◆下校、寄り道、そして一緒に家へ

 用事を済ませ、下校。

 予定通り、ドーナツ屋『ミクスドーナツ』へ寄った。

 三沢さんは大変喜び、今日も爆買いしていた。

 そんなに好きだとはな。


「たくさん買ったね、三沢さん」

「今日は奮発しちゃった!」

「そんなに買って大丈夫かい?」

「うん、もうすぐポイントも貯まりそうだから」


「え、もう!?」


「実は、朝練以外でも走っていたらポイントが増えちゃって」



 ま、まさか三沢さん……俺が思っている以上に走っている!?

 普段歩いている歩数も合わせて、かなり貯まっているんだろうなぁ……凄いや。


 ウォーキングアプリ、三沢さんと相性バツグンだな。


 俺も少しは増えてきたが、換金までは程遠い。

 三沢さんはもう少しと言うくらいだ。かなり移動距離だとか稼いでいるんだろうなぁ。


「そんなに走っているんだね」

「朝と夜は必ず走ってるよ。あと、買い物とか」

「さすがだ。俺もがんばらないと」

「うん、ドーナツも欲しいけど、あと三日がんばろうね」

「そうだったな」



 マラソン大会の日は近い。

 可能な限り体を鍛えていかねば。


 駅で別れようとしたが、珍しいことに三沢さんは立ち止まっていた。



「あのさ……熊野くん」

「ん、どうした?」


「……家、寄ってもいいかな……」


「え?」

「だ、だから……家に寄ってもいいかなって……」



 三沢さんが突然、そんなことを言い出したので俺は固まった。

 女子から俺の家に行きたいなんてこと、初めて言われたから理解が追い付かなかった。

 うそっ!!


 断る理由なんてないぞ。

 むしろウェルカム。


「い、いいけど……でもなんで?」

「興味があるから」

「なるほど」



 ――って、なんだってぇ!?


 いや、家には姉ちゃんと爺ちゃんがいるから間違いが起こることはないか。


 それに招待はしたいと思っていた。

 いい機会だ。

 三沢さんが良いのなら、家へ連れていく。



「いいかな」

「もちろんだ。歓迎するよ」


「やった! じゃ、一緒に列車で」

「分かった。もうすぐ来るから、それに乗ろう」

「うん」



 やった! やったぞ……!


 三沢さんが俺の家に来ることになった。

 どうしよう。なにをしよう……。


 とりあえず飯だろうか。

 そうだ。一緒に飯を食って……それから俺の部屋に。


 あ、いや……間違いが起きたら大変だ!


 先のことは後で考えようっと。

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