第2話 演出は大事

 嘗て厨二病であった俺へ。本当にお前はどうかしている……



 嘗ての俺は代行者としてあることに悩んでいた。



『登場した時の、演出が微妙だ!!』



『全てはあのお方の思し召しのままに……』



 とか言っている厨二チックな男を演じているのに登場する瞬間が微妙だと、なんだかパッとしない!! 代行者とかたいそうな名前で活動をしているのだから、もっとカッコイイ登場演出がしたいんだ!


 ただ、闇から出てくるのもカッコいいけど。ちょっと地味だ。


 どーもー! 俺は神の意志を代弁してまーす!!! みたいな大袈裟だがこれくらいはインパクトが欲しい。


 ミステリアスな雰囲気は消すとカッコよくないので、こんなハイテンションはできない。しかし、インパクトは欲しい


 ……そのときに脳内に電流走る




 BGMだぁああああああああああああ!!! 登場BGM、アニメでもゲームでも、演劇でもこれは絶対に重要視されてきた。BGMが無いからパッとしないんや!!!


 そう思った俺は登場BGMを確保する為に奔走した。そして、手に入れたのだ、それは鴉、黒鳥、つまりはカラス、要するに話せるカラスである。


 流石は異世界、言葉を話す鳥が居るのだ。インコの延長線なのだと思うが、インコではカッコよく無い。男は黒に染まれと言うのが古来からの習わしである。まさに異世界のカラスはカッコイイ。


 しかも魔力があるので調教すれば転移魔法も使うことができる。これにより、俺の魔力を感知すると急に現れ登場時に、暗黒微笑BGM(勝手に命名)を話せるカラスから流すことができるのだ。


『るーるー、るーるるるるー』



 大量のカラスによる暗黒微笑BGMを登場時にオーケストラをさせることにより、登場したときにカッコ良さが増してしまう。更に一部に羽を落とさせることで黒い羽の雨を降らすことができる。



 代行者が現れるとき、それは黒き翼の雨を呼ぶ。



 ふっ、カッコよすぎだぜ。こんな贅沢な登場をする存在が今までいただろうか? いいや、俺しかいないだろう。


 更に、BGMを他にも覚えさせることが可能だった。ランダムであったり、俺の魔力の昂りで違うのが出るようにしたり。

 ちょっと強めの敵には代行者の真価が見えるかのようなBGM(自分で言っててどんなBGMなのかはよくわかっていない)にする事も可能だった。



──代行者として、演出が極まってきたな。やっぱり厨二ちっくな演出は最高だぜ!!



 しかし……そんな演出も代行者として飽きてしまった時はなんの役にも立たない。カラス達も調教してしまったので俺が魔力を垂れ流すと勝手に暗黒微笑BGMを歌い出すし。


 だから、素の状態だと魔力使えないから落ちこぼれを演じるしか無い。最初はそれもかっこいいと思っていた、劣等生と思わせておいて実は強いは誰もが好きであると思うし、通る道だ。


 でも、今ってもう厨二飽きてるから必要ないんだよね。謎に【コツコツコツ】みたいにカッコよく足音がなる靴も持っているが正直必要ない。



「ゼロ様、会合が始まります」

「胃が痛い……喉も痛い。これはインフルエンザかもしれない!?」

「はいはい。あとでハグして慰めてあげますよ。この可愛いメイドが」

「そういうのはいらない」

「バラしますよ」

「だから、上司を脅すなよ」



 仕方無いので、神父の服に着替えて髪型を整えつつニコニコ代行者スマイルをしながら家を出た。



 本日は【アルカディア革命団】という都市伝説を真に受けている俺が作ったやばい集団、その中でも幹部達と六大神についての話し合いだ。敵が神を復活させることを目的にしているらしいのだが、


 そもそも神様っているわけないだろ? 正直大概にしてほしいね、俺がけしかけて入るように促しているから、口が裂けてもそんなこと言えないが。



「ほほほ、団長殿、お久しぶりでございます」

「ジーンか、久しぶりだね」



 俺に話しかけてきたのは【星】と言う【冠位】を与えたジーンだった。見た目はヨボヨボのお爺さん。髭生えてて、髪も白髪、眼鏡もかけている弱そうな見た目である。だがしかし、剣の腕は超一流であり、以前は聖騎士と言う位の高い魔法騎士であったらしい。



「団長殿、孫のリーンが会いたいと言っておりましたので、また遊んでやってください」

「勿論だとも。私も優秀な仲間の頼みを断るほど切羽詰まっているわけでも無いのでね」

「ほほほ、リーンが喜びます」




 ジーンはわざわざ、聖騎士と言う高い地位を捨てて俺の元に来た人だ。うむ、真実など言えるはずもない。

 今でも都市伝説みたいなのを信じて、活動をしてくれている。うむ、まじですまん!




