3

「そろそろ飯食うか!」



お昼近くなり、わたしの浮き輪に掴まりながら浮いている創さんが言った。

2人で会えなかった日々の出来事を話していた。

こんなに近い距離で創さんと喋り、すごくドキドキしてすごく楽しかったから、終わってしまうのは名残惜しかった。




創さんが浮き輪を引いてくれ、やっと足のつく場所まで来た。

砂浜に近付くにつれ、目の前の創さんの身体が海からどんどんと現れていく。




引き締まった大きな背中にドキドキしてしまう。




海から上がると、創さんが浮き輪を持ってくれた。

わたしをチラリと見た後、

「上着とかねーの?」と聞いてきてわたしは首を振った。

「そうか・・・」と呟き、レジャーシートに2人で向かった。





浮き輪を持ち歩く創さんの後ろを歩く。




創さんの左手は、わたしの右手に触れることはなかった。







海の家に着き、何を食べるかキョロキョロする。



「わたし焼きそばは絶対食べたいです!

あと焼きとうもろこしと、かき氷も食べたいな~。

あ、でもかき氷はまた後で買ってもいいですか?」




「食べ物の話になったらまた元気になったな。」




創さんは優しく笑いながらわたしを見下ろす。

でも、わたしの右手は空いたまま。





海の家のレジに2人で並んでいると、

「すっげー良い女いる」と男の人の大きな声が聞こえた。

海の家の中にあるテーブルで食事やお酒を飲んでいる男の人数人のグループ。



「本当だ、でも男連れじゃん。」



「見るだけならタダだからよく見ておくわ!」



「お前気持ち悪いな~!

でも、すげーエロい身体してんな!

顔は?」



「めっちゃ可愛かった!」




酔っているのかすごい大きな声で話していて、下品な笑い声が聞こえ、急に怖くなる。

動かない創さんの左手を見て苦しくなる胸をキュッと抑え、ほんの少しだけ創さんの近くに寄る。





それに気付いたように、創さんの身体がこっちを向き、左腕を広げ・・・




わたしの腰に手を回し、ゆっくりわたしを引き寄せてくれた。





創さんの大きな身体がわたしの右側にピタリとつき、しっかりした左腕はわたしの腰に。

それだけですごく安心できて。

でも、上半身裸の創さんさんにくっついているのには恥ずかしすぎて、ビキニから見えている自分の身体も恥ずかしくて。





固まっているわたしに何も言わず、創さんの左腕はキュッと力が入った。





息が出来なくなる程キュンッとする。






順番が来て創さんが注文してくれ、食べ物も空いた片手で持ってくれた。

レジャーシートに戻る時は、さっきの男の人達の席は通らないよう歩いてくれる。

たまたまかもしれないけど。




海の家を出ても、創さんの左手はわたしの腰に回ったまま。

恥ずかしくて心臓が煩かったけど、わたしに触れてくれている嬉しさが勝っていた。




レジャーシートに戻ると、回っていた腕は離れていき、わたしの身体はスッと冷たくなってしまった感覚になる。




「これ、掛けておけよ。」




創さんがバスタオルを広げ、ゆっくり肩から掛けてくれた。

お礼を言うと、食事が入ったビニール袋から何かを取り出し渡してきた。




「これ買っといた。

そういえば結局塗れなかっただろ?」




創さんが渡してきたのは、日焼け止めだった。





「あ!嬉しいです!今からでも塗れば真っ赤になるの大丈夫かも。

ありがとうございます!」



「お前真っ白だからな。」



創さんが笑いながら日焼け止めを渡してくれた。

掛けてもらったバスタオルを一旦置いて、首や腕、足など日焼け止めを塗っていく。





創さんの視線を感じて恥ずかしかったけど、お腹や胸も素早く塗った。





そこで、気付く・・・。





急に止まったわたしに、「どうした?」と創さんが聞いてくれる。





わたしは頭の中で大急ぎで悩みに悩んだ後、ゆっくり創さんを見る。





「背中、塗ってもらうことできますか・・・?

愛実にお願いでればよかったんですけど・・・。」





創さんは数秒固まった後、「そうだよな・・・」と言ってわたしから日焼け止めを受け取った。





創さんに背中を向ける。

心臓の音が煩くなる。





創さんの手が優しくわたしの背中に触れる。

無意識に身体がピクッと跳ねてしまった。





両手をギュッと握りしめ、目もギュッと閉じ、創さんの手が背中を撫でるように触れるのに身体が反応しないよう必死に耐える。





創さんの手が、首の後ろ、肩、背中、腰と、ゆっくりゆっくり撫でていく。

ビキニの際まで丁寧に塗ってくれ、思わず「アッ・・・!!」と小さな声が漏れ身体がビクンっと反応した。




「ありがとうございます・・・」




恥ずかしくて小さな声でお礼を言い、創さんの方を向く。

創さんは、怖いくらい真剣な顔でわたしを見詰める。





「まだ・・・」




「え?」




「ちゃんと塗らねーと・・・」





そう言って創さんは、また日焼け止めを手に取り出し、わたしの胸に手を伸ばした。

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