◆姉ちゃんの大技でトラウマ克服!?
糸でくくられ、垂れ下がる五円玉。
それを俺の目の前で揺らす姉ちゃん。
って、まてまて。まさか『催眠術』でトラウマを治すというのか……!? そんなアホな!
「ちょ、無理だろ」
「無理ではない。人間に不可能はないのだ」
なにマトモなこと言っているんだ。
いやしかし……なんだろう。
ね、眠くなってきたぞ……。マジか、ありえねえ。
ウトウトしはじめてきた俺。
………も、もうダメだ。
「………………」
また、
また悪夢を見てしまうのか……。
いや、違う。
今までとは違う黒い世界ではなく、白い世界に俺はいた。
『――熊野くん』
ん?
誰かの声?
この声は……三沢さんだ。
やがて現れる三沢さんの姿。なぜか裸だったけど、肝心な部分は見えていない。なんだか神々しい。女神様のようだ。
「三沢さん……俺、ついにトラウマを克服できたのかな」
『がんばって』
「え?」
『マラソン大会……がんばってね』
……そうか、そうだな。一番を取って彼女になってもらう。それが条件だったよな。
光が消滅していく。
夢から覚めていくような、そんな感覚。
やがて俺の意識は現実へ戻った。
「――――ハッ!!」
「熊野くん、大丈夫!?」
目が覚めた。目の前にはリアルの三沢さんがいた。……可愛い。ではなく、催眠術にかかって悪夢を見なかった。
「どうだ、正時。悪夢は見なかっただろう?」
「あ、ああ……驚いたよ。催眠術って効くんだな」
「今お前に楽しい夢を見る暗示をかけた。今後はもうトラウマを見ることはないはずだ」
「ちょ、姉ちゃん凄すぎるだろ。最初からやってくれればよかったのに」
「残念だが、そう単純な話ではない。催眠術は一歩間違えれば相手を死に至らしめる危険な術だ。あと今回が初めてだったから、成功する保証がなかった」
「って、うぉい! 失敗したらヤバかったんじゃねえか!?」
「成功したんだ、文句はあるまい」
そりゃそうだけど、下手すりゃ死んでいたのか俺。
ともあれ、俺は悪夢を見ることがなくなったらしい……?
「終わったところでお昼にしよ~」
「ああ、三沢さん。そうしよう」
三沢さんの手作り弁当がテーブルに広げられていく。おぉ、おにぎりとはな! しかも単なるおにぎりではなかった。
分かりやすく具が見えていた。
シャケ、オカカ、タマゴ、チキンライス、ハンバーグ、ミソ、赤飯、チャーハンなどなど……。
豪華すぎィ!
「これは凄いな。三沢さんが作ったの?」
さすがの姉ちゃんも驚いていた。
「そうなんです。いっぱい作っちゃったので、ちょうど良かったです」
「素晴らしい。三沢さん、ウチに欲しいな」
「べ、別にいいですけど……」
いいのかよ!!
姉ちゃんナイス……!
てか、それもうお嫁に来てくれるようなものでは……!?
さっそく俺はチキンライスおにぎりを手に取った。
ラップを剥がし、口へ運ぶ。
冷めていても味はしっかり広がり、美味くて感動した。す、すごい。さすが濃い味付けだけあって最高。
「うん、美味しい」
「良かった。いっぱいあるから、どんどん食べてね」
「ありがとう!」
三沢さん特製のおにぎりを味わっていく。う~ん、幸せ!
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