24話 天使と堕天使のティアラ②

前書き


今回はテスタのクズ発言が続きますが、25話で「ざまぁ」をするための伏線なので、苦手な方は流し読みで大丈夫です。



テスタ視点


 ティアラの授与式は厳かな雰囲気の中始まった。公爵やそのお連れの者だけが参加を許されたこの会は、どこを見渡しても有力者だらけだった。


 何だか自分だけが場違いな気がする。でもそう思うのも今だけ、私が王妃になればこいつらなんて手や足の様に使えるのよ!


「王妃ロレッタ様のご登場です」


 ゆっくりと扉が開いてロレッタがクリフト様にエスコートされながらやって来た。悔しけど今日の彼女は目を見張るほど美しかった。


 長い金髪を髪飾りでまとめ、白いドレスは清楚な雰囲気を漂わせている。露出した肩はなだらかな曲線を描き、同じ女性でも見入ってしまう程の美しさと色気を兼ね備えていた。


(ふふっ、だけどそうしていられるの今のうちよ。誰が王妃に相応しいか証明してあげるわ!)


 私がチラッと横をむいて視線を送ると、無言でコンスタンスが頷いた。さぁ、始めましょう。


「では、ティアラの授与を始めます。ロレッタ王妃、前にどうぞ」


 全員が固唾を飲んでロレッタに注目する。そして決定的な瞬間が訪れた。ロレッタが天使のティアラを被った瞬間、


「なっ……どういう事だ!?」


「こっ、これは一体?」


 ガヤガヤと公爵たちが喋り始め、ロレッタやクリフト様も明らかに動揺する。ふふっ、やっぱりロレッタは認められなかったのね。


「全員、道をあけなさい!」


 私は堂々とした口調で高らかに宣言すると、ロレッタの前に向かった。


「ふふっ、やっぱり貴方に王妃の資格なんてなかったのよ。庶民と一緒になって働く何てバカバカしい。貴方は下女がお似合いよ! 私の下女になって働かせてあげましょうか?」


「貴様! ロレッタになんて事を言うんだ!」


 クリフト様が目を釣り上げて怒鳴り出す。あらあらそんなに怒って〜 よっぽど悔しいのね。


「あら? 王妃の私にそんな事を言ってもいいのですか?」


「王妃? ふざけるな! お前なんかが王妃なわけない!」


 クリフト様はさらに肩を震わせて私を睨む。ふふっ、そんなに怒ったら美しい顔が台無しだわ。


「では、私が王妃である事を証明してあげますわ!」


 私はロレッタから奪うように天使のティアラを取ると自分の頭に乗せた。すると、黒く染まっていたティアラが光輝いた。


「えっ、嘘でしょ?」


 目の前に現れた真の王妃の誕生にロレッタも目を見開いて驚く。


「さぁ、皆さん、今日は私のために集まって下さりありがとうございます! これからは私……テスタが王妃です。コンスタンス公爵、前に出て来てもらえますか?」


 コンスタンス公爵は私の前に膝をつくと、敬う様な態度で頭を下げた。


「この度はティアラに認められた事を心からお喜び申し上げます。テスタ王妃」


「ふふっありがとね。コンスタンス公爵の協力には感謝するわ。何でも望事を言いなさい」


「では、私にを与えて下さい」


 またしてもザワザワと公爵の間で会話が飛び交う。「それはダメだろ!」「今すぐその発言を撤回しろ!」などとヤジを飛ばす人もいる。うるさいわね……


「誰が私語をしていいと命令したの? お黙りなさい!」


 私の一喝によって会場が静まり返る。有力者たちが自分の思い通りに動かせるのは最高ね!


「コンスタンス、貴方に国王の座を与えるわ」


「ありがとうございます」


 コンスタンスはもう一度深く頭を下げると、私にだけ分かるように目で合図を送ってきた。分かってるわよ。あの2人の始末でしょ?


「それに比べてクリフトとロレッタは無能ね。貴方たち2人のせいでこの国はダメなのよ。その責任はきっちり取ってもらうわよ」

 

 私は一度咳払いをすると、一言一言、噛み締める様に宣言した。


「王妃テスタの名において命令する。無能なクリフトとロレッタに極刑を言い渡す。これは勅令よ!」


「「──きょっ、極刑!?」」


 ロレッタやクリフトはもちろん、その場にいた全員が驚愕する。確かに国王と王妃に対して極刑を言い渡すなんてありえない。でも今の私は王妃なのだから問題ない!


「衛兵たち! この王様と王妃を独房に連れて行きなさい!」


 私は手を叩くと、衛兵に命令を下した。


「ふふっ、これからは私の思い通りよ! まずは税金をあげましょう。それで贅沢三昧をするのよ。庶民は私の幸せのために働くべきだわ! あとそれから新しいドレスもいるわね。自分専用のシェフも用意しようかしら? ふふっ、考える事が多くて大変ね〜」


「そんな自分勝手が許されるわけないでしょ! 貴方に王妃は務まらないわ」


 兵士に捕えられならがも必死にロレッタが反論する。


「あら? 王妃に口答えするなんていい度胸ね。よく聞きなさい、庶民は牛や羊と同じよ! 家畜の様に管理して税金ミルクを搾り取ればいいのよ。庶民は貴族の生活を支えるのが宿命よ!」


 これからの生活を妄想して楽しんでいると、ロレッタとクリフトが困った様な表情で顔を見合わせていた。


「ロレッタ、そろそろこの茶番も終わらせないか? 流石に限界だよ」


「そうね。もう十分、分かったわ」


 2人が合図を送ると、兵士たちは拘束を解いた。


「茶番? 何を言ってるの?」


「そのままの意味よ。ユーゴ、例の物を持って来て」


 ロレッタが指示を出すと、背の高い茶髪の男がもう一つのティアラを抱えてやって来た。見たほぼ同じ。中央に嵌められた宝石が少し違うくらいかしら?


「残念だったわねテスタ。本物のティアラはこっちなの。貴方が被ったのは使。つまりよ」

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