第18話 圧倒的脅威! カルマの身体能力!!

 さーてと、次の試合まで待っていますか。適当に出店でも見ながら……



「ひゅー、ゼロ様、ひゅー!!! よーよー! ゼロ様、よーよー!」

「なんだ、変な物でも食べたか?」



 レイナが上機嫌で俺の元にやってきた。変な物でも食べたのかもしれない。



「いえ、遂に私の時代が来そうなのですよ」

「もう通り過ぎてる気がするけど」

「いえいえ、これからなんですよ。ゼロ様のおかげです」

「俺のせいでお前の時代が始まるの意味わからなすぎるんだけど」

「えぇ、信仰がもらえたのです」

「話が分からんのだが」

「ゼロ様は物事を焦りすぎるのです。少し話は長くなるのですが」

「それならいいわ。長い話嫌いだし。お昼食べたいし」

「ふふふ、なら一緒に食べ歩きしましょう!」




 えぇ? 面倒だなって顔したら、むむむって感じの顔を返してくるレイナ。仕方ないので同行を許可した。



「あ、あのお肉美味しそうですね! 食べましょう! 私が奢ります!」

「そりゃどうも」

「あ、あのクレープ美味しそう!」

「なら今度は俺が出すよ」

「ありがとうございます!」




 こいつ、食ってばかりだからなのかやっぱりちょっと太っているような気がするけど大丈夫だろうか。



「やっぱり太ってない?」

「な!? なななな!? わ、私は……実は豊穣を司ってる神なんです!!! 体が豊作になってるイメージをしてください! 信仰が高まってるので!!」

「豊穣を……普通に食べる量が多いんじゃ」

「あ、あとあれですよ! 太ってる人が隣にいる方が痩せて見えてお得ですよ!!」

「それ言ってて悲しくならない?」

「……か、悲しい。涙……ぽろん」




 情緒が安定していない。この様子を見ていると神様ではないと改めて感じてしまった。毎度神を名乗ったりするのも持ちネタなのだろう。ほぼ100パーセントで滑ってるけどね。




「顔綺麗だし、そんな太ってないから安心しろ」

「きゅ、きゅん! ふふふ、まさか下げてから上げる作戦とは……ゼロ様、さては策士ですね?」

「ほほほ、俺のIQは53万ですよ」

「おもんな」

「おい、ぶっ飛ばすぞ、急に下げるな」

「嘘です。面白いですよ」

「きゅん! ふっ、お前も下げてからあげる作戦をするとはな。さてはお前……諸葛孔明だな?」

「ふふふ、その通り……諸葛孔明って誰?」

「俺の世界にいた頭が良い策士」

「へぇ……ゼロ様の世界だと色んな人がいたんですね。ゼロ様だいぶ変な人ですから当然ですが」

「そうだな。まぁ、俺は常識の範囲の人間だった気がするが」

「ゼロ様が普通?」

「あぁ、普通の日本人」

「日本人ってヤバい人達なんですね」




 俺を見て、日本人に偏見を持ってしまうとは見る目がない。確かに天才なのは認めるけどな。才能もあるし、昔は厨二病だけど今はすごい真っ当だろう。




「一応言っておくが、日本人はまともだ」

「へぇー。そうなんですか……絶対まともではないと思いますけど。ゼロ様ってどうやって死んだんですか?」

「トラックに轢かれた」

「トラック? それはどんな化け物ですか?」

「よく走ってたよ。別に化け物でもないし」

「でも、ゼロ様殺すって相当ヤバいでしょ。何者ですか。トラックとは」

「トラックとは物を運ぶ機械だ。まぁ、日本の時は魔力ないし、身体能力も低かったしな」

「へぇ……」

「あぁ、でもトラックで轢かれて異世界に転生するみたいなのは流行ってたぞ。神様からチートもらって異世界で無双するみたいな」

「へぇ、チートですか」

「そういえばお前自称神様だろ、チートよこせよ」

「いや、世界で一番必要ないでしょ」




 貰っておいて損なのはない。俺は人から奢ってもらったご飯が一番美味しいと感じるタイプである。



「チートを貰って異世界でハーレムなのは男の夢だな。はい、チートくださいな」

「だから、いらないですよね。それにこんな可愛いメイドもいるじゃないですか! 良いですね。異世界満喫してるじゃないですか」

「……でも、五月蝿いからな。もうちょっと静かにしてくれても良い。ヒロインは黒髪黒目の大和撫子がいいかな」

「我儘な人間ですね。こんな美女を捕まえておいて。人間欲深くなると際限なくなるのですね」




 適当に食べ歩きをしていると、目の前に【星】ジーンと荒々しい風貌の少年が現れた。



「ほほほ、団長殿少しお話よろしいですかな」

「構わないとも、ジーン」

「ありがとうございます。ほれ、挨拶を」




 ジーン、相変わらず渋いおじさんだな。持っている剣の装飾から来ている服までダンディなおじさん感が万歳だ。俺もこんな歳の取り方をしたい。

 



