第13話 芥川龍太郎

 おはようございます。世界一のゼロ様のメイド、レイナと申します。さて、最近ゼロ様は子供を迎え入れたようです。


 何やら兄妹を世話しているようですが見た感じあれは、ただの子供ではないように思われます。


 あれはいつもの絶対に厄介ごとであるなと思いました。



 それとなんだかんだで良い方向に解決するんだろうなとも感想を持ちました。



『あの二人は、世紀のロリコンに狙われているぞ。な、なんとしても守らなくては(使命感)』



 ロリコンとは知らない単語ですが大体意味がわかってしまったので何も聞かないようにしておきました。


 さて、あの子供女の子の方がシズカ、男の子の方がシズラと言うらしいです。いつもならゼロ様の部屋でゼロ様のベッドの匂いを嗅ぎながらお昼寝をするのですが、本日は兄妹が居るのでそれをするわけにもまいりません。



 なので旦那様、ゴルザ様の家にて掃除をしておりました。



「レイナちゃん。いつも悪いわねぇ」

「家に置いて頂いているので当然ですよ」

「あらあら、やっぱりゼロちゃんの婚約者はレイナちゃんかしら」

「ふふ、そうでしょうか」

「でも、結婚するとなると色々お金かかるわねぇ」

「今度、ゼロ様とデートに行くのでお金っていくらあっても足りません」




 そう言えばゼロ様も引退したら資産形成してスローライフをしたいだとかなんとか言ってましたね。

 私もお金を集めないといけないですね。



「そうだわ。家を整理した時に出た骨董品とか捨てるのは売って良いわ。それは貴方への給金とするわね」

「太っ腹ですね。流石は奥様」

「ふふふ、できるメイドさんにはちゃんと給付をするの」

「流石でございます」



 やはりゼロ様の母親と言うことなのでしょうね。と言うわけで私はウエディングドレス代、結婚資金、デート代などを集めるために清掃を始めた。最初に私はゼロ様の部屋に入ったのです。


 ゼロ様は昔からかなり色々行動している方ですので様々な骨董品を持っておられます。ですが、私はできるメイドなので勝手に人の部屋に置いてるものを売ったりはしません。



「お邪魔しまーす。未来の嫁が入りますよっと」



 ふむふむ、先ずはベッドの匂い嗅ぎながらお昼寝をしましょう。さて30分ほど小休憩を挟むだけで終わりにしておきます。



 その後、部屋を掃除して物置きに向かいました。ここにはもう使わなくなったり飽きたりした物が大量に入っています。もう捨てて良い物が置いてあるのが物置なのです。


 ゼロ様も



『ここにあるのは捨てていい奴だから、もう使わないゴミとか置いてるんだ。ママンとかパパンもね。だから、欲しいのあったらあげるよ。俺も使わないし』



 そう言ってましたし。存分に漁らせてもらいましょう。


 さーてと、この中に高値で売れそうなのはないかな



「うーん、骸骨の頭、これは売れないでしょうね。昔ゼロ様がこれを被っていた時期があったのを思い出しました。他には仮面ですか、これまた古い。うーん、やっぱり売れそうなのは……あ、これは」


考古学者兼著者、芥川龍太郎あくたがわドラゴンたろう。『世界神域書物シリーズ』第2巻『羅生門・改』。



「あぁ、昔描いてたと言っていた書物ですか。芥川龍太郎って誰ですか。あの方の考えることは相変わらず意味がわからないですね。うーん、あの方のノートですがこんな落書きは流石にいらないですよね」


 中身は六大神だとか愚神、つまりは私について書かれていた。きっと旦那様のノートの世界の真実を元に描いたんでしょうね。

 古びた風なデザインなのは紅茶をこぼして火で炙ると、まるで年代物みたいに変えられると言っていた手法を使ったのですね。



「ふむ、デザインはいい感じ売ったらお金になるかもしれないですね。ただ、内容は結構ガチですね。うーん、まぁ、売ってもいいでしょう。今更の内容ですし」


 色々探していると面白いのがたくさんありました。大体ゼロ様関係の物ですけどね。



「えっと、他にはデスノート……名前を書かれたら死ぬ……う、嘘ですよね? 流石に。うわ、ルールが細かい、10個以上あります。40秒以内に死因を書くとその通りになる……こ、これ怖いから貰うのやめておきましょう」


 デスノートは怖いのでスルーしておきました。


「他には……南京錠がついているノート。開けたら目が潰れるノート。これは貰っておきましょう。デザインが高級感ありますし」


 適当に何冊か貰っておいて倉庫を整理した。他にも捨てるような物もあったけど、他は売れなさそうだったり個人的に所有しておきたいのばかりだった。



「さて、次は旦那様、奥様、などの部屋も掃除しておいた方がいいでしょうか」



 普段はあまり掃除をしていない場所だったので偶にはしておいた方がいいですよね。最初は旦那様の部屋を掃除しましょう




「旦那様、お部屋のお掃除に参りました」

「私の部屋はしなくていい」

「そうですか」

「妻の部屋をしてやれ」




 そう言われたので今度は奥様の部屋を掃除をしよう。今回給金を約束してくれたのも奥様ですし。


 念入りに丁寧に掃除をしましょう!



