◆条件変更:結婚を前提に付き合う
学校の校門前で声を掛けられた。
これは三沢さんではない。
振り向くと、そこには黒部さんがいた。
「おっはよー、熊野くん」
「ああ、黒部さん。おはよう」
今日も可愛さに磨きが掛かっているような。
「大丈夫だった?」
「え?」
「ほら、瀬戸内さんのこと」
「あ~、今のところは大丈夫だよ」
「そっか。なら、良かったね」
なんでそんな気にしてくれるのだろう。
ちょっと不思議だった。
同じクラスなので、一緒に教室へ向かう。
三沢さんは既に席にいた。
自分の席へ向かい、俺は三沢さんに挨拶をした
「おはよ」
「おはよう~。朝は黒部さんと一緒だったんだ」
「ま、まあね。たまたま校門前で会っただけさ」
「ふーん」
あれ、ちょっと怒ってる?
ま、まあ……今やクラスの中でトップになりつつある黒部さんが俺の隣にいたら、面白くないよな。
「機嫌を直してくれ、三沢さん。俺は別に、黒部さんのことなんとも思っていないよ」
「ほんと~?」
「ほんとほんと」
「うーん。じゃあ、信じさせて」
「信じさせてって……どうやればいい?」
「じゃあ~、今度のマラソン大会で優勝したら付き合うって言ったじゃん?」
「ああ、そうだったね」
「結婚を前提に付き合うに変更して」
「…………へ」
三沢さんのトンデモ要求に俺は頭が真っ白になった。
結婚を前提に……?
前提に……?
なんだってえええええええええ!?
それは嬉しすぎるというか、思った以上の変更だ。むしろ俺のやる気が更にパワーアップするぞ。
「嫌?」
「嫌じゃないよ。分かった。それで信じてくれるのなら変更を飲む」
「うん、決まりだね。一位ならわたしと結婚できる……よ」
顔を赤くして照れくさそうに言う三沢さんは、めちゃくちゃ可愛かった。そんな無理して提案してくれるとか、こっちも嬉しいよ。
それから、お互いになんだか照れくさくて会話ができなかった。
授業がはじまって淡々と進んでいく。
溝口は入院中のため、谷垣先生が兼任してくれていた。
そんな授業の中、俺は考えていた。
三沢さんと結婚を前提に付き合えるのかもしれないのかぁ……。いや、もちろんマラソン大会で一位を取らなければならないが。
けど自信はあった。
最近は体力に余裕もできたし、勝てる見込みは十分にある。
ただ、学年には猛者が多い。
陸上部やサッカー部などに所属する生徒たちがいるからな。体力オバケ共が勢ぞろいだ。果たしてどこまでついていけるか。
放課後、少しだけ部活を覗いてみようかな。
昼休みなり、三沢さんが振り向いた。
しかし俺を見つめるだけ。
「どうしたの、三沢さん」
「あ、あのね……」
「うん」
「い、一緒にお昼食べよう」
「ああ、うん。また食堂へ行く?」
「違うの」
「え?」
「お、お弁当を作ってきたから……」
その言葉に俺は脳の処理が追い付かなかった。
え、三沢さんの手作り弁当ってこと!?
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