第32話 神域を超えし
さてさてさーて。レインを追って怪しい二人組を追って風車の中に入った。この世界って、こう言う変な奴らが本当に多いよな。
また神様がどうこうとか言って違法実験したり、変な儀式したりしているんだろうけど……マジでいい加減にしてほしい。
盲目なんだろうなぁ。一度信じてしまうとそれが正しいと思い込んでしまう。しかも、そう思っているのが自分一人でないんだからね。
沢山信じている人がいたら、民意に負けて信じちゃうのかもしれない。そう言う連中はマジで危機感持ったほうがいいよ。
「おい、天神人様が直々にここに来られるらしいぞ」
「あぁ、ここを認めていただければ階級も上がる」
「水資源が豊かなこの場所で擬人を作り続けてきたのが報われるわね」
あらあら、何やら話し込んでいるみたいだけど。こいつらって天明界だろうなぁ。神を信じてその力を自分達の物にするとか。
アホらしい……いや、現代でも推し活とかしてた人もいるし。一線を超えた神への推し活とも言えるのか?
いやいや、神を信じてるのはただのバカだな。さてーと、レインが連れ去られている場所を見ていくかね。
「がおがお」
「レイガーは落ち着いてくれ」
肩でずっとくっついているタイガー。意外と物分かりがいいのか、ずっと黙っている。
この都市に置いてある風車の地下に何やら怪しい儀式場所などが置いてあった。
「おいおい、こんなの作る暇あるなら温泉街とか作ったほうがいいだろうに」
レインを追ってとある部屋に入った。するとそこには水中に沢山人が浮いていた。
試験管の中に入っており全員生きている。だが、何やら魔力を吸い取られているように見える。
「うひょー、こんなのしてる人いるのか。学園の生徒が何人かいるな。名前知らないけど見覚えがある」
流石に解放してあげないと可哀想だなと思ったので、暗黒微笑BGMで片付けてやろうか
そう、思ったのだが途中でレインが目覚めた。男に担がれていたのだが、目を覚ましすぐさま相手を蹴飛ばす。
距離を取るレイン。目が覚めたのは不幸中の幸いだが、彼は怪我をしている為に苦痛に顔を歪めている。
脇腹を押さえて血を流してしまっている。
「くっ。回復魔法が使えないッ」
「たかが学生と思って油断したな。だが、怪我をしているな。すぐに全員で捕えられる」
レインは回復魔法を使うのが苦手らしい。確かに高等技術って授業で習ったしな。俺なんて、天才だから物心つく前にはできてたけど。
パパンも3歳で出来たって言ってた。ママンはずっと出来なかったから、パパンに嫉妬してたな。プク顔で嫉妬のふりしてパパンとイチャイチャしてたのは覚えている。
両親のイチャイチャって嫌だな。前世の父ちゃんと母ちゃんもカポエラとか格闘技で全力喧嘩した後に、仲直りのディープキスとかしてたけど、見てられなかったよ。
あー、話が脱線してしまった。問題なのはレインがもしかしたら死んでしまうかもしれないってことだね。
レインは普段から世話になっている。同じ教室だしな、ノートとか写させてもらったり、消しゴム貸してくれたり色々と世話になっている。
しょうがないなぁ。
俺が魔力を解放するとすぐさま、頭上にカラスが現れた。俺のカラスには超魔力感知能力がある。これのせいで強制BGMだからマジで迷惑なんだよな!!
感知力がマジで異常だよなぁ。しかも感知したら一瞬で転移魔法を使って現れる!!
いやー、現段階で俺の次に強いのはカラスだよ。アルカディア革命団全員でかかっても倒せないだろうなぁ
◾️◾️
俺はレイン・ロウズ。ラキルディス魔法学園の一年生だ。
ロウズ家と言うのは貴族の家名だが、この名はすでに廃れている。俺が小さい時に、貴族の領地が悪魔に滅ぼされ、領民と家族等全部を失った。
今からでも復興をしようとすれば出来るのかもしれんが、荒れ果てた土地と領民を守れない貴族の烙印がある中では誰もついてこないだろう。
故に今の俺は平民と同じなのだ。
だが、俺は強くなる。全てを守れる力を手に入れ、人を率いる。そして、人を導く力を手に入れ導けるようになり、一族を復興させる。
そう思い、毎日毎日強くなりたいと思っているのだ。学園でも勉学や魔法訓練全部で力を入れているのだ。
力を手に入れる為だ。
だからこそ、今回の合宿では力を高めたいと意気込んでいた。だが、そこで出会ったのは俺の偽物。
「よう」
「っ!!!?」
夜中に自身の部屋に訪ねてきた、レイン・ロウズ。鏡に映った自分だと勘違いするほどに精巧に作られている偽物だ。
あまりに驚いて不意打ちを喰らい気絶させられてしまったのだ。
しかし、すぐさま起き上がり、敵と相対する。俺を気絶させたのは俺の偽者だったのだが、起きると目の前にいるのは謎の集団。
「早く、捕えよ」
くっ、回復魔法が使えればもっと俊敏に動けるのだけどな。
俺は回復魔法が大の苦手なのだ。どうやって自身の治癒能力を活性化させたり、皮膚などを魔力を構築するのかが全くわからないのだ。
──まずい、このままでは死ぬ
死の予感が全身へと響いた時、俺の耳に同時に響いたのだ。
神が降臨するかのような異質な音が……
『るーるーるるる。るーるるるる。るーるーるーるるー』
天井には降臨を讃えるかのように黒鳥が羽ばたき。その黒き羽が俺達の元へと降り注ぐ。
「……下らんことをする」
心底落胆をしたような声が神父の男から発せられた。
いや、待て! さっきまであんな男はここにいなかったぞ!?