「アルカナ会合、楽しみにしております、先に会場に向かっているので。それではまた」

「あぁ。またあとで」




 ふぅー。会合はレイナに丸投げしよう。



「ゼロ様、大丈夫ですか?」

「やばいかもしれない。熱出てきたかも」

「どれどれ……」



 レイナはおでことおでこを合わせた。彼女は控えめに言っても美人だ、銀髪が腰ほどまで伸びており、俺と同じ以上の綺麗な青い瞳を持っている。身長は180くらいあり、高身長ながらスタイルもめちゃくちゃよくて凹凸もハッキリしすぎている。


 だからと言って、恋愛感情はない。最早家族みたいなもんだし



「熱ないですね」

「ごほごほ」

「はい、嘘の咳払いはやめましょう」

「れ、レイえもーん! 助けてくれよー! 会合を無かったことにしてくれ!」

「もー、しょうがないなぁ、ゼロ様は……ってバカ! そんなこと言ってないで神父の服も着ているんですし、ここまで来たんですから出てください」

「ノリいいよね。お前」

「ふふふ、貴方のメイドですから」




 なんだかんだ、頼りになるなぁ。


「結婚したくなりますよね?」

「いや、俺黒髪黒目の大和撫子みたいなのが好みだから」

「……」




 次の日、レイナは急に黒髪黒目に変えてきた。こいつ、偶に変なことやり始めるよな。




◾️◾️




 私は一度死んだ身だ。



 魔法騎士として、何年も働き国のために尽くしてきた。聖騎士という高い身分にもなった。結婚をし、娘が生まれ、娘を育て、そして娘も孫を産み、孫の顔を見れるだけで私は幸せだった。


 私の娘は妻と同じで若くして病気で死んでしまった。娘の夫も同時に騎士であったが戦いの最中に亡くなった。

 孤独となった娘が一人だけ残り、そして、孫を私は引き取ることにした。聡明で良い子だ、寂しさを見せないように必死に笑っている。



 私はこの子をなんとしても守り、育てなくてはならないと思ったのだ。



 ──だが、それは打ち砕かれた



「バトリット、これは一体どういうことなんだ」

「ジーン……なんと言ったらいいか」

「お前、一体全体どこに所属している。子供の数が不自然に減っている、騎士の死体も何に使っている?」

「よく、そこまで調べたな。感心するよ」




 長年、相棒であったバトリット。互いに剣の道を極めようと約束をした男は、あろうことか違法な売買などに絡んでいた。人身を売り、または攫っていた。最初はそんなことはありえないと思っていたが、妙な魔力の上昇、騎士の行方不明。不自然な点と点を結び、奴が何かに加担していると私は気づいたのだ。



「なぁ、ジーン。あの時の約束を果たさないか」

「約束、だと」

「剣を極めると言っただろう。だが、我々には時間がない。それに成長にも人では限界値というのがある」

「それは当たり前だ。自然の摂理だ」

「だが、だが、それは違うのかもしれないと最近気付いたんだ。詳しくは言えないが、ずっと魔力が平行線だった私も魔力量が増えたんだ! お前も更なる飛躍ができる」

「……多くの犠牲でか」

「そうだ。命も私たちのような強者に使われた方が世のためだ」

「そうか……バトリット。今すぐ、捕えている人間、及び関わっている者達全ての情報を吐いてもらおう」

「残念だよ。ジーン。強者を一人失ってしまうとは」




 互いに剣を抜いた。嘗ての同志とこんな形で本気の斬り合いをするのは心が痛かった。だが、私は私の矜持を曲げられなかった。誰かを守るための剣だったのだから。



「──さ、流石はジーン。聖騎士の位を授かりし者だ」



 私は勝った。嘗ての友に。剣を向ける。私の質問に答えなければ……



「ジーン。残念だよ。本当に……あれを見たまえ」

「……っ!?」

「お、お祖父様!!」




 私の孫であるリーンが黒ローブの男に捕えられていたからだ。そして、思わず、隙が生じてしまい、私は腹部を刺されることになる。



「ば、バトリット……」

「残念だ、ジーン。本当に。最後にもう一度、問わせてくれ。私の友よ、私と共に来てくれないか」

「……っ」

「断ってもらっても構わないが」



 断る選択肢などない。私がここで殺されればリーンも命の保証などないのだろう。



「お、お祖父様」

「り、リーン」



 ズキ、と傷が痛む。血が溢れ出し、意識が散漫になっていく。どう考えても私の道はここで終わりを告げるだろう。命が死ぬか、人として死ぬか、私にはその二択が迫られていた。