「ライライ。最強になる男」

「ほほほ、申し訳ありません。団長殿、この子は最近革命団に入った子なのですが随分と生意気と言いますか」

「構わないよ。私としても活きの良い子供の方が好ましい」

「はっ、余裕かよ。でも覚えてろ、俺が最強になり世界を救う。次の二回戦戦うのは俺とお前だ。世界一は俺がもらう」



 随分と生意気な子供だ。歳は俺より少し下だろうか。まだ幼さが残る顔つきだ。瞳の色は黄金、髪色は黄色、髪型はヒトデ型にギザギザ頭だ。天に昇るギザギザ頭。



 どーやって髪型セットしてるんだろうか?


 アニメ遊戯王に出てきそうなくらい奇抜な髪型だ……




「ゼロ様、この子どうやって髪型セットしてるんでしょうか?」

「俺もすごく気になってた」



 こそこそ二人で話しているとジーンはふっ笑った。あぁ、ジーンも髪型気になってたよね?



「ほほほ、流石は団長殿に副団長殿気づかれましたか?」

「ふっ、勿論だな」

「ゼロ様も私も勿論気づいております」

「えぇ、この子の魔力は特別なのです。常に電気を纏っており、更に帯電をしているようなのです」

「気づいていたとも。なぁ、レイナ」

「ふふふ、勿論ですよ。一目見た時から気づいておりました」




((髪型じゃないのか……))




 よく見るとライライの体には微弱な電気が流れていた。パチパチと少しだけ音が耳に心地よく響く。



「そのせいもあってか、静電気で髪型が奇抜になっているようです」

「あーー!! だからか!!」

「そうですよね!!」

「お二人とも少し元気になられましたか?」

「ふ、ジーンにはそう見えたか? 偶には団員に元気な姿を見せるのも悪くないかと思ってね」

「ゼロ様は新団員を前にして相手に気を遣わせない為にあえて道化を演じたのですよ(最高級のメイドフォロー発動中)」

「な、なんと、そうでしたか。お気を遣わせて申し訳ございません」




(疑問解けたわ……だとしてもこんな髪型になるか?)

(疑問解けました。いや、だとしてもこの髪型は無理があるのでは……?)





