第30話 偽物を追え!
わたくしはアルカディア革命団、アルカナ幹部としてそれに見合うように、行動をしていた。
全てはわたくしを救ってくれた団長に恩を返す為。団長は六大神から世界を守る為に日夜力を尽くしている。
その理想にお力添えをしたい
「つーか、最近偽物の噂多くね? キルスっちの方でも聞いてるっしょ?」
「そうですわね。あとキルスっちは辞めてくださいまし」
わたくしは【魔術師】と言う冠位を団長から与えられている。同じように【月】という冠位を与えられているロッテ。
エルフでオッドアイ、赤と黄色の髪。特徴的な方。話し方が変なのは団長が仕込んでいたからだとか……
「偽物……天明界絡みなのは調べがついてますわ。本物と偽物が知らないうちに入れ替わる事象が起きているのだとか」
「本物の方はどうなってるの?」
「それは大都市リースタルに運び込まれてるのが確認されてますわ」
紅茶を啜りながら情報を交換する。ロッテもわたくしと同じで幹部である。今回についてどう動くか考えているのでしょう。
「じゃ、ぱぱぱっとリースタルに突っ込んで解放とぶちのめす方向でいいの?」
「いいえ。少し待ってくださいまし」
「なーぜ?」
「団長がリースタルにて予定を入れているようですわ。何か意図があるのでしょう。わたくし達が動くのは団長が動いた後ですわ」
団長が仰っていた。近々、学園の強化合宿があり、団長も生徒として参加すると。
故にまだ動くのはダメでしょう。
わたくしも未だ生徒として過ごしているのだから、当然参加する。指示があるまでは生徒としての魔法学園に潜入をし続けなくては。
「つか、団長とは学園で話すの?」
「いいえ、話せませんわ。金エンブレムだと色々と話せるタイミングがなくて」
「団長、落ちこぼれ演じてるもんね」
「えぇ、話せなくて寂しいですわ」
「たまにちょっかい出したりしないの?」
まぁ、たまーにお話とかはさせて頂いてるけど……あの妹、イルザ様がわたくしが話しかけようとすると拒む。
偶々、偶然を装って話しかけようとしたら
『あ、ゼロ様』
『お兄様! あっち行きましょう! ほらほら』
くっ、これだけではなくて事あるごとにわたくしを拒む。
団長に話しかけようとすると何かを察知したのか独り占めをして離れるのがパターンかしている。
だが、これはわたくしだけではない。他の女子生徒が団長に話しかけようとしても彼女は同じようにする。
「団長ってさ、ガチモテる?」
「モテますわよ。顔よし、スタイルよし、公爵家の一人息子。魔力使えないので落ちこぼれの劣等生として馬鹿にされていますが、一部ではマニア女子生徒が沢山いるんです」
「へぇー」
「この間、キャル・スリヌーラの彼氏役をしていた時は、わたくしを含め全員がイライラしてましたわ」
「それはあーしもしてた。あれ腹立ったわ。腹立ちすぎて、腹でお湯沸いた」
あの妹……どう考えても団長を異性として好いている。あんなにもベタベタして腹立ちますわ。妹という立場をフルに活用しまくりやがって……
くっ、わたくしが妹だったら同じことするけど
「あーしが団長の妹だったら同じことしてるわー、団長かっこいいし」
「そりゃ、誰でもしますわ」
「団長だときき、き、キッスとかしても、だだだ、大丈夫かな?」
「さぁ、ただ、イルザ様はしてそうですわ」
「え!? き、キスすると、子供できて、鳥が運んでくるとくるって!!」
ロッテはもう少し色々と学んだが方がいいのではないか。知識の偏りが凄まじいなと思いながら、わたくしは頭を押さえてしまった。
◾️◾️
猫としてお兄様と過ごす日常を味わいたかったが、気づけばアタシは元の姿に戻っていた。
あーあ、猫のままなら一生最高だったのに……まぁ、アタシには世界を救う使命があるからしょうがないのだけれど。
「お兄様、ちゃんとアタシについて来なさい。合宿は危険なんだから。常に一緒にいないと」
「はいはい」
今回は大都市リースタルを貸し切って合宿が行われるらしいわね。リースタルと言えば温泉が有名な水資源豊富な場所だから、ちょっと楽しみね。
「イルザ最近お前、ベタベタしすぎだろ」
「あらお兄様、最近の貴族の兄妹はこれくらいベタベタするのよ」
「あ、そうなのか」
「お兄様世間知らずだから」
「うーむ、確かに俺は世間知らずかもな」
ふふふ、お兄様は世間知らずのボンボン貴族様。まぁ、アタシもだけど。つまりお兄様は適当に言いくるめておけばそれなりのスキンシップはセーフ判定なのよ!!