『るーるー、るるるるるるるー。るるるー』



 黒鳥が何やら不気味な鳴き声を発し、空を舞っていた。一匹ではない、二匹、もっと多い。黒き羽根を落としながら、まるで音楽のように鳴いている。


 そう、何かを祝福するように



 コツ、コツ、コツ。足音がはっきりと聞こえた。誰かがここに近づいてきている。鴉の鳴き声、まるで漆黒の天使のように、あのお方は現れたのだ。



「随分と盛り上がっているところ恐縮なのだが、私の話を聞いてもらえるかね」



 金髪、神父の服。仮面。特徴的な部分が様々あるが驚くべきはその魔力の波であった。まるで一切澱みがない聖水のように流れが美しかった。



「貴様……何者だ」

「真なる神の意思を代弁する者。大袈裟に言ったが単なる聖職者と変わらんよ」

「そうか……貴様が【代行者】か」

「如何にも。その名で呼んでくれても全く困ることはないがね」



 背丈はそれほどに高くない、リーンと変わらぬ年齢であると私は悟った。同時に驚いたのだ。立ち姿だけで確信をする強者の覇気。



「なるほどなるほど、ならば【天明界】に敵対をする愚かな存在か。しかし、こんな小さい子供であるとは思わんかった。だが、子供であっても愚神を立てたのだ。死の他にあるまい」

「確かに私はまだ子供だ。だが、私はあのお方の意思を代弁する存在。そう安く思われては困るというもの」

「随分と口だけは回るようだ。ならば、行動で見せてもらおうか!!」



 バトリットが代行者に向かって剣を突き立てる。光速の剣による突き、大人であったとしても避けることは難しい。


 しかし、避ける瞬間さえ私の瞳にも映らなかった。気づけば私の側に代行者が立っており、治癒魔法にて回復をしてくださったのだ。




「か、回復魔法。他者を回復させる系統は高等技術であるはず!?」

「少し、休むといい。君の娘もすでに私のカラスが確保している」

「なッ!?」



 上からカラスが娘の体を落とした。私はそれを抱え一歩下がる。まさしく、神業と評するのが正しいのだろう。



「ここまでとは……まさか、天明界に敵対をする存在を甘く見ていたわけではないが想像以上と評するべきなのだろう」

「これも、あのお方の思し召し。あのお方の意思を代行する者として当然の実力。反対に君はさほどの実力がないと見た。君たちの信仰する神は安い信徒しか持っていないと言いたいのかね?」

「……良いだろう。その挑発、後悔させてやろう。愚神を信仰する愚者よ。これこそ、大地神の力の一端!!」



 一拍を置いて、バトリットの姿が突如として変貌をする。人の姿から徐々にまるで悪魔のように変わっていった。肌は真っ白になり。目は赤く、頭部には角が生え、背からは翼が一つ生える。