 二人がライライをジッと見る、その仕草にライライは舌打ちをしながら踵を返してどこかへ行ってしまった。



「団長殿、申し訳ありません。ライライは未だ若く反抗期なのです。しかし、その才能は抜群、いずれお役に立つかと思います」

「勿論わかっているとも。ジーン、君に任せよう」

「ありがたき幸せ。そういえば先程の戦い見事でございました。まさか空気の流れを読むとは……とんでもない技術感服いたしました」

「そんなに褒められてもこまる。さぁ、行きたまえ」

「はっ」




 ジーンは離れて行った。ライライか、結構生意気だが子供だしね。




「かなり好戦的な子でしたね」

「俺嫌いじゃないぜ。誰でも尖ってしまう時期があるしな」

「流石、全てはあのお方の思し召しとか言って活動してたゼロ様が言うと説得力が違います」

「舐めるなよ。小娘が」

「ひゃい!? 鎖骨触るな! 弱いんですよ!!」

「あいあい」

「それ貴方が聞いてない時の返事ですよね!! まぁ、いいですよ。私も寝てる時触ってますし」

「おい、寝てる時どこ触ってるんだよ!」

「いいじゃないですか! もう散々触りっこしてるし!」

「あいあい」

「あ、また! 聞いてない! でも、本当にいいんですか? あんな生意気で」

「別にいいだろ。あれくらいの方がいい。それに俺を信仰してたり、尊敬してる方がぶっちゃけ見る目ないだろ」

「まぁ、確かに」

「あの子は正常だ。代行者様! 団長! とかならなくてよかった」

「おお、まともですね」

「俺はまともだ。ラグラー家で一番まともな男だな」




 もぐもぐタイムをしながら試合までの時間を潰していた。



「そういえば見事でした。負けるとは思っていなかったですが」

「あぁ、そうね」

「空気の流れって読めるんですか?」

「読めるけど読んでない」

「え?! じゃどうやって」

「普通に見てた。透明になってもそこに居るんだから消えてはいない。なら見れる。透明人間を見てたイメージ」

「はい? ちょっと意味わからなくてキモイんですけど」

「だから、アニメとかで視聴者に分かりやすくする為に人形を透明っぽくしてる演出みたいに見えてたって感じ」

「キッショ!? 普通見えないですって」

「まぁ、これくらいね。パパンとかママンもやろうと思ったらできそうだけど」

「マジですか!? ラグラー家きもくないですか?」

「それ二人に言って解雇させるか」

「うわぁああ!!!! やめてください!」




 パパンは普通に才能マンだからやれそうなイメージだけどね。まぁ、俺には及ばないけどさ。


 なんて言うか、パパンは才能の原石で言ったら俺に次ぐ大きさな気がする。俺がいなかったら文句なしの世界最強だったろうな。


 ママンも身体能力なら世界三本指くらいかも。


 ビッグシスターはまた発展途上かな。リトルシスターはちょっとまだまだかな、才能はないわけではないと思うが。




「ゼロ様的に負ける相手っていますか?」

「いないっしょ」

「言い切りますね」

「すごい美人が私全然可愛くないんでスゥ! とか言ってたら腹立つだろ。それと一緒」

「あぁ、なるほど。じゃあ、この会場で二番目に強いのは誰ですか?」

「そりゃパパンかもな。あの人、強面だけど強さは本物だよ。トレーニングしてなさそうだからだいぶ落ちてるかもだけど」

「アルカナ幹部と旦那様どっちが強いですか?」

「……ちゃんと修行してたらパパンかな。あぁでも、ジーンはちょっと頭一つ抜けてるイメージかな」

「ランキングつけるなら5位まで教えてください」

「1位俺、2位全盛期パパン、3位ジーン、4位使役してるカラス、因みにカラスは16体居るけど今回は一匹だけの判断ね、16体全部なら2位かな。5位がキルスかな」

「あれ、私は?」

「お前は12位くらいだろ」

「結構下!? ふふふ、でも魔力高まってきましたよ!」

「ふーん」

「てか、カラス強すぎません?」

「俺が鍛えたからな。かなり苦労して大事に育てたからな。因みにそれぞれ子供がいてその子供達も俺に懐いてる。この間見たら50匹くらいになってた」

「まじですか!?」

「だから、カラス単体とか入れて最強ランキング100位まで作るとカラスが結構居る」

「えぇ!? さ、流石ゼロ様。で、でも私も魔力高まってますからね、最強ランキング上がっていきますよ!!」




 魔力高まったと言っているが、あんまり高まってる気がしないけど本人が喜んでるから良いことにしておこう。その後俺は一度観客席に向かった。そこには一回戦を突破したリトルシスターとパパンとママンが座っていた。



「あ、お兄様! どこ行ってたのよ! 迷子だったのね! ほら、ここ座りなさい!」

「はいはい」

「もう、アタシが居ないとダメなのね! しょうがないお兄様ね!」

「元気だな」

「一回戦突破したからね! このまま優勝するわ! 一回戦の相手はギムレットっていうおっさんだったけど倒してやったわ! 褒めなさい!」

「そうか」




 あ、俺の次の相手は……ライライ君じゃないか! ほほう、まさかあの少年と戦うことになるとはね。


 俺のことを嫌っている様子だったが、どうなるかな。




◾️◾️




 オレの人生はどん底からのスタートだった。親などいない。天明界の実験によって生み出された人工的な兵器だったんだ。


 風雷の神の力を宿した肉体を再現しようとした際にオレができたらしい。産まれた瞬間から魔力に雷が宿っており、常に帯電と放電をしてしまっていた。風の力はないが雷の力は持ち合わせていたのだ。


 来る日も来る日も実験を続けて、オレは強くはなった。だが、精神は疲弊して行ったのだ。そんな時、転機が訪れた。



【星】のジーン。彼がオレを助けてくれた。正しく、彼こそオレが目指すべき存在なのだ。最強の剣を彼は持っていた。オレの雷と彼の剣。星竜剣術・改を手に入れればオレは最強になれる



