王子さま。その3

「一緒においでよ、ボクの国へ」


 隣国の王子さまは そう言って 微笑む。

 まぶしい笑顔。

 抗えない、甘いマスク。


「ボクなら、キミの欲しいもの すべて 用意してあげられるよ」


 確かに。

 王子さまに逆らえる人なんて、いないわ。


 すべてを 欲しいままに手に入れられる権力。

 王子さまの ひとことで 人の命さえも消えていく。


 怖い。

 怖いけれども、

 あの ときおり 寂しそうな瞳は

 わたしの心に 何かを ささやくの。





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