20歳
キザなRye
第1話
「この箱に入れたものを20歳に皆で開けよう!」
小学校の卒業式前日に担任の先生が箱を持って教壇に立って言った。いわゆるタイムカプセルをやろうというものである。
「先生!何を箱に入れるんですか?」
クラスの中でも目立ちたがり屋のタイプの男の子が元気に先生に聞いた。
「20歳の自分に宛てた手紙を今から書いてそれを入れようと思う。他に入れたいものがあったら入れても良いぞ」
子どもたちは先生が用意した便箋に20歳になった自分に宛てた手紙を黙々と書き始めた。子どもたちは手紙にどんなことを書けば良いのかと悩んでいたが、先生が一人一人に話をしながら手紙の完成を促した。
「よし、皆入れるものはすべて入れたか?」
先生がそう言うと慌てて机の中から訳の分からないものを入れる子どもたちが教壇のところに行って箱に入れた。全員が入れるものを入れた後に先生が箱の蓋をした。
「20歳になったら皆で集まって箱を開けよう!」
それから8年後、小学校を卒業した子どもたちは20歳になっていた。大学に行っている人もいれば社会人になっている人もいた。
小学校の担任の先生は成人式の会場に来ていた。タイムカプセルを開けるためである。タイムカプセルとは言っているが、校庭の地面に埋めるような一昔前のものではなくてあくまでも20歳になったら開封するというだけのものだ。箱の見た目も当時から大きく変わることは無く、綺麗な状態だ。
成人式が終わって会場周辺は人でごった返していた。先生は予め成人式終了後にタイムカプセルを開封することを伝えていたので成人式に出席していない人を除いた当時のクラス全員が集まった。
タイムカプセルには20歳の自分に宛てた手紙が基本的には入っているのでその手紙をそれぞれが受け取った。ただ、手紙を取り出した後に箱に残った“ガラクタ”は誰も手が付けられなかった。元々机の中に埋まっているようなものが入っているので20歳になった彼らからしても価値あるものとは言えず、さらに誰が入れたものかすら分からない。当時のことを皆で思い出して誰が入れたのかを考えたが、結局誰のものかの結論が出ることはなく先生が持ち帰って処分することになった。
20歳 キザなRye @yosukew1616
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