「今宵、全ての人は解放される。裁定は全て、私が下す」
魔力の総量が桁違いだッ!!! 学園の生徒全員を合わせても半分にも満たない!!
しかも、あれほどの魔力でまだ余力を残しているようにすら見える。
文字通り、化け物だ……。それと同時に空を飛んでいる黒鳥の魔力量も凄まじい!!
学園全員の魔力でも総量で負けていない。しかも、一匹、一匹が総量で負けていない!! 一体全体、この男は?
この黒鳥を率いて。これほどの力を持っている。
何を考え、どれほどの実力と、力を保有していると言うのだろうか。
「貴様。代行者だな!」
「代行者め、やはりここをかぎつけていたか」
代行者……代行者だって!? そうか、最近噂になっている祭典にて現れたと言う……他にも何度も姿を現し、実力を見せつけていくとか。
だが、その殆どが誇張された噂に過ぎないと聞いている。所詮ただの賊と変わらん一人だと……
しかし、その噂は……大きく間違っていたのだと身を以て俺は知る!!
「奴を殺せ!! 代行者を殺せば天神人様に多大なる報酬を頂ける」
俺を捕えていた連中が代行者に向かって走り出す。
それに対し、代行者は手を上に上げた。彼の手に魔力は帯びられていない。
魔法を発動する兆候はない。しかし、彼の手に自然と視線が集まってしまうのは彼の少しの動きによって運命が決まってしまうからかもしれない。
それほどのオーラがある
──指先同士を擦り、パチンと指を鳴らす
その瞬間、頭上を飛んでいたカラスが全て低空飛行を開始する。
「がは!!!?」
「ば、バカな!? ただの鳥如きに!!!」
「た、助け!!」
殺しはしていない。しかし、鳥に激突され、電撃を発せられ、生かさず殺さず、絶妙に動けない状態に彼らはさせられている。
あ、あのカラスどんだけ器用なんだ!?? あんなに鮮やかに、かと言って殺さず生かさずで相手を倒すことなんて、人間にも難しい!!
しかも、あの連中は全員かなりの実力者だ。普通の人間ならまだしも、それなりの強者をあんなにもあっさりと絶妙な力加減で……
お、俺は鳥にすら劣ると言うのか……
さらに驚くことに水中に入っていた生徒達をカラスが解放し、全員に対して回復魔法を施したのだ。
回復魔法は高等技術であると言うのに、一体全体どんだけの強さが……
あの代行者が躾をしているのだろうが……自分が強いと言うことと誰かを強くすると言うのは全くベクトルが異なる技術を要するはずだ。
つまりは、代行者はそこまでの実力を持っていて、知見も深いと言うことになる。
「さて……次に向かうとするか」
「待て!」
「なにかね」
「お、お前、代行者、な、何者だ?」
「私は……全てはあのお方の思し召すままに」
風を切るように彼は消えてしまった。残されたのは解放された生徒達と自分のみ。
俺はその日、世界最強を知ってしまった。魅せられたと言ってもいいだろう。
あれほどの強さがあれば、また一族を復興させられる。
そして、この偽物騒動。
こんな精巧な偽物を作り出せる連中が居たのか。世界に何か大きな禍が起こっているのも容易に想像ができる。
やはり、力、力が必要なのだろう。あの代行者のような圧倒的な力が。
「代行者。そして、彼が言う『あのお方』とは一体何者なんだ?」
そして、それほどの力を持つ代行者が『あのお方』とまで呼ぶ存在とは一体……?
◾️◾️
ふぅ、なんとか倒しておいたぜ!!
「ゼロ様」
「おう、レイナ」
「ゼロ様、また適当にあのお方とか言ってましたね」
「そりゃね。あのお方なんていないから」
「もう! ちゃんと聖神アルカディア様を崇拝するように仕向けてくださいよ!!」
な、なんでそんなことをするんだよ。
「あのね、神なんていないんだから。面倒だしさ。適当にあのお方とか言って、のらりくらりと躱してお茶濁しておけばいんだよ。いずれやめるし」
「コラー!! ゼロ様コラー! ダメですよ!」
「おいおい! 大声出すな! バレるだろ!」
「ゼロ様だって大声出してるじゃないですか! あんまり調子乗ってると、これまでの悪行を革命団全員にばらしますよ!」
こ、この野郎。俺が一番気にしていることを!! 絶対にバレないようにして、そのまま一生を終えようとしているんだから変なことするな!
偶にとんでもないこと言うから嫌なんだよ!!
「それやったら、お前メイドクビだからな! 一生路頭に迷え!」
「あぁぁぁ!! それは反則! うわぁぁぁぁ!!」
こんな感じで二人で大声を出しているから……
「誰だ! 貴様ら!!」
うあ! 見つかった……
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