経過

 TS病などという未曽有の突然変異。

 世界を根底より覆すような事態を前にしても人々は徐々にその生活には慣れは……別にしなかった。

 TS病に掛かっていく人は今も増加しつつある状態にあり、一気に女余りが加速。

 ありとあらゆる性産業が廃れ、婚活なども一気にオワコンと化した。

 これらの現象は、TS病に罹患したものたちは徐々にその心までもが女へと染まることがほとんどであったからこそ起きた現象である。

 すでに世界各国の政府が一夫多妻制の導入を真剣に考え始めている。

 

 TS化の影響はこれだけに終わらない。

 整理用具などの物資の不足、病院のカルテの変更、肉体労働を必要とする業種の著しいダメージなど。

 特に紛争地域では、TS化した兵士の数が多い方の負けになるなんて言う状態にもなっていた。

 もうもともとあった社会の常識は通じなくなってきているのかもしれない。

 一万人に一人が男から女になった。

 額面上は一言で終わるだけの社会であってもこれだけの問題が出ていた。

 

「……大変なこって。世界も荒れておられる」


 つい最近までどこにでもいるただの男子高校生だった僕こと、一条輪廻はのんきにネットニュースのほうに視線を通しながら独り言を漏らす。

 

「……うーん、どこもTSのニュースばっかり。というか、この若返りが本当にやばいよな。アメリカのバイルンがTSして幼女になった結果、認知症が治って選挙に完勝とか、世界に与える影響の度合いがデカい。歴史を変えるぞ、これによって。というか、本当に若返っているのかね?だとしたらなんともえげつないものだけど。あの禿教師はこれから五十年以上教師を続けるのか?ウケる」


 あの教師が自分よりも若いって考えるとそのシュールさでどうしても笑ってしまう。


「中年のおっさんが若い女という特権を使って好き放題やっている図はあまりにも草だなぁ」


 ニュースにはTSで起きた珍事についても触れている。


「おはよぉー」


 ニュースを見ながら自室からリビングのほうにやってきた僕は何とも気の抜けた声を上げるのだった。

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