第三話 旅のとも
この文章では、私の定期試験については深く触れない。
なにせ私は成績が良い方ではないのでね。
それに良くもないが、悪くもない。
特に書くことがないし、例え書いたとしても何の面白み何もないと思う。
ただ一つ言えるとすれば、
***
ヲタ芸がひと段落つき、そうして突入した試験期間。
期末試験あるある、謎に多い試験科目の量。
カフェインを流し込んで目に鈍い青色をしたクマを作りながらなんとか乗り越えた試験期間。
試験最終日と言うのは学生にとって一年を通して最も解放感を感じる日のうちの一つだ。何せ今まで心に大きな負担をかけていたものが取り除かれ、自分が打ち込みたかったものに取り組めるのだから。
気分はまさしく、脱獄に成功した収監者である。
定期試験から逃げ切り、久方ぶりに手にした自由。これからどうしてやろうか。
帰りの電車に乗りながら、あれやこれやとたくらむ悪事ほど、期待に胸を膨らませられるものはそうそうあるものではない。
それにしても今回の試験後は、皆いつもの倍ほどの解放感を感じていただろう。
何せ試験が終わった日の二日後からはニュージーランド旅行であった。
牢獄からの脱出成功に加えて、海外逃亡の手筈も整っているとあれば気分も晴れ晴れである。
浮かれる足でそそくさと帰る途中、私は寄り道をした。
ニュージーランドに向けて荷造りをするための買い物。
購入したのはライトノベル三冊。
一冊は大賞を受賞した話題の最新作。
二冊は数年前にアニメ化を果たした作品の二巻と三巻。
いずれも試験の少し前から読みたいと強く思っていたものだった。
新作の方は完全に好奇心からだったが、後者の方は私にとってはバイブルとも呼べるべき作品だ。
ちょうど一年ほど前にどこかの再放送でこのアニメを見てから、私は筆を取るようになった。
恐れ多くもあらすじを語らせていただきたいのだが、端的に言えば主人公が「冴えない」女の子を立派な「
私が言うのも非常におこがましいが、これを読んでいる学校関係者の貴方はどうか検索して、そしてアニメでも本でもトライしてみて欲しい。
カクヨムから読んでいる貴方はたぶん履修済みだろうから特に言うことはない。
ということで私はライトノベルを購入した。
ではなぜ荷造りのための買い物か。
それはもちろん、持っていくためだ。
ニュージーランドまでのフライト時間は行きも帰りもおおよそ十一時間。
機内食を食べたり、寝たり、色々やることはあるだろうが、それでも往復の時間合わせて十数時間はフリーである。
私はあまり映画を見ないタイプの人間なので、飛行機の中で何かしら暇を潰せるものがないと、とてつもなく退屈な時間を過ごさなければいけないことになる。
というわけで暇を潰せると言っては誠に申し訳ないが、時間を有効に活用するための物資を調達したのだ。
ところで、旅にどれくらい荷物を持っていくかは人によってだいぶ異なるだろう。
私はあまり持って行かない人間だ。
財布やパスポート、スマホと言った貴重品はマストとして、あとは衛生関連といくらかの衣服くらいしか持っていかなかった。
衣服も、私は私服が基本シャツなので下着のセットを日数分にシャツとズボンをいくらかずつ。それと寝間着と寒い時に使うための上着を持っていっただけだった。
この旅では修学旅行だったこともありグループを組んで宿泊したりしたのだが、その際に同じだった友人Kは私とは正反対の人間だった。彼は中々の荷物持ちさんだった。
たくさんの衣服を持っていたのは特に驚くことではなかった。
だが、手持ちのカバンを出したあとに立派なブーツをスーツケースから取り出した時は正直目を丸くした。君はここに住むつもりなのかい、と。
彼の話によると、出国の段階ですでに航空会社の定める預ける荷物の重量制限に達しつつあったそうで、彼はお土産を持って帰るのにたいそう悩みながら荷物整理をしていた。
彼の荷物の多さは後々語りたいが、とりあえず私の荷物はなんとかなりそうだった。特にファッションにもこだわりはなかったので、必要最低限のものさえあればよかった。普通に日本で生活する中で使っているものを持っていたので、私は荷造りをするのに必要そうなものラノベを除いてなかった。
荷物の調達も済ませて、帰宅。
その後は夕飯を食べたが、試験の疲れからその日はすぐに眠ってしまった。
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