「この姿になるのは……消耗が早いが!! ここまで私を侮ったのだ!!! 対価は死あるのみ! 代行者よ!!」

「対価にしては随分と高そうだがね。さぁ、どこからでも取り立ててくれたまえ」




 余裕綽々、両手を広げどこからかかってきても構わないと代行者は語る。バトリットが割れるほど大地を蹴り上げるが、次の瞬間には宙に浮いていた。



「な、ナニッ?!!! 一体、どんな手を使い、私を宙に投げたッ!!」

「種を明かしては、奇術師も仕事ができなくなるというもの。まぁ、私は聖職者なのでね、語ることもやぶさかではない。ただ単に投げただけだ」

「っ!?」




 全くと言っても過言ではない。力の質が桁がまるで違う、どう見ても私達よりも若く小さい。



 ──突然変異の、化け物




 まるで、あの存在こそが神なのではないかと思わせる




「さて、私はそろそろお暇させてもらおうか。祈りの時間が迫っているのでね」

「舐めるな!」

「【螺旋・組み上げる塔・私は頂上から見下ろす者・蒼き空落とし青に染める】」



 『魔力の強烈的な波』彼の手に螺旋状の蒼いエネルギーの塊が生成されていく。それを指先に構え、空に向かって向けた。



「【青空空玉そうてん・ごく】」




 彼は引き金を引く。超常的なエネルギーが空を空く染めた。その弾丸は空へ空へと登り、登り続け、音もなく消滅した。




「さて、私はもう行こう」

「ま、待ってくれ」

「ふむ。何かね」

「き、君は何者……」

「代行者。あのお方の意思を代行する存在」

「あ、あのお方……」

「全てはあのお方の思し召し……ここに私がいることもあのお方のご意志のまま」

「……一体、この国でナニが起こっているのか、君は知っているか?」

「この国の問題ではない。世界の問題と言っておこう。私は神々と戦うため、布教に勤しむ聖職者。言ってしまえばこれだけだ」

「……わ、私はどうすればいい。分からないのだ。何をすれば、何を信じて良いのか。私が知らぬところで何かが動いている」

「ならば私と共に来るかね。君の孫の安全も私ならば保証できる」

「な……」

「これも、あのお方のご意志なのだろう。その気があるならば付いてくると良い」

「……」



 そして、私は団長殿の下につくことにした。それと同時に知ってしまったのだ。世界の真実を……六大神について、そして聖神アルカディアについても。




「そん、なことが……捻じ曲げられた歴史。神々の暴走」

「その通りだ。驚くのも無理ないだろうがね。真っ向から違う歴史だ。歴史とは何者かによって語られる一部の背景にすぎない。その背景をすり替え、捏造し、語らせることは難しいことではない」

「……そ、そのようなことがあるのか。そして、聖神アルカディアはどのような存在なのでしょうか。貴方ほどの存在が仕えるとなると、よほど素晴らしい神であると考えられるのですが」

「ふむ……(確かに散々、「あのお方」と言っておいて仕えている設定の神様がしょぼかったら格が落ちそうだな。少し設定盛っておくか)」

「……」

「あのお方は……身長60メートル、体重は3万トン。眼から2兆度の火の玉を無詠唱で作り出し、笑い芸にも長けていらっしゃる」

「な、なんと。そんなとんでもない存在だとは!」

「更に、アメリカという別次元に存在する国で大統領という国のトップとして活動。その後、日本という国でも国のトップである総理大臣という役職となり、少子化問題も解決。語る言葉は月よりも美しく、同時に敢えて道化を演じ人を笑顔にもすることができる。彼女が一言発した言葉が海を笑わせ、海を二つに分断もした」

「な、なんと!?」

「そして、その容姿はあまりに美しく、人を照らす。そのせいで太陽が暫く人を照らす必要がないと感じたほどだ」



 す、凄まじい存在であった。この時、私は納得をした、ここまでの才に長けた化け物が仕えているのだから、ここまでの神であるというのは説得力があった。




「さて、君には【冠位】である【星】を与えよう。私と共に世界を救おうではないか」

「分かりました。団長殿」




 あの時、このお方の手を取らなければ私はきっと死んでいただろう。孫もあのお方の貴族領地にてこっそりと匿って頂いている。



 そう、私は今、充実をしているのだ。団長殿に拾われ、アルカナ革命団の一員として、人の命を救う活動をしているのだから。



「おや、副団長殿」

「ジーン様、お早いご到着ですね」

「そう言う副団長殿も随分と早いではありませんか」

「団長のサポートが私の役目ですから」



 会合場所には既に副団長殿の姿があった。私はあまりこの方について詳しくはない。団長殿がいつも身の側に置いていることくらいだ。あの団長が置いているのだから、相当の実力者であり人格者なのは分かるが。



「副団長殿はなぜ、革命団に?」

「そうですね……成り行きと言いましょうか。私もあのお方を崇拝している身ですので」

「聖神アルカディア様ですね」

「えぇ、慈愛に満ちた素晴らしい神ですよね(まぁ、私のことですけど。私は慈愛に満ちてる素晴らしい神です。可愛くてメイド業も完璧です)」



 副団長殿は嬉しそうに語っている。なるほど、この方も一人の信徒、その反応も当然だろう。


「えぇ、しかも身長60メートル、体重は3万トン。眼から2兆度の火の玉を無詠唱で作り出し、笑い芸にも長けていらっしゃる方ですし。我々とはスケールが違うお方ですしね」