お兄様とアタシは馬車に乗り、大都市に向かう。他の生徒も馬車に乗り込みそれぞれが向かっている。
馬車は四人乗りでもちろんそのうちの二人分は、アタシ達。そして、もう二つは……
「ゼロさん。あまり感心しませんよ。妹さんとベタベタするのは」
「おう、兄妹……あ。ぜ、ゼロ様」
キャルとナナ様なのよねぇ。
「イルザさん、あの後聖神について私も調べました。すると、面白いことがわかりましたよ」
「ふむ、聞かせてもらおうかしら」
「えぇ、しかし、その前にイチャイチャするのはやめてもらいますか? 兄妹でそのようなことをするのは不健全ですし」
「家族の問題について、口出し無用だから。さっさと教えて」
「……はぁ、わかりました」
キャルめ。事あるごとに突っかかってくるのよ。ただ、聖神は世界の謎の一つ。聞いておきましょう
「聖神には、使徒と呼ばれる七人の手下がいたとか」
「使徒?」
「えぇ、とても強力な力を持っている化け物だったとか。しかし、六大神との対戦で全員が滅びたそうです」
「そう」
使徒……そういえばあの遺跡で見た壁画。あそこの聖神の周りには数人の何かが書かれていた。あれば使徒なのだろうか。
六大神と聖神。この二つが対立しているのは事実として。現代になったとしてもこの抗争が続いているのね。
天明界と神源教団、それに対しての代行者とその一派。
噂になっている偽物もどちらかの派閥の動きと考えると納得がいく。偽物が出るという噂は微かに聞いてるけど。噂で留まっている。
だが、しかし、学園の生徒の半分以上がアタシは偽物なのだと判断した。偽物の特徴として魔力の流れなどがどこかしら変なのだ。
アタシが見た偽物も変だったし。かなり大きな何かが動いている。
だけど、糸口は何もわかっていない。不甲斐ないわ。
「あ、銀色の鳥が飛んでる。あいつ俺に懐いているからいつも頭上くるんだよなぁ」
「お兄様」
「ん?」
「まさか、偽物じゃ……ないわね。この匂いはお兄様の匂いよ」
「俺が偽物になるわけないだろ」
一瞬だけお兄様を偽物かと疑ったけど、匂いですぐにわかった。お兄様って魔力がマジでゼロだから、色々と分かりにくいのよね。
「あの鳥、いつも俺についてくるなぁ」
「そうなの?」
馬車の窓から外を見ると、銀色の青い目をした鳥がずっとお兄様を追ってきていた。まさか、鳥にすらモテてしまうなんてさすがお兄様ね。不快だから窓を閉めましょう
「あ、せっかく風にあたってたのに」
「いいでしょ、別に」
「よくないよ。景色を見るのは楽しみなのに」
「それどころじゃないでしょ、これから合宿なんだから。落ちこぼれのお兄様は呑気にしてる時間はないの」
「お前の性格って絶対パパンに似てるわ」
お父様とアタシって似てるのかしら……まぁ、面倒くさい性格な部分はそっくりかもしれないわね。お母様ってゆるりなイメージだし、お兄様はお母様に似てるわね。お姉さまもアタシと同じで面倒な性格してるからお父様似でしょうね。
そんなこんなで話をしているうちに、大都市リースタルに到着した。この都市って、リースタルと言う貴族の領地なんだっけ。かなり空きがあったから都市にして観光とかできるようにしたとか。
アタシの家もいずれ観光地とかにしようかしら。
大都市と言うだけあってかなり広いわね。入り口も立派だし……
「ちょっと待って」
「ん?」
都市内部に入った瞬間、アタシは違和感に気づいた。最初は、微かにだったか、それは強烈な異質で不気味な情景へと変化した。
「……都市のほとんどが偽物?」
都市内部、その人間のほとんどがあの時のアタシのように……偽物だったのだ。偽物独特の魔力の違和感の流れ。
視界全ての人間が偽物であると判断し、脳内に強烈な危機感が溢れる。
「お兄様、ちょっと!」
お兄様の手をとって、大急ぎで都市の外に出た。ついでに王女様とキャルもついてきた。
「お兄様、この都市の人間全部偽物よ」
「あ、やっぱり?」
「えぇ。魔力ヘンテコ軍団よ。強化合宿だけど、一旦抜け出すわ」
「先生に言ったほうがいいか?」
「それがバレたら、ここに居る偽物全員から攻撃されるわ。一旦、ここで作戦を立てましょう」
「ほいほい」
キャルの父親は学園の学園長。まぁ、合宿を中止にしようと思えばできる人材。でも、ここでやったら偽物が気づかれたと思って襲ってくるかもしれない。
それに、都市の人間がほとんど偽物なら出所はここかもしれない。
この偽物事件を……代行者様が把握していないとも思えない。ここにいれば代行者様に会える。何か新たな事実が知れるかもしれない。
下手に周知して混乱するより、敢えて乗り情報集めと黒幕を叩くほうがいいわ。
こちらの戦力は……お兄様は守る対象だからゼロとして。第三王女とキャルがいる。アタシほどじゃないけど。
「そうね、お兄様ここはアタシと肌身離さず一緒にいてほしいわ」
「うむ、あ、ライオン」
お兄様のそばに銀色の毛を持ったライオンが居るけど。今は放っておきましょう。
この合宿で天明界や神源教団が絡んでいると考えるのが妥当ね。えぇ、やってやるわ。
掴んでやろうじゃない。アンタ達の尻尾ってやつを……
「なぜライオンがここに」
「お兄様、ライオンはいいから! いくわよ」
「あ、はい。ライオンって、普通にいるのものなのか?」
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