10話 浮気者のアランを論破する①
今回と次回は、ざまぁ回です!
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第一王子、アラン視点
「皆んな、今日はボクのために集まってくれてありがとう」
第一王子のアランは結局兵士の忠告を無視して朝まで酒を飲み続けて建国記念日に参加した。
一年に一度のパーティーという事で生徒たちは気合を入れてオシャレをしている。でもボクから言わせてもらうと、どいつも不格好で笑えてくる。
「えっと……今日はこの場を借りて報告があります。ボクはキャトラと結婚します!」
突然の報告に生徒たちはザワザワと話し始める。ボクは会場が静まるまで待つと婚約相手のキャトラをステージに上がらせた。ふとカトリーヌと目が合ったが予想通りないも言わずに黙り込んでいた。
よしよし、計画通りだ。どうせカトリーヌはこのまま何も言えずに黙ったまま過ごすはずだ。しかしボクも罪深い男だな。ボクが美しいばかりに多くの女性を知らず知らずのうちに魅了させてしまう。あぁ〜 自分が怖い……
「ねぇ、アラン? 酒臭いけど、昨日も飲んでいたの?」
背中を突かれて自分の世界から戻ってくると、キャトラが呆れた顔で聞いてきた。
「あぁ、飲んだけど? 大丈夫だよ酔ってないから。まぁ自分の魅力にはいつも酔いしれているけどね」
キャトラは何か言いたげだったけど、何も言わずにため息をつく。
「さぁ、婚約指輪を受け取ってくれ!」
ボクはポケットにしまっておいた指輪を取り出した。そしてキャトラの指にはめようとした時だった。
「待ちなさい! 貴方はカトリーヌと婚約するんじゃなかったの!」
突然、誰かが大声を出して会場が静まりかえる。驚いて振り返ると、声の主は金色の髪が美しい女性だった。
* * *
ロレッタ視点
「待ちなさい! 貴方はカトリーヌと婚約するんじゃなかったの!」
私は生徒の間を抜けてステージの前列まで向かうと、アラン王子を見上げた。
「えっ、なっ、何を言ってるんだ君⁉︎ カトリーヌとボクが婚約? 何の話なんだ? それに君は一体誰なんだ?」
「申し遅れました。ロレッタと申します。ここ魔法学校に通う生徒であり、カトリーヌの親友です」
突然の事に周りで見ていた生徒たちも同様してざわつく。
「ねぇ、どう言う事なの?」
ステージの隣にいるキャトラも眉を顰めてアラン様を問いただす。
「しっ知らないよ! カトリーヌなんて名前の女性は初めて知ったよ! そっ、そうか分かったぞ! ボクが結婚する事に嫉妬して出鱈目を言ってるんだ! こんな事をして許されると思うなよ!」
「出鱈目を言っているのは一体どっちでしょうね」
私はカトリーヌに目で合図を送った。すると、小さく頷いて首に巻いたスカーフを貸してくれた。そのスカーフには金色の糸でカトリーヌと刺繍されていた。
「これはアラン王子が送ったものですよね?」
「なっ‼︎‼︎ ちっ違う! 断じて違う!」
アラン王子は必死に首を振って否定する。でもその慌て様は誰が見ても怪しさが溢れていた。
「どっどうせそれだってボクに嫉妬して自分で作ったんだろ? やれやれ惨めな女だな。そんな事までしてボクの気を引こうとしても無駄だからな!」
私はアラン王子の言い訳を聞きならが内心深いため息をついた。そっちからカトリーヌに手を出したくせによく言うわね!
「そのスカーフをボクが送ったと言うなら証拠を出してみろよ!」
アラン王子は強気な表情で私を見下ろす。もちろん証拠は掴んでいる。私の子分たちはとても優秀なんだから。
「刺繍屋のオーナーによると、カトリーヌの名前入りスカーフを作るよう命じられたと証言してくれました。ちなみにその際の領収書もあります」
領収書を見せると、アラン王子は怒りで体を震わせて苦しい言い訳を始めた。
「別にカトリーヌの事が好きで送ったわけではない! たった一つの贈り物で勘違いする方が悪い!」
(やれやれ……ああ言えばこう言う。いいでしょう。だったらとことん潰してあげましょう)
「では好きでもない人にもわざわざ名前入りのスカーフを送るのですか?」
「あぁ、そうさ、ボクは王子様だからね! お金はいくらでもあるのさ!」
(そのお金は国民が一生懸命働いて収めた税金でしょ?)
「そうですか……おかしいですね。刺繍屋のオーナーによると、金の糸でイニシャルを頼まれるのはとても稀な事だと言っていましたが……」
「べっ、別の刺繍屋にお願いしたんだよ! そんな事も分からないのか?」
アラン王子は小馬鹿にした口調で品のない笑みを浮かべる。私は適当に聞き流すと心の中でガッツポーズをした。
「そうですか別の刺繍屋ですか……その際もこの金色の糸で名前を書いてもらったのですか?」
「あぁそうさ。ボクは君たち庶民とは違ってお金持ちだからね!」
アラン王子は腰に手を当てて自慢げに胸を張る。私は首を傾げると、とぼけた口調で続きを語った。
「別の刺繍屋ですか……不思議ですね〜 金色の糸は私が話を聞いた刺繍屋でしか取り扱っていませんよ」
あんな豪華な糸がどのお店でも取り扱えるとは思えない。そこで子分たちに調べてもらったら、案の定、金の糸を使っているのはその一軒だけだった。
この一言にアラン王子の顔色が青く染まり、隣にいた婚約者の顔は怒りで赤くなる。静かに事の成り行きを見守っていた生徒たちも一斉に敵意の籠った目でアラン王子を見上げた。そろそろ頃合いね。
それにしても子分たちは本当によくやってくれた。まさかここまで調べてくれるとは……彼らには凄い才能があるんじゃないかしら?
「カトリーヌ、貴方からも何か言ってあげなさい」
私はカトリーヌの背中をそっと押してあげた。さぁ、準備は整ったわよ。
「もういいですよ……アラン様が誰かと浮気をしているのは薄々感じていましたから……ですがアラン様が本当に好きなのは
カトリーヌもとぼけた口調で尋ねる。この一言がさらにアラン王子を修羅場に突き落とす事になった。
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