隣人

青井 白

ニンニク

部屋の温度計が36度を指している中、半分ほど日が当たるベランダに出て洗濯物を干す。

肘から先とつま先がじりじりと熱くなっていく。

今はちょうどお昼時で、隣の部屋からお皿とスプーンの当たる音がする。

ふわっとTシャツを持ち上げる風が吹いて、汗ばんだ体から熱を取り除いてくれた。

風は熱をさらうと共に、匂いを鼻腔まで届けてくれたようだ。お昼はいつも隣の部屋から食欲をそそられるニンニクの匂いがする。

韓国語で話す声が聞こえるということは韓国人なんだろうか。いつも何を食べているだろうなと、頭の端で考えながら、洗濯物のしわをパタパタと伸ばして干していく。

そういえば冷凍庫にエリンギのニンニク醤油焼きがあったなと思い出した。

そうだ、昼はもう食べてしまったから夜に食べよう。と夕食を決めて部屋に戻る。

机の上に乱雑に置かれたヘッドフォンを取ってベッドに座り、後回しにして放置していた洗濯物を畳みながら、最近特に好きな音楽を聴く。

ヘッドフォンはクッションの部分が破れ、スポンジが中から少し見えてしまっているけれど、もう少なくとも6年はしっかり働いてくれている。

ニンニクの香ばしい匂いとは相容れない曲を聴いて物思いに耽る。洗濯物にアイロンをかけないとと頭の端で思いながらも横になると微睡んでいった。

3分くらい寝ていたかと思い瞼を開くと、部屋は薄暗くなっていて飛び起きる。急に体を起こしたせいで頭が少しクラクラするけれど、なんとか起き上がり電気をつけた。

それから空腹を感じる。もう晩御飯の時間か。また変な時間に寝てしまったようだ。

夜眠れないと困るなぁなんて独り言を言いながらキッチンへ行き冷凍庫を開けた。そして小分けにされジップに入ったエリンギを見て思い出した。

そうだ今日の夕食は決まってたんだった。

エリンギを温めているとニンニクの匂いが広がり、昼間の光景がよみがえる。

暖かい日差しとニンニクの匂いがまた広がってゆく。

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隣人 青井 白 @araiyuki

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