そうしたら、もうオレのような人を生み出さないと……



『ほほほ、私は最強なのではありません』

『あ? じゃあ、誰が最強なんだよ。アンタより強いやつ思い当たらねぇよ』

『なら、実際に見てみると良いと思います。──最強は』




◾️◾️






「さぁ、遂に二回戦! 閃光の如く一回戦で勝利を飾ったライライ選手と圧巻の才能を見せたカルマ選手の戦いです。ライライ選手は背中に神々のエンブレムはつけていないので無宗教扱いとなります。アルザさんどちらが勝たれると思われますか?」

「さぁな。それにしても一回戦のワタシの妹は見事な勝利だったな」

「それもう、50回くらい聞いてます」




 ライライとカルマ互いに勝負が始まる。ライライは片手直剣を一本持っている。対するカルマは大鎌を持っているだけだ。



 最初に動いたのは



(こいつが最強かよ、何も感じねぇ! ジーンの方が強そうだッ!)




 バチバチと雷を放出しながらライライが動く。雷のように高速で動いてカルマの後ろに回っていた。



「速いな」



 思わずアルザもそう口ずさんだ。会場もライライの動きが追えてない者が殆どであった。



 がしかし。




(あ!? どこいったあいつ!?)




 後ろに回り込んだと思ったが既にカルマの姿は掻き消えていた。ライライは雷を自身に纏うことで自身の身体能力を更に底上げができる。


 ジーンとの修行によって、既に実力はアルカナ幹部にいずれなれるかもしれないと言われるほどだ。


雷光らいこう。その魔法をそう名付けた、常に放出している電気魔力を無詠唱で体に纏い、そこからのトップスピードにより最高速を叩き出す。


彼が使えるのはこれだけであり、これ以上を彼は求めない。なぜなら一を極めることを彼は決めたからだ。



通常の相手ならばこれで決着をつけられていたであろう。




 しかし、相手が悪い。




(後ろか!)




 彼は当然のように後ろにいて、鎌を振りかけている。それを高速で剣で防ぐが勢いによりノックバックが発生する。



(なんつー、力ッ! これで魔力使ってないとかイカれてんだろッ!!!!)




 そう、カルマは使っていない。魔力を使えば暗黒微笑BGMが始まってしまうので使えない。


 故に使わない。



 だがしかし、それによって浮き彫りになる力の異常性。




(体が。オレより数段……いや、大分手を抜かれてるッ)




 超高速の動き、異常な力量。全てが超次元だった。




(一回戦も随分、手を抜いてやがったのかッ!!)




 鎌と剣が何度も何度も交差をする。頂上的な速さについてこれるのは会場に僅かしかいない。




(ぶつかる度にオレの剣が強くなる、鋭くなっていくッ。だが、絶対に……勝てるイメージが湧かねぇッ)



 僅か一秒、その一秒が積み重なる度にライライの力は増していた。天才的な才能がそれを可能としていた。だがしかし




「おーっとこ、これはすごい試合だ!! 両者拮抗をしております!!!」

「そう見えるか?」

「え? ち、違うのでしょうか? 拮抗しつつもライライ選手がどんどん鋭くなっているかのように見えるのですが」

「あれを試合と呼びたいのであれば好きにするといいが。あれは最早……手解きだな」

「て、手解きでしょうか?」

「カルマの力量が明らかに上だ。ライライよりも僅かに上の実力を維持している。それによってライライは実力を跳ね上げているように見えるのだろう。実際ライライは強くなっているがカルマは余裕綽々だな」

「つ、つまりは?」

「カルマの勝ちだな。ライライもそれが分かっているだろう。疲れが出てスピードが落ちてきている」

「な、なんと、そうだったのでしょうか」

「……随分器用な奴だ」





 解説の声は結界魔法によって戦っている二人には聞こえない。だが、しかしライライには自身の負けがより濃く迫っていることを悟る。



(くそ、調子は悪くねぇ、絶好調だ。実力だって120%出せてる自負がある。なのに……



(何だこいつ、どうやって勝てるんだ? 近距離はダメ、遠距離戦に変えるほどの隙もねぇ、技術はオレより上で、身体能力も勝てない、経験も絶対オレが下だ……おい、待て。待て待て待て、どうやって、これ……か、勝つんだ?)




