ソードマスター

雨宮結城

第一章 学園編

Episode 1

100年以上前、地球に未知のエネルギーが宇宙から降り注がれた。


そのエネルギーに選ばれた者は、魔力と呼ばれる魔法の力を扱う超人へと進化した。


最初は地球人口のおよそ30%のみが選ばれていたが、時が進み現在、超人人口がおよそ80%を越えた時代では、普通の学園の他に、剣士を育てる学園が誕生し、そこに所属している生徒達は、〈ソードマスター〉と呼ばれる最強剣士へとなる為に、毎年行われる剣士同士で競い合うフェスティバルで名を挙げ、己を高めていた。


都内3箇所に存在する剣士学園、北の【レック】 南の【ヨト】 中心部に存在する 【ミスト】


この3校が、ソードマスターを目指す少年少女たちの戦いの舞台。


そして今、その内の1校であるミスト学園に入学した少年〈峰村涼太みねむらりょうた〉と天才少女〈サラ・ツインベール〉


この2人の出会いから、物語が始まる。


「ミスト、ここなら退屈はしないかな」


峰村涼太みねむらりょうたは、ミスト学園に入学するまで、退屈に満ちた人生と自身が思う程、人生に刺激が無かった。


そして刺激を求め、剣士学園の1つであるミストに入学した。


「えーと体育館ってどっちだっけな」


そして早速迷子になり、体育館が見つからずに困っていた。


「ここ広すぎないか? 体育館ってもっと分かりやすい所にあるでしょうよ」


「体育館なら、この道を真っ直ぐ行って右に曲がればあるわよ」


困っている中、一人の少女に声をかけられる。


「? 貴方は?」


「私はサラ。サラ・ツインベール」


「ありがとうサラさん。 よく体育館の場所知ってるね」


「そりゃあ校門に思いっきり地図あるし、貴方こそ何で分からなかったの?」


「あれ、マジで? あちゃー、ボーッとし過ぎたかな」


「それより、驚かないのね」


「ん? なにが?」


「私の名前を聞いて。 貴方は一切驚いていないから」


「名前? あぁそゆことね」


「他の人は、私の名前を聞いたら結構驚くのよ」


「そりゃあ驚くよな」


「でもそうね、貴方みたいな驚かない人が1人でもいるなら、なんか気持ちが楽になるわ。 ツインベール家の人間ってだけで……」


「可愛い名前だよね」


「__はい?」


「いやだから名前だって、外国の人? サラ・ツインベール、可愛い名前だと思うよ!」


「……貴方、なにを言ってるの?」


「え? カワイイ名前だから、皆驚いたりするんだろ?」


「違うわよ」


「え? じゃあなんで?」


「……貴方、ニュースとか見る?」


「壊滅的に見ないな!」


「なるほどね。 私は、ツインベール家の人間なの。 分かりやすく言うなら……名家ってことよ」


「え、マジで」


「マジよ」


「お嬢様ってことか!」


「やっぱり驚くのね」


「だって……まあ、そうか」


「?」


「こんな時代だしな。 お嬢様も剣士学校か」


「__それだけ?」


「え?」


「女子だから、お嬢様だから剣士の世界に相応しくないとか、貴方は言わないのね」


「いやだって、自分で望んで来たんだろ? そこにいちゃもんつけちゃ失礼だろ。 俺はそう思うけど、アンタは違うのか?」


「__いえ、私の周りの男子と意見がまるで違うから、少し驚いただけ」


「そっか、でも俺もビックリしたよ」


「なにによ」


「入学式まで、あと5分ってこと」


「__!? え! 5分!? 何で言わないのよ!」


二人は遅刻しない為にも、走った。


「だってまさか自分の時計がバッテリー切れなんて思わないだろ!」


「充電しなさいよ! てか余裕もってもっと行動しなさいよ!」


「アンタもだろ!」


「私はアンタが馬鹿みたいに校門でうろちょろしてたから声掛けてあげたんじゃない!」


「それは! ありがとう!」


「こんな事で遅刻なんて私はゴメンだから!」


「そりゃあ俺もだよ!」


なんやかんや二人は言い合いながらも、なんとか入学式に間に合い、無事ミスト学園に入学する事ができた。


「(あっぶねー、初日から遅刻はマジでアウトだからなぁ。 助かったぁ)にしても、周りの人、あの人にめちゃ驚いてたな。 確か名前は」


「サラよ」


「そうサラ……って」


声が聞こえ振り返ると、そこには先程まで言い合っていた少女がいた。


「またアンタか」


「またって! 失礼な奴ね。 少しは周りみたいにしたらどうなのよ」


「崇めろってか? てかそれ自分で言っちゃうのね」


「!! と、とにかく、私はソードマスターになる為に忙しいの。 まあそれは貴方もでしょうけど、精々この学園で這いつくばって生き残ることね」


「ひでぇ言いよう」


「ふんっ!」


話し終えると、サラ・ツインベールは峰村涼太の元から去っていった。


「まあひとまず、この学園には入れたし、ここなら少しは楽しいよな」


廊下から空を見ながら、峰村涼太は昔のことを思い出していた。


それは中学生の頃や幼い時に体験した苦い思い出。 峰村涼太には母親がいなく、 峰村和也みねむらかずや(父親)と峰村響也みねむらきょうや(祖父)の3人で暮らしていた。


母親がいつからいないのかは覚えていないが、それが原因でイジメの対象になっていた。


それ故に転校を繰り返し、気づいた時には、世界がモノクロになるほどに、人生に疲れていた。


「(もうあんな思いはごめんだ)」


考え事をしながら歩いていた時、曲がり角を曲がった先に女の子がいた為、ビックリしつつも空中に飛びその子を かわした。


「ごめん、大丈夫か?」


「えぇ、私は大丈夫。 それにしても今の動き、凄かったわ」


「それは、ありがとう。 ってそのバッチの色、2年生、先輩でしたか」


学年によって、バッチの色が違い、その色で何年生か判別している。


1年生 赤


2年生 青


3年生 紫


当然峰村涼太とサラ・ツインベールは赤色のバッチだ。


「えぇ、でもそんなかしこまらなくていいわよ。 自己紹介がまだだったわね。私の名前は、カレン・トーマスランド」


「(また外国の名前だ)えっと、カレン先輩で良いですか?」


「えぇ、君の名前は?」


「俺は峰村涼太みねむらりょうたです」


「峰村涼太君ね」


「はい」


「__」


「?」


「よろしくね、涼太君。 ミスト学園へようこそ」


カレン・トーマスランドは、右手を出し、握手を求めた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


二人は握手を交わした。


「早速で悪いんだけど、私人を探してるの、涼太君知らないかな?」


「えっと、その人の名前とか分かります?」


「名前は、サラ・ツインベール。 私のライバルです」

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