ダブル・ブッキング

冷門 風之助 

 プロローグ

荒い呼吸をしながら、俺は身体のあちこちを探った。

右の太腿、左の頬。

掌に血が付く。

特に右の太腿は貫通してはいるが銃創が残っている。

左頬はかすった程度だが、それでも安心は出来ない。

俺は手早く止血テープを取り出し、まず頬に貼りつけ、ついでにポウチの中から縫い針を出して太腿を縫った。

不思議と痛さは感じなかった。

取り敢えずこの場を生き延びなければならない。

残弾を確認し、シリンダーを振り出すと、拳銃を満腹にした。

真っ暗闇のジャングルだ。

頭を上にあげると、椰子だか棕櫚だかの隙間から星が見えた。

物音は聞こえない。

だが気配は確実にある。

俺の手元にはM1917リボルバーと、AK47が一丁。

これだけでこの場を切り抜けなければならない。

”仕方ないな”

 俺は思った。

 これも自分のモットーを破った報いだ。

 

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