26話 交流会①
前書き
今回はテスタとコンスタンスの不快な発言があるので、苦手な方は読み飛ばしてもらって大丈夫です。最終的にこの2人は利用されて生贄になるので安心して下さい。
ロレッタ視点
「それでね……大変だったんだよ」
1週間に一度のお茶会の日が来て、私は膝の上で丸くなっているシャーロットを撫でながら、カトリーヌとバーバラに授与式で起きた事を説明した。
「酷い話ね」
「そんな事が起きてたの?」
2人は驚いた表情で話を聞き入っていたが、無事にテスタとコンスタンスが追放されたと知ると、ほっと胸を撫で下ろした。
「でも、気をつけるよの。私が言うのも変だけど、嫉妬深い奴らは一度や二度の事では反省しないからね」
バーバラは複雑な表情で私に警告する。やっぱり以前、悪魔に支配された事を気にしているのかな?
「ありがとう。そうするわ」
その後は2人の近況報告などで盛り上がりつい喋りすぎてしまった。
バーバラはハタマ村の領主として責務をまっとうしつつ、他の村にも訪れて農業のお手伝いをしたり、要望に答えているらしい。
そのおかげで食料事情は大幅に改善された。飢餓で亡くなる人が格段に減り、市場には新鮮な野菜が出回る様になった。
一方カトリーヌは、医療学校で研究を重ね独自の回復薬を完成させたらしい。その効果は絶大で、よく怪我をする騎士たちから好評を得ている。
最近だと他国でも好評でまた買いたいと言われた。2人とも頼もしいな〜
「それじゃあまた、今度ね」
「さようならロレッタ」
「またねロレッタ」
2人が帰っていくと、入れ替わる様にユーゴがやってきた。どこか浮かない顔をしている。これはまた何か悪い噂でも仕入れてきたのかしら?
「どうしたのユーゴ? また何かあったの?」
「はい……実はロレッタ姉さんが追放したテスタとコンスタンスが隣国に保護されて、復讐を計画しているとか……」
「懲りないわね……バーバラの言った通り嫉妬深い奴らは一度や二度の事では反省しないんだね」
私は「はぁ……」っと深くため息をついてシャーロットの頭を軽く撫でてあげた。毎回ユーゴが来る時は面倒事が始まる時だ。今回も忙しくなりそうね……
「分かったわ。毎回の事で申し訳ないけど、調べてもらってもいいかしら?」
「お任せください! 下っ端たちも総動員して調査してきます」
「ありがとね。あのさ……もしよかったら私の近衛兵にならない? ユーゴが側にいてくれると凄く助かるのよね〜」
毎回、ユーゴの調査にはお世話になっている。元第一王子のアランを失脚させる時や、ティアラの授与式の時も全てユーゴとその手下が集めた情報のおかげで助かった。彼らが近衛兵になってくれると心強い。
「よっよろしいのですか? ありがとうございます。とても光栄です!」
「ふふっ、これからもよろしくね。早速だけど2人の追跡をお願いしてもいいかしら?」
「お任せください!」
ユーゴは頼もしい返事をすると、早速仕事に向かった。それにしても王妃というのは大変ね……いつかのんびりと過ごせる日が来るのかしら?
* * *
第二王子 カール(弟)視点
「ペルシス王国を攻める? 何を言ってるんだ兄さん!」
ここはロレッタ達が治める国の隣国。その名はアシリア王国。宮廷内では、第二王子(弟)のカールが、兄である第一王子アンドレイの話を否定していた。
「隣国同士仲良くするべきだ! 争いをしても何も生まれない!」
「お前は何も分かっていないな……いいか、隣国とは奪うためにある。支配下にしてそこから大量の賠償金を受け取る。それの何が悪い?」
兄さんは全く悪びれた様子もなく、呆れた顔でため息をつく。
「争いは憎しむを産む……いつか仕返しを喰らうだけだ!」
「だったらまた力で抑え込めばいい。そのための国民だろ? あいつらは俺の手となり足となって戦うのが仕事なんだ。それで死ねたらあいつらも本望だろう」
「国民は争いなんて求めていない! ましてや兄さんのために死にたい人なんていないよ!」
「黙れ! 兄に向かって何だその口の聞き方は! 弟であろうとその首を切り飛ばしてやろうか?」
「…………」
僕は言葉を飲み込んで歯軋りをした。兄さんなら本当にやりかねない……これ以上反抗するのは危険だ……でも放置するわけにはいかない!
バチバチと2人が睨み合っていると、申し訳なさそうに兵士がやって来た。
「アンドレイ第一王子、ペルシス王国より追放された者を保護したのですが……いかがいたしましょう?」
「追走者か? 面白い、話を聞こうじゃないか」
兄さんは僕の話を一方的に切り上げると、ペルシス王国からの追放者がいる部屋に行ってしまった。
* * *
第一王子、アンドレイ(兄)視点
「さてと、お前たちがペルシス王国からの追放者だな」
早速アンドレイは追放者がいる部屋まで訪れると、2人を見比べた。片方の男はチビでデブのおまけにハゲ頭をしている。もう片方の女はげっそりとした顔つきに細い目をしている。
容姿は見るに耐えない悲惨なものだが、瞳には強い憎しみが宿っていた。これは使えそうだな……
「では話を聞かせてもらおうか」
2人の追放者はその言葉を聞くと、川が決壊したような勢いで話し始めた。
「初めまして、テスタと申します。聞いて下さいアンドレイ様! ロレッタが私を追放したんです! あんな女に王妃が務まるわけがありません! 私こそが本当の王妃に相応しいのに!」
テスタと名乗る女は目を釣りあげて不満をぶちまける。相当憎んでいる様子だ。
「コンスタンスと申します。ロレッタ王妃は国民と一緒に働く下民みたいな女です。とても王妃には見えません。本来貴族や王族は贅沢三昧をすべきなんだ! それなのにあの女が朝から晩まで働くせいで我々がサボっているように見えるじゃないか!」
コンスタンスと名乗った男も忌々しそうにロレッタの話をする。なるほど、これは使えるな……
「よし分かった。ここは一つ協力しようじゃないか。今度の交流会の時にロレッタをおびき出す。そして暗殺する。君たちは憎き相手が倒せる。俺は王妃を失って狼狽している所を狙ってペルシス王国を占領する。どうだ? 完璧な計画だろ?」
「素晴らし計画ですアンドレイ王子!」
「ぜひ我々も協力させて下さい!」
2人は即答で頷く。うん、いい返事だ。
「ちなみにですが、ロレッタはどのように殺しますか?」
コンスタンスが醜い顔を歪ませて不気味な笑みを浮かべる。
「特に決めてないな……何か要望があるのか?」
「はい、是非ともあの女には辛い方法で処刑させて下さい! 散々痛めつけて苦しませてやりましょう!」
コンスタンスのアイデアにテスタも賛同する様に頷く。
「それはいいアイデアね。せっかくだから見ぐるみを剥がしてやりましょ! 裸にさせてナイフで切って傷口に塩を塗るのよ。ロレッタには一番辛い方法で死んでもらいましょう!」
「それだけじゃないぞテスタ、まずはロレッタの仲間を目の前で殺すんだ。そして精神的に追い詰めて絶望を植え付ける。あの女はそう簡単には死なせない。ありとあらゆる方法で苦痛を与えるんだ!」
「流石、コンスタンス公爵ですわ!」
2人は楽しそうにロレッタを殺す方法を出し合って互いに褒め称える。こいつらの憎しみは相当深い。もしかしたら切り札の生贄にも使えそうだ。
俺は密かに計画を企てると、愚かな追放者2人を鼻で笑った。
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