第25話 希望の灯火
ラジオからの呼びかけは、静かな夜の闇に吸い込まれるように思えた。しかし、張暁たちのメッセージは、壊滅した世界に僅かに残る希望の光を求める人々の心に届き始めていた。
数日後、ラジオ塔に張られたアンテナに、微かな電波が捉えられた。緊張した面持ちで受信機に耳を傾ける張暁たちの顔に、喜びの表情が浮かんだ。
「こちら、グリーンウッド集落。あなた方のメッセージを聞いた。長老たちの…真実について、もっと詳しく教えてほしい。」
それは、近くの森の中にひっそりと暮らす、十数人ほどの小さな集落からの応答だった。張暁たちは、自分たちの体験や、長老たちの隠蔽工作、そして新しい未来を築くための協力を呼びかけたメッセージを、改めて詳しく伝えた。
その後、グリーンウッド集落との間で、断続的ながらも通信が続けられた。彼らは、自分たちの置かれた状況や、食料の備蓄が底をつきかけていること、そして医療物資が不足していることを訴えてきた。
「彼らを助けるべきだ。」
殷正が力強く言った。しかし、自分たちも十分な物資があるわけではなく、安易に約束はできない。それでも、見捨ててはおけないという思いは皆同じだった。
議論の結果、張暁たちはグリーンウッド集落に必要な物資を送り届けることを決めた。生存者たちの中から数名の有志が、危険を承知の上で物資輸送の任務を買って出た。
「くれぐれも気を付けて。」
張暁は、出発する彼らに、長老たちから託された地図を手渡した。そこには、かつて長老たちが隠していた、この地域の詳細な情報や、安全なルート、そして資源のありかが記されていた。
「この地図が、きっと役に立つはずだ。」
数日後、物資輸送隊は無事にグリーンウッド集落に辿り着いた。そして、そこで彼らは予想外の光景を目にすることになる。グリーンウッド集落は、想像以上に緑豊かで、人々は協力し合い、助け合って暮らしていたのだ。
「あなたたちは、私たちに希望を与えてくれた。」
グリーンウッド集落のリーダーは、張暁たちの手を取り、感謝の言葉を述べた。
「長老たちのやり方に疑問を感じていた者たちも、あなたたちのメッセージを聞いて、目を覚まし始めている。私たちは、あなたたちと共に、新しい未来を切り開いていきたい。」
張暁たちの小さな行動は、壊滅した世界に小さな希望の灯火を灯した。そして、その灯火は、やがて大きなうねりとなり、新たな時代を築くための力となるだろう。
しかし、長老たちの影は、まだこの世界に潜んでいる。張暁たちの真の戦いは、まだ始まったばかりだった。
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