やがて魔女になる少女と魔女の弟子
双柳369
プロローグ
魔女の弟子と契約
寒い。ここは何処だ?
街中?どうなってる?よく思い出せない。
繁華街か?誰も気にも留めないな。
こんな死の間際に人の冷たさを知るとか、我ながら嫌な人生の幕引きだ。
あぁ、やばい。眠たくなってきた。
寝たら死ぬって分かってるのに目が開かない。
少年は静かに目を閉じる。
そのまま息を引き取る筈だった。
そのままゆっくりと生を終える筈だったのだ。
「女?いや男か」
未だ意識がはっきりとしない少年の耳に女の声がした。
「おい。治してやったんだから早く起きろ」
聞き慣れない女の声。
少し甲高いその声は大人と言うには落ち着きがなく子供と言うには大人びていた。
子供以上大人未満という言葉がぴったりだ。
目を開くとそこには見目麗しい少女がいた。
歳は俺と同じくらいか?14〜6歳といったとこだろう。
少女の存在を知らしめるかの様に際立つ青色の髪と瞳は夏の海や空を思わせた。
「おい!聞いてるのか?無視?いや私が無視されるなんて事はあり得ないな。なら聞こえてない?聴力が戻ってないのか」
目の前の少女の姿をただ呆然と眺めてしまっていたせいでシンプルに彼女の事を無視してしまった。
その事を悪いと思い、何やらブツブツと独り言を話し始めている彼女に声を掛けた。
「わ、悪い。無視して悪かった。君が直してくれたのか?なら大丈夫だ。耳も聞こえている」
「わ、私を無視したのか…」
「ああ、悪かった。本当に反省している」
「納得いかない点もあるが、まあ許そう」
そういって少女は白い息を吐き話を続けた。
「お前は私が治した。つまりは私は命の恩人だ。そうだろう?」
確かにその通りだ。
別に死なせてくれてもよかったのだが、死にかけの俺を話せる程度まで直してくれたのは彼女だ。
俺は彼女の言葉に深く頷く。
「なら、私に対して恩を返すのが筋ってもんだろ」
「それもそうだな」
「なら恩を返すと言え」
「……恩を返す」
少年は少女の言動を不思議に思いながらも言われた言葉を復唱する。
その姿を見て少女は不敵に笑った。
「よし!ここに契約は結ばれた!以降、貴様は私の下僕とす!」
「はぁ!?」
なんという女だ!
恩を返すという言葉を契約の了承と捉えて無理矢理契約魔術を発動させやがった!
契約魔術の効力は発動者の思うがまま。
つまり俺は一生コイツの下僕。
はあ気づいたら死にかけていて助かったと思ったらこれかよ。最高にツいてない。
「私は双柳蒼華。歳は15。お前は?」
「響。歳は…多分14」
「私の方が歳上だしお姉ちゃんと呼んでもいいぞ。響」
謎理論で姉呼びを強制してきた。
「随分とヤバいご主人様だな」
そう言って響は差し出された蒼華の手を取り、立ち上がった。
「んじゃ、これからよろしく」
「こちらこそ」
未だ寒さを残しながらも春の訪れを感じさせる3月。
やがて魔女になる少女と元魔女の弟子の歪なコンビが誕生した。
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