イレギュラーエンカウント

 急に地面をぶち破ってこの場に現れた謎の巨大な魔物。


「何ですかっ!?いきなり……っ!」


「何こいつっ!?」


 その登場を前にリーベとミエドの二人が驚愕と困惑が入り混じった声を上げる。


「がぁぁ?」


 そんな二人をよそに、僕はとある魔法を唱え終えていた。


「さすがに僕の方が強制力は高かったみたい……」


 この場に現れた魔物。

 その魔物は魔法によって毒を散布するかなり危険やつであった。


「……高かったみたいですわっ!」


 それに対して僕が使ったのはアンチマジックという魔法である。

 この魔法は自分を中心とする一定領域下における魔法の発動を禁止するという特殊な魔法である。

 これによって魔物の毒攻撃を無効化したのである。


「二人とも、聞くですわ。まずわかっていてほしいことですけど、あの魔物はかなりヤバいやつですわ。明らかに三階層の魔物ではないですわ」