「…………ん?」

「おや、ご存知ではないのですか? 団長殿が言うには更に、アメリカという別次元に存在する国で大統領という国のトップとして活動。その後、日本という国でも国のトップである総理大臣と言う役職となり、少子化問題も解決。語る言葉は月よりも美しく、同時に敢えて道化を演じ人を笑顔にもすることができる。彼女が一言発した言葉が海を笑わせ、海を二つに分断もしたとか」

「…………はい?」

「そして、その容姿はあまりに美しく、人を照らす。そのせいで太陽が暫く人を照らす必要がないと感じたほどだとか」

「……それはあってますね。美しいのはあってます。太陽も私ほどの美女がいれば照らす必要ないですが……その、それは団長、ゼロ様が?」

「はい」

「……適当に盛ったな。あのガキ……」

「副団長殿、如何なされた?」

「いえ、何も、ただ、ちょっと、あとで……説教をする相手ができただけです」

「おや、そうでしたか」




 副団長殿は引き攣った笑みを浮かべていた。まぁ、疲れているのだろう。あの団長殿が側に居るのだ。並大抵の存在ではまともに仕事についてもいけないだろう。





◾️◾️



──アルカナ会合後




「ゼロ様ぁぁぁああああ!!!」

「なんだなんだ、頭わしゃわしゃするな」

「うわああああああああ!!! 笑いに長けてるとか!! 海を割ったとか!! 何事ですか!!」

「どうした? なに? 何怒ってるの?」

「体重は3万トンもありません!!! 49です!!」

「あ、そう、なに? だから? 何の話?」




 会合が終わった後、レイナは俺の頭をわしゃわしゃしながらすごーく怒っていた。どうしたんだろう? 偶に騒ぎたい年頃なのだろうか?



「もーーーーーーー!!!!!!」

「だから、何の話だって」

「もういいです。その代わり、ハグしてください」

「え? なんで」

「良いですから! 罰です!」

「嫌だよ。俺悪くないし。と言うか何の話かわからないから。自分が悪いと思わないのに謝るのって逆に良くないだろう」

「……まぁ、確かに。じゃあ単純にハグして欲しいからしてください」

「うむ、よかろう。今日も会合でサポートしてくれたしな」




 ハグをしているとレイナは黙ってしまった。こいつ結構甘えん坊なんだよな。でも、我が妹や姉には甘えようともしてないし。


 まぁ、裏でアルカディア革命団とかやってるし、人にはそう簡単に絡みたくても絡めないのかも。



「ゼロ様。今度、魔法騎士学校の入学式ですね」

「うむ。魔力は使えないから落ちこぼれ確定だな」

「あぁ、魔力使うとカラスが寄ってきて歌い出しますもんね。羽根も落ちますし。あれなんとかならないんですか?」

「無理。既に調教しちゃったから戻らないよ。性癖が一度拗れたら戻らないのと一緒だな」

「その説明は如何なものかと」

「すごい分かりやすいだろう」

「そういえば、妹様と姉様との関係はどうなってますか?」

「リトルシスターは相変わらず冷たいかな。ビッグシスターは相変わらず優秀、でもあんまり話したりしない。今学校だしね」

「妹様と同時期に入学とは」

「まぁ、なんとかなるでしょ」

「そういえば……今日の会合で学園に天明界のスパイがいるって話題になってましたね。革命団からも何名か派遣するとか」

「え!?」

「聞いてなかったんですね。ずっとニコニコして首縦に振ってるだけで聞いてなかったんですね」

「すまん。だって、話よくわからん。皆、都市伝説を真に受けている感じだから。陰謀論に正直ついていけないというか。敵の天明界とかいうのも真に受けて違法実験したりしているし、普通にやばいというか……そもそも神様っているわけないだろ」

「……実は私が神様なんです」

「あ、うん、そうか。えっと……疲れてるよな? ごめんな、いつも迷惑かけて。偶には休んでも良いんだぞ? ほら、ハグもいつでもいいぞ」

「可哀想な子を見るような目はやめてください」

「今度一緒に旅行行こう。偶には気分リフレッシュ大事だぞ」

「だから、急に優しくしないでください。まぁ、旅行は約束ですよ!」




 メイドのレイナは疲れているのだろう。今度からちょっと優しくしてあげようと思った。











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面白ければモチベになるので☆、感想よろしくお願いします!!

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