LGBTQ

「なんか、お前の家ってば初めて上がった気がするわ」


「そ、そうだね……」


 帰り道、陽太から自分の家に来ないか問われた僕はその誘いに乗って彼の家にやってきていた。

 陽太の家。僕の家に招いてたり、蓮夜の家に行ったりというのはあったが、陽太の家に行くというのはこれが初かもしれない。


「おじゃましまーす」


 両親はいないと語る陽太の一軒家へと入り、そのまま階段を上がって二階へとやってきた僕は挨拶を告げながら部屋の中へと入っていく。

 そして、僕はその場で面食らった。


「えっ?すごっ……女っぽ」


 部屋の中へと入った僕は率直に出てきた感想をそのまま告げる。

 男子が部屋のレイアウトにはしないであろう白とピンクを基調とした部屋を前にしてはこんな感想しか出てこなかった。

 

「……何この几帳面な女の子の部屋っぽさ」


 僕と蓮夜の家とでは比べるのも恥ずかしくなるくらいには違う。

 壁にかけられている謎のインテリアとか、机の上に小物とか、妙に可愛いものが多い。

 この部屋のベッドの下に男の子の夢が隠されているとはとてもじゃないが思えなかった。

 

「えっ?TSに合わせてきたの?」


「……いや、違くて」

 

 予想を超える陽太の家を前に困惑の声を漏らす僕に対して、自分の後ろに立つ陽太が口を開く。


「元々、こんな部屋で……実は、僕ってばずっと前から……女の子になりたくて」


 そして、そのまま陽太は自分の内なる欲望について語ってくれる。


「おっ?あれか?最近ずっと話題の。心が女ってやつ?」


「……そう、だったの」


 それを受けての僕の確認の言葉に陽太がうなづく。


「なるほどね。じゃあ、良かったじゃんっ!」


「……へっ?」


「いや、へ?じゃないだろ。なんで僕がセリフミスったみたいな雰囲気にならなきゃいけないんだよ。心が女だって言うならTSで女になれてよかったじゃん」


 それにしてもなるほどね。

 これで陽太の部屋が女の子のっぽかったのも納得だわ。


「よくよく考えてみれば別に女になる前から陽太は可愛い部類だったしな」


「ふへっ!?」


「私服とか」


「あ、あー……うん。中性的なのにして。実はこの部屋では女の子の服とかも着てて」


「へぇー」


 普通の私服まで買って、なおかつ女子の服まで買っているの?

 高くね?


「それにね?……へ、へへ。実はちょっとメイクとかもしてて」


「なるほど……メイクね」


 なんかわからんけど女の子のっぽいな。

 というかメイク道具まで買っているの?めっちゃ金あるじゃん、こいつ。

 それにしても、陽太はTSして喜んでいるのか。TSに拒絶感を示す蓮夜とは対称的……ここまで対称的な二人が僕の周りでTSするとか、僕の引きが強いな。


「……さて、と」


 僕はその場でぐるりと視界を一周して改めて彼女の部屋を見渡す。


「……えっ?僕はここで何すれば良い?」


 そして、完全に遊ぶ気まんまんで来ていた僕は困惑の言葉を上げるのだった。

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