第22話 何の痕?

「フローラおはよう……って、そんな格好でどうしたの!?」

 既に私の部屋で待っていてくれたレベッカは、驚いて目をパチクリさせている。

 ばあやは「おはようございます、フローラ様」とだけ言うと、静かに微笑んでいた。


「あっ、こ、これはその……。昨日、オスカー様と身体を重ねて……あわわ、思い出してしまいました……」

 私はその幸せな時間を思い出し、顔を真っ赤にして両手で覆う。

「わぁ、遂に!? フローラおめでとう!」

 レベッカは頬を赤くしながら両頬に手を当てて喜んでくれた。


「うん、でも……」

「どうしたの? 何かあった?」

 シュンとうつむく私を、レベッカが心配そうに覗いてくる。


「胸元にこんな痕があるなんて気付かなくて……朝になって気付いて、きっとオスカー様にも見られてるよね……?」

 私が涙目でそう尋ねると、レベッカは顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせていた。

「お、おばあちゃんこれって……」

「ええ、キスマークでしょうね」

 ばあやはそうマッタリと言った。


「き、キスマーク?」

 私は聞き慣れない単語に首を傾げる。


「ええ、フローラ様はオスカー様に見られたくないと、そう仰っておりましたが、その痕は、他でもないオスカー様によって付けられたものでございます」

 と、ばあや。

「やだぁ、私キスマークなんて初めて見たー! フローラ、オスカー様にすごく愛されているのね!」

 レベッカはそう言って何やら興奮している。


「オスカー様が、付けた……? オスカー様が、そんな私の身体に傷なんか付けるはずないです!」

「ええ、ええ、そうでしょうとも。その痕は、傷などではありません。オスカー様は決してあなた様を傷付けた訳ではないのですよ」


「じゃぁ、どうして……?」

「先程レベッカも申したでしょう。あなた様を愛していらっしゃるので、あなた様を自分のものだと形に残すために、そうしてキスマークを残すのですよ。それは、オスカー様の強い口付けで付いた痕なのです。心配なさらずともその内に消えますよ」


「オスカー様が……私を自分のものだって……口付けで付いた痕……だからキスマークって……」

 私はその意味がだんだんと分かってくると、顔がどんどんと熱くなってくるのを感じた。

「あはは、フローラ照れてる~」

 レベッカが茶化してくると、更に顔が熱くなる。


「さぁ、フローラ様。お分かりになったのでしたら、お洋服を着ましょうね。風邪を引いてしまいますよ」

 ばあやにそう言われ、下着姿だったことを思い出した私は、一層赤面した。

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