第5話 明かす者たち2
スージーはにこりと笑ってから手を振り研究室へと戻っていった。彼女の背中を見ながら彼女と出会った日を思い出す。かれこれ彼女とは4年の付き合いとなる。彼女が講師として着任した教室に入ってきた大学院生で、非常に細やかで気の利く、優秀な研究員だ。長い時間を研究室でともに過ごすうちに、プライベートでも飲みに行ったりするようになった。お互い馬が合うのか今ではショッピングなどにも行くし、彼女の恋人と3人で遊んだりもする。
彼女と過ごす中で、メリーアンはふと、自分の私生活を振り返ることがあった。スージーが研究と私生活をうまく両立させている一方、彼女は人生のほとんどを研究とキャリアに捧げていた。それが彼女にとっての最優先事項だったし、プライベートや恋愛関係はそれに比べれば二の次でしかなかった。でも、そうしているうちにもう5年は恋人がいないままだ。35歳になり、かなり早いといえる出世をし、現在は准教授の地位をもらっている。
だが、気が付いたらこの年齢だった。最後に付き合っていた恋人は警察官であり、自分がこの大学からオファーをもらった際に分かれた。だが、あの時現在と違う選択をしていたら今頃はどうなっていたのだろう?だがそうしていたらこの地位は得られていなかったこと、そしてこれから行われる新しい調査チームでの仕事と、未知の生物群を解明するという重大な仕事にかかわることが出来ないかったことは確実だったろう。彼女はそのようなことを考えながら会議室へと歩を進めた。
会議室に到着すると、すでに多くの研究者が席に着いていた。メリーアンは一番前の席に座り、ミーティングの開始を待った。メリーアンは心の中で、この調査が科学界にどのような影響を与えるのか、そして彼女が率いるチームが未知の生物群について何を明らかにできるのかを思い巡らせた。
理学部長は、会議の開始と共に、組織の立ち上げの意義について語り始めた。
「我々は今、非常に興奮すべき時期に立ち会っています。世界各地から報告されている新種の生物群は、その発生原因が全くわかっていません。これらの生物が現在の生態系に与える影響は未知数で、早急な原因の解明が必要でしょう。また、これらの生物を研究することが人類の将来にとって非常に有用な知見をもたらすであろうことは言うまでもありません。本日ここに集まっている皆さんは、この未知の生物群を解明し、人類の知識をさらに深めるための重要な役割を担っています。近々イギリス政府も正式に調査チームを発足すると考えられていますが、それに先立ち大学内にも特別な調査チームを設置すべきだと考え、本日このような会議を開くこととしました。」
理学部長の話に対する賛同の声の後、調査チームのリーダー、および現在報告されている新生物に対応するチームのリーダーが紹介された。メリーアンの名前は水生生物の調査チームの副リーダーとして紹介された。彼女の年齢から考えれば異例のことではあったが、実績から考えればそれは当然のことだと彼女は思った。彼女は名前を呼ばれ、そこにいたみんなに挨拶をした後、深く息を吸い込んだ。彼女の心は重大な仕事を任されたことに対する誇りと重い責任感で満たされていた。
その後、現状で報告されている植物、鳥類、哺乳類、魚類に関するレポートが配布され、それぞれに対する報告が短くなされた。ほとんどが事前に配布されていた資料であったが、スージーがくれたものや、新たに見つかった鳥類に関しては本日新しいレポートに差し替えられていたようで非常に興味深い内容であった。
その後の会議は初回であるためか、特に進行を妨げられることもなく進み、彼女の読み通り3時前に終了した。会議が終わった後、彼女はスージー、他のラボメンバーとティータイムを楽しみながら今日の出来事をすべて報告し、二人でこの新しい探求について話し合うことを心待ちにしていた。彼女は、この新種の生物群の調査が科学界に革命をもたらし、自身がその一翼を担うことに深い興奮と期待を感じていた。
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