短編集
傘瓜
スイカ割り
真夏の蒸し暑い日、俺たちのいる真っ暗な部屋に光が差し込んできた。それから完全に部屋全体が明るくなるまでは一瞬だった。
まただ……また、仲間が一人減る。今度はどんなやられ方をするのか……
そうソワソワとしながら目の前に現れた金髪の男の様子をうかがっていると……男の手が俺に伸びた。
男に頭を掴まれて身動きが取れなくなった俺は、ただ俺がさっきまでいた狭い部屋の中の仲間たちに助けの視線を送ることしかできなかった。
しかし、ずっと俺の隣いた仲間たちは視線を俺から逸らした。その瞬間、俺はようやく孤独を感じた。
しかし、その孤独はすぐに消えた。男がこの中で一番体のデカいやつを選んで、俺と同じようにそいつの頭を掴んだのだ。
それから俺とデカいやつの頭にはそれぞれ袋が被せられ、再び目の前が真っ暗になった。
そしてただ恐怖しか感じていなかった俺とデカいやつは車のようなものの中で揺られて、車から降ろされた。
頭から袋が取れた瞬間、眩しい夏の日差しが目に入ってきた。そして少し視線をおろすと青い綺麗な海と砂浜があった。
「へえ、結構デカい奴持ってきたじゃん」
隣で声がしたからそちらに視線を向けると、さっきのデカいやつが金髪の男の知り合いであろう人に頭を掴まれていた。
「へへ、あざっす。まっ、もう一個は腐りかけの奴っすけど」
金髪の男とその他の複数の輩の視線が一気に俺の方へ向いた。俺も自分の体へ視線を下ろす。
色んなところに傷が入っていて、とても醜い。
まあ、もう死ぬしいっか……
そんなことを考えていると、隣にいたデカいやつが輩たちに持ち上げられ、少し遠ざかった所へ行った。
そしてデカいやつが砂の地に固定されると、輩たちはデカいやつから十メートルほど離れた。
輩の中の一人が包帯で目元を隠し、木製バットを取り出した。その光景を見てそれが「スイカ割り」と判断するのに、そう時間はかからなかった。
輩たちが「右、左……」など方向の命令をし、とうとうバットを持った男がデカいやつの目の前に立った。
「そこだあ!」
一人の掛け声と共に、木製バットが振り上げられた。
デカいやつの表情は見ることができなかった。
ただ俺が見ることができたのは、デカいやつの頭がバットでぐちゃぐちゃににされ、そいつがいた所が真っ赤に染まった事だけだった。
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