 悩みながらも彼が出した結論は……加速をするという選択だ。雷を纏いカルマの周りを走り始めた。



「おお!!! ライライ選手がカルマ選手の周り超高速で回っております!! 綺麗ですね! 綺麗な円ができております! これは存分に加速をしてトップスピードを超えた速度で叩こうという作戦か!!」

「……ふむ、悪くない手だ」

「アルザさんも珍しく褒めております!」

「まぁ、無理だろうがな」

「無理、でしょうか? 私には勝てるような気がするのですが」

「本当にカルマが負けるなら……加速される前に叩く。よくわからんがカルマは相手の全力を引き出すのが好きらしいな」

「な、謎ですね。私にはライライ選手かなり良い線いくかなと思っているのですが」

「確かにな。本来なら決勝に残ってもおかしくない選手だろう。実力も度胸もある。ああいう魔法騎士は伸びる。ライライの実力を見て傭兵や自国の魔法学園の生徒にしたいと考える者がいるだろう。それほどのポテンシャルを感じる」

「おお! そこまでアルザさんが褒めるとは」

「あぁ、だからこそ残念だ……実力も度胸も全部あったのに、ワタシにすら勝てるほどだったかもしれんが今回は……相手が悪すぎた」



(──決めるッ)




 回っていたライライが尋常ではない超雷速にてカルマに向かう。背中越しに剣を構えて斬ろうと腕に力を入れて




(勝ったぞ……)



 

 その瞬間に彼の中に溢れ出す、最強の剣の記憶……




『ほほほ、私は最強なのではありません』

『あ? じゃあ、誰が最強なんだよ。アンタより強いやつ思い当たらねぇよ』

『なら、実際に見てみると良いと思います。──最強は』





 ──最強は





「し、試合終了ー!! な、何が起こったのか分かりません!! 気づいたら……。あ、アルザさんこの試合いかがでしょうか?」

「うむ。見事な試合だった。これまでの六教乱舞バトル・ウェスタの中で最も素晴らしい試合と言っても良いだろう。それくらい見事だった」

「さ、最後は見えましたか?」

「ワタシにも全てが見えたわけではない。ただ、超雷速でカルマの背中を捉えていたはずのライライ。ワタシ自身もそこまでは見えていた。だが、次の瞬間にはなぜかライライの後ろにカルマがいた。そのまま回し蹴りで終了だ」

「ま、回し蹴りでしたか」

「あぁ、カルマの後ろに回るまでは正直ワタシでも見えなかった。今年の優勝は決まったな」

「ま、まだ二回戦ですが」

「逆に誰がいる」

「い、妹さんは?」

「残念だがイルザも無理だな」

「──お姉様! ワタシも頑張るわよ!!!!」

「す、すごい大きな声で妹さんが叫んでおります」

「可愛いな。流石はワタシの妹だ。だが、ちょっと今回は相手が悪い。あいつは出禁にするべきだ。あれがいると優勝者が固定となってしまい面白くないだろうしな」

「そ、そこまでですか」

「それほど、と言うわけだ。ワタシも試合では勝てんな……ルール無用なら分からんが」






◾️◾️




 ライライ君、見事だった。まぁ、まだまだだねって感じもするけど。才能は感じたかな。最強ランキングなら40位くらいかね?


 まだまだ、これから伸びていくる印象だ。また服を脱いで試合が来るまでに出店などを巡っているとジーンとライライ君が寄ってきた。




「団長殿、ありがとうございました」

「うむ、良い試合だったな」

「あ、ありがとうございました……だ、団長、さん」



 おや、素直になっている。



「団長殿との試合を経て、私自身もライライと話をしました……」

「はい! だ、団長さんの試合とジーンの話を聞いて貴方は尊敬できる方であると思いました。ご無礼をお許しください!!」




 あーあ、ジーンに洗脳されてしまったか。くっ、無条件に俺をヨイショして上げてしまう勘違いする団員が一人増えてしまった!


 前の方が尖ってて俺は好きだったぞ




「無理に言葉遣いは直さなくて良いとも。そんなに年も変わるまい、最初のように話したまえ」

「あ、はい、わか、わかりまし、わかった」



 キャラが……ぶれている。すごい噛み付いてくるくらいが良いキャラしてると思ったんだけど。



 まぁ、良いか。




 ──そして、なんだかんだあって、俺は準決勝まで勝ち上がった。



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