初戦

 ということで始まった学園トーナメント。

 その初戦の相手はまさかの豚もとい王子ことクルースであった……いや、なんで僕の初戦の相手がこいつなの?

 制度的にはさ、僕の初戦の相手は別クラスの人になるはずだよね?

 なんでこいつ?


「あぁ……レイユ」


 そんな風に疑問へと僕が思っている最中、クルースは自分の前で勝手にしゃべり始める。


「改めて言おう。過去の私は愚かであった。そのことに、君は気づかせてくれた。そして、それと同時に私は気づいたのだ。君のことが好きであると」


 そして、そのままクルースは僕への愛の言葉を口にする。


「生理的に無理ですわっ!」


「ぐふっ!?」


 一瞬で切り捨てた僕の言葉にクルースはあっさりと倒されて崩れおちる。

 申し訳ないが、そもそもとして男はNGである。

 絶対にない。


「トーナメントの試合はこれで私の勝利ですの」


「待ちなさい。流石にこれは……勝ちじゃありません」


 満足してバックヤードの方に帰ろうとした僕を慌てて審判の方が止めてくる……ちっ、このまま帰らせろや。


「ふ、ふふ……いずれは、必ずあなたを振り返らせてみせしょう。そして、今日もその日のための一つ。私が変わったということを、ここでしっかりと見せつけてあげましょう」


「何度も言いますが、絶対になしですわ」


 ここまでされると正直に言ってちょっと申し訳なくなってくるよね。

 相手として、絶対になしなのにここまでされると。


「ふふっ!それを乗り越えて見せる!」


「……もういいですの」


 しっかりと僕は断ったこれでいいだろう。

 僕は諦めて剣をさやから抜く。


「それじゃあ、早く始めますわ」


「あぁ、そうするとしよう」


 そして、クルースも剣を抜いて僕の方へと構えてくる。


「……おほんっ!それでは、試合。開始っ!」


 そんな中で、審判が声を張り上げて試合開始を宣言する。


「はぁっ!」


 それを受けてクルースが先手必勝と言わんばかりに僕との距離を詰めてくる。


「……ふぅ」


 だが、それは僕相手だと悪手となる。

 僕はどちらかというとカウンターの方が得意なのである。


「ふんっ!」


 自分の元へとやってきたクルースに対し、僕が見せるのは圧倒的な力。


「ぐぼっ!?」


 純粋な反射神経でクルースの動きに合わせた僕は純粋な身体能力でもって彼を叩いてノックアウトさせる。


「思ったよりも成長していましたの」


 先ほどの姿。

 クルースの無駄のない動きを思い出しながら率直な感想を漏らしながら。


「何はともあれこれで私の勝利ですの」


 僕は勝利宣言を口にするのだった。

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