8話 一方その頃バーバラは……
バーバラ視点
「どうして私がこんな事に……」
貴族の地位を剥奪されて、痩せ干せた土地のハタマ村に追放されたバーバラは、1人絶望に満ちた目で村を見渡した。
風が吹けば吹き飛びそうな質素な建物が立ち並び、ドレスや宝石が売っていそうな店は1つもない。あるのは山と田んぼと川だけ……一体ここでどう生き延びればいいの?
「あら、若い子が来るなんて珍しいわね。どうしたのかしら?」
村の前で突っ立っていると、腰の曲がったお婆さんが笑顔で出迎えてくれた。
「今日からこの村に住む事になったバーバラよ」
正確には王宮から追放されたのだけどね……
「あら本当に? 嬉しいわ。この村には若い子がいないから助かるわ!」
お婆さんは村の人を急いで呼びに向かった。しばらく待っていると、大勢のお年よりが集まってきた。どうやら本当に若い人は自分以外いないようだ。
分かったわ……こうなったら何がなんでも生き延びてやる! そして必ずロレッタに復讐を果たすのよ! 私をこんな目に合わせたことを絶対に後悔させてやる!
まずはそうね……食料を確保しなくちゃ。土地も一から耕やさないといけないわ。いいわよ。やってやるわ! ロレッタに復讐するまでは死ねないわ!
「おばさま、鍬を1つ貸してもらえませんか? それから肥料もあれば助かるのですが……」
私は鍬を借りると、怒りと憎しみを込めて痩せた土地を力任せに耕し続けた。
それから数ヶ月後……
「バーバラちゃんは働き者だね〜 おかげで今年は豊作だよ」
「バーバラちゃん、たまには休んでもいいんだよ?」
「バーバラちゃん、この前は荷運びを手伝ってくれてありがとね」
気がつくと私は多くの人から感謝されて、村一番の働き者だと言われる様になっていた。
「おはようございます、皆様。また人手が必要な時は私に言って下さい。決して無理はしないでください」
お爺様とお婆様たちは各々感謝を述べると、この前作業を手伝ってくれたお礼と言って野菜を分けてくれた。
でも、私が皆んなを手伝うのは全てロレッタの復讐を果たすための些細な事に過ぎない。彼らにはこの土地で生きていく知恵がある。もし死なれたらもう頼る事が出来なくなる。それは自分の死に直結する。
「さぁ、もうすぐ冬が来るわよ。でも安心して、今年はこの私がいるのよ。必ず全員でこの冬を乗り越えるわよ!」
「「「「「おぉ!!!!!」」」」
私は鍬を担ぐと今日もまた田んぼの作業を始めた。不思議な事に初めは嫌だったけど、最近は楽しんでいる自分がいる。
一から土地を耕して作った野菜はシェフが作った料理よりもはるかに美味しく感じる。それに村の人に感謝されるのも悪くない。
朝は日の出と共に起きて日中は畑作業をする。そして帰ってきたら採れたての野菜を頂く。そんな日々が確実に私の心に変化をもたらした。
「うん、こっちの作物は順調ね……でも向こうの土地はいまいちね……肥料を変えてみようかしら?」
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