実録!ミミック農場レポ
三椏香津
実録!ミミック農場レポ
ーミミックって知ってる?
「ダンジョンにいる、宝箱的なの?」
ーそう、そのミミック。あれが飼育されてる農場があるの知ってた?
「へぇーっ。」
あれらが家畜の様に草原で日向ぼっこしているのか、想像しただけで面白かった。
なので、
「今日からお世話になります!」
私は実際に農場で働いてみることにした。
「よろしく。早速案内するから、こっち。」
返事をして私は農場主について行った。
案内された農場はイメージ通りだった。ただ、口を開けたり動き回る様子はなく、草原に無数の箱が置かれたシュールな光景が広がっていた。飯時以外はこのままだと農場主が笑った。
「この子達は何を食べるんです?」
「この子達…ねぇ。基本は冒険者が討伐した化け物の死骸だな。」
「え。」
「元々市場に卸さない物、状態が悪くて俺達が食べない物は、基本これらが食べて処理するんだ。」
「…そういうのはスライムの仕事だと思ってました。」
「奴らはごみ処理場や鍜治場に回せない鉄屑の処理があるからな。全部は無理だな。」
要は『農場』ではなく『ごみ処理場』だった。
昼時、ミミック達は餌の時間になった。わかってるのか、先程まで無造作に置かれた箱だった彼らが動き出し、次第に列を作った。
「こうやって並んで口を開けるから、順番に餌を放り込んでいけばいい。」
新鮮とは言えない、私達なら食べないだろう臭いを放つそれを次々にミミックの口に放り込んでいく。
「大変です!先日入った新入りがいません!」
従業員が、叫びながら走ってきた。またかと農場主が言った。
「今朝の餌番は誰だ?」
「新入りです。」
農場主が今餌をあげた隣のミミックを見た。他は大きく口を開けて待機の中で唯一、口を閉じていた。
「6時間、もうだめか?いやワンチャン…。おい、工具持ってこい。」
「は、はいっ。」
「よっと…あぁ。やっぱり遅かったか。」
その子…それの中身は、今餌箱の中に入っている物と区別がつかなかった。
翌日、農場を辞めた。
終
実録!ミミック農場レポ 三椏香津 @k_mitsumata
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