語呂合わせ
紗久間 馨
卒業式の朝
今日はセーラー服を着て中学校に登校する最後の日だ。鏡に映る自分の姿を、特別な思いを持って念入りに確認する。
髪型も、うっすらと色のついたリップも、コートのシワも大丈夫。きっと、大丈夫。
幼なじみと一緒に登校するため、いつもより早く家を出る。約束の時間まで5分もあるのに、
「おはよう、
隣の家に住む、幼い頃からの友達。そんな
「お、はよ」
わたしは緊張して挨拶もまともにできなかった。
「明日の朝ね、卒業式の前に、一緒に神社に行きたい」
わたしが前日にした急な誘いに、
わたしは友達よりも特別な感情を抱いていると自覚した。ずっと好きだった。今でも、ずっと好きな人。
中学生になった
友達だと割り切って、近くにいればよかった。なんて後悔しても、もう遅い。
何を話すというわけでもなく、並んで歩く。まだ寒いというのに、
両家の家族で揃って初詣する氏神神社が目的地だ。手水舎がない小規模の神社。けど、通学の時にいつも前を通り、秋には維とイチョウの葉を拾ったこともある、たくさんの思い出がある大切な場所。
一礼して鳥居をくぐり、参道を進む。
「このイチョウの木、切っちゃうらしいね」
「聞いてない? 大きくなりすぎて管理しきれないし、危ないからってことらしいよ」
「あっ、そうなんだ。知らなかった」
寂しい気持ちで胸が押しつぶされそうだ。
「お先にどうぞ」
拝殿の階段の下で、わたしは
「え? 一緒でいいじゃん」
一緒に鈴緒を握り、ガランガランと鈴を鳴らした。小さい頃にもそうしていた。
賽銭箱にお金を入れる。聞こえた音から、
深くお辞儀を2回する。同じようにお辞儀をする
手をパンパンと2回叩く。揃えたわけではないのに音が重なる。
再び深くお辞儀をして、そっと両手を胸の前で合わせて目を閉じる。
今までありがとう。
お参りを終え、鳥居に向かって参道を戻る。
「なあ、賽銭箱にいくら入れたの? そこそこの音してたよね?」
「えっと、415円」
「何で?」
「良いご縁がありますように、っていう語呂合わせなんだって」
「それって、
「いや、そういうことじゃないけど・・・・・・」
「けど?」
そんな意味を込めたなんて言ったら、重すぎると思われそうだ。
「でも、テキトーに100円玉を入れた
「金額なんか関係ないんだって。こういうのは気持ちなの、気持ち」
と言って
「あのさ、卒業式が終わったら、その第二ボタンもらっていい?」
つい勢いで思っていたことを口にしてしまった。わたしの言葉に
「あっ、他の人が欲しいって言ったら、わたしは別によくて。あの・・・・・・」
「
「えっ?」
「だから、俺がボタンをあげるのは
神様! わたしたちをずっと見守っていてくれた氏神様! これって、もしかして、期待してもいいですか?
「離れても、わたしのこと、忘れないでいてくれる?」
「忘れるわけねえだろ。何?
「絶対に忘れないし! ずっと、ずっと、好きだし! だから・・・・・・」
押さえ込んできた感情が溢れ出す。
「心配すんなって。俺も、
どうか
語呂合わせ 紗久間 馨 @sakuma_kaoru
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