「お邪魔しまーす」



 中は綺麗で整頓がキッチリしてある女性の部屋であった。家族全員の絵画が貼ってある。ベッドが置いてないのは毎晩旦那様と一緒に旦那様の部屋で寝ているからだろう。




「ふーん、えっとここを拭いてー。拭いてと」



 暫く掃除をして中を綺麗にしておいた。




「あれ、このクローゼットはなんでしょう。かなり厳重に……ま、魔法がかかっている?」



 そんな、魔法をかけるまで施錠をしているとは一体全体何を閉まっているのか気になってしまいます。


 ……こっそり開けて後で魔法をかけ直しておけば



「え!? な、なんだこれ!?」




 中には黒タイツだ。ぴっちりと体のラインに合うようなピチピチのタイツ、猫のつけ耳、狼のつけ耳、ローブ、仮面、鞭、鎖、剣、毒、何やら怪しい本。他にも沢山……




「な、なんだ、これ……奥様たちのSMプレイ用なのでしょうか?」

「レイナちゃん」

「ひっ」



 気づいたら奥様が私の後ろに立っていた。姿は未だ確認できないが絶対後ろにいる。そ、そのはずなのに全然気配を感じません!!

 け、気配遮断!? さ、流石はゼロ様の母親!!




「ご、ごめんなさい!」



 私は頭を下げました。振り返り、彼女に頭を下げました。頭を上げるとお母様がニコニコしてジッと私を見ている。お、怒ってるのでしょうか?



「ふふ、レイナちゃんが頭を下げているのは私の残像よ」

「え!?」

「ふふ、この部屋に入っていけないと伝えなかった私が悪いわね。今後、このクローゼットを開けることは禁止よ」

「は、はい」

「レイナちゃんは独特の魔力だから少し怪しいなとずっと思っていたのだけど……このクローゼットよく開けられたわね。特殊な魔法がかけられていたと思うけど」

「あ、はい。すいません。そのゼロ様が魔法を教えてくれて」

「ゼロちゃんは魔法を持っていないでしょ。人のせいにしないの」

「あ、はい。すいません」




 うぅ、怒られてしまいました。はぁ、今日はこの本を売ってさっさと休みましょう。



 私は近くにある骨董品屋へと向かいました。



「ふむ、芥川龍太郎? 聞いたことのない著者じゃのぉ」

「はい」

「……なんじゃ! これは! 見たことのない文字じゃ!!」



 あ、ゼロ様の日本語という奴でしょうか。一部を自身しか知らない文字で書いていましたね。



「じゃが、他は読める。一部を独自言語で書いておるのか、紙質も古くて年代物みたいじゃのぉ。これをどこで?」

「あ、えと、家宝的な感じです」



 捨てる倉庫に置いてあったと言ったら引き取り額が下がりそうですね。嘘でも家宝であると言っておきます



「ふーむ、随分と古い。しかも六大神に触れる内容とは興味深い。考古学者などが高く買ってくれそうじゃなな。よし、10万ゴールド出そう」

「え! 売ります売ります!」



 やった、これでゼロ様とのデート代が稼ぐことができました!



「──これは今度の大オークションで高く売れそうだしのぉ」




 その後私はすぐさまゼロ様の元へと向かったのです。学校帰りのゼロ様はイルザ様と歩いておられました


「だから、お母様はフィジカルモンスターなの。お兄様もその血が入っているから魔法騎士もやっていけるわ」

「あぁそう」

「ゼロ様ー!」

「おー、レイナ」

「出たわね、泥棒メイド」



 イルザ様は怪訝そうな顔をしておりました。ゼロ様はいつものようにヌボーとしているお顔です。



「臨時収入が入りましたので一緒にディナーに行きましょうゼロ様」

「へぇ、奢ってくれるん?」

「ふふもちろんです」

「流石太っ腹だ。最近太ももがムチムチになってきてるだけある」

「おい、私の悪口やめてください! でも今日は許してあげます」

「アタシもご一緒するわね」

「……えぇ」

「アンタ、一応はお兄様に雇われているメイドでしょうに。お兄様のものはアタシのもの、アタシのものはお兄様のものなの」

「なんですかその謎理論は」

「ご飯食うのは決定だな。俺のおすすめの店にしよう」





──ゼロ様との親密度が上がった!!







 

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