自宅警備兵団と伯爵家の三姉妹 伯爵家の秘宝

健野屋ふみ

第1話 青銅の自動人形タロースの生成術式書


盗賊団の巣窟のような酒場では、魔薬の煙の匂いが立ち込めていた。


魔薬。


依存性のある向精神薬だ。

魔力を強める効果もあるが、使い過ぎると、魔物になってしまうって噂だ。

まあ噂でその姿が確認された訳ではない。

盗賊団でまともな奴なんて、俺ぐらいの者だ。


そんな酒場だが、サキュバスは美しいし肴は美味い。


これも噂だが、伯爵家が異界から来たもの凄い騎士を雇ったらしい。

100人の盗賊団を、1人で殲滅したらしい。


伯爵家か。

あそこには高く売れる魔道書が、幾らでもあるらしい。


で、昨晩、一夜を伴にしたサキュバスによると、今盗賊団で最も話題なお宝が

【青銅の自動人形タロースの生成術式書】らしい。


確かにタロース系の書物は、手に入りずらい。



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「青銅の自動人形タロースの生成術式書を見つけなきゃ!」

桜子さんに言われ、ぼくらは伯爵家の宝物殿に向かった。


伯爵家の地下に張り巡めってるダンジョンを進んだ。


ダンジョンの中で小梅は言った。

「お前、重装甲脱ぐと、しょぼいな」

「しょぼくないし!」

とぼくは否定したものの、自覚はあった。


ぼくは吉岡凛太郎。

決して、凛ちゃんとは呼ばないで下さい。


ぼくは元の世界では、自宅警備兵団員(不登校)をしていた。

まあその流れで、しょぼいのは仕方ない。

さらに、その流れで、

この異世界では、要塞のような豪邸の自宅警備を任されれいる。


「凛ちゃんのおんぶ楽だわ」

とぼくの背中に背負われいるのは、末っ子気質ゆえの精神年齢が子どもの桃子ちゃんだ。元いた世界では、中1と言ったところだ。精神年齢はもっと低いだろう。



「あの角曲がったら、次あたしね」

と言ったのは、本名梅子だが通称は小梅の次女だ。

元いた世界では、ぼくと同じ高1と言った所だろう。


「じゃあその次はわたしが、凛ちゃんをおんぶしてあげる」

と言ったのは、長女の桜子さん。

元いた世界では、多分、高2か高3ってところだろう。

ぼくより少しだけ背が高い。


桜子さんの背中におんぶ出来る!

抱き着くって事だよな!

ひやああああああああああああ!

ぼくは心の奥のみで歓喜した。



この3姉妹を説明しておこう。


ぼくと同じで学校には行っていない。

ぼくとの違いは1流の家庭教師の女史を雇っている事だ。

多少落ちぶれたとは言え、伯爵家なだけはある。

ゆえに今まで男子との接触はなかった、生粋の箱入り娘3姉妹だ。


そんな3姉妹と向かっている先は、伯爵家の秘宝が眠る第3宝物殿。


多くの冒険者崩れの盗賊団が、この伯爵家の秘宝を狙っている。



どん!どん!どん!


近くで何かを叩きつける音がした。


「タロースが暴れているのかな?侵入者かな」

桜子さんが言った。


僅かに悲鳴が混じっているような気がしたから、きっと侵入者を排除していたのだろう。


青銅の自動人形恐るべき!


そんな事を考えていると、突然現れた青銅の自動人形タロースに踏まれそうになった。タロースは基本アホだから、人を避けようと言う意思が少ない。

一応、伯爵家は主なはずだが。

通りすがりのタロースを避けながら、さらに秘密のダンジョンを進んだ。



つづく


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