夏休みは宿が取りにくいと言われますが、1人ならどこにでも潜り込めます。行く先々で次の予定地の予約を取っていました。
ゲストハウスとは、普通の民家を改造した民泊の宿などを言います。共用空間と男女別の寝室。若い頃バックパッカーでもあった私は、どこでも寝られるし、人との距離感が近い宿が大好きです。
再び道に迷いながら夜遅く着いた宿で、優しそうなご婦人が出迎えてくれました。共用スペースの説明を聞き、疲れ切っていた私は予約したベッドで爆睡しました。
翌朝、奈良市内の観光に出かけようとすると、ご婦人が言いました。
「お客さん、運がいいね。今、アフロの仏像が特別に御開帳なんやけど。滅多に見れんから行くとええよ」
「何それww絶対見に行く。ありがとう」
教えられた
五劫(とてつもなく長い)の間、法蔵菩薩が座って修行され、阿弥陀仏になった瞬間の姿を象ったものです。あまりに長い間思惟していたので、
めっちゃファンキーやな。
私は罰当たりにも阿弥陀仏の頭上に煌めくミラーボールを妄想しながら寺院を後にしました。
奈良公園で鹿に服を食べられ、べっとべとになり。あまりに暑かったので、路地で昼飲みのバーを見つけて潜り込み。バーテンとどうでもいい話をしながらクーラーで涼みました。
その後もフラフラと徘徊は続きます。路地の突き当りまで行くと、暇そうな占い師に声を掛けられました。「
「計算時間かかるからPCでやりますね」(客は私1人)
「はあ」
「あら、旦那様に愛されてるのね。大事にしてあげなさいね」
「鬱陶しいので捨てました」(酔っ払い)
「まあまあ。しょうがないわね。あなたあけっぴろげで子供みたいな人だからね」
「そうすか」
なんだかよく分からないけど、喋りたかっただけらしいマダムに付き合って、マケてもらったので良しとします。
外へ出ると、すっかり夜になっていました。国立博物館の辺りをぶらぶら歩いていると、何やら人だかりが。あちこちで蝋燭の火が灯り、幻想的な光がキラキラと輝いています。
私はSNSで写真を公開し、友人達に聞いてみました。
『なんか人集まって蝋燭灯しとる。あれ何?』
『
毎年お盆時期に見られる奈良の燈花会。ぬるい夏の風に吹かれ、酔いどれながら見る蝋燭の炎は、ダンスフロアのミラーボールのようでもありました。
私はアフロ仏像のことを思いながら、しばらくそれを眺めていました。
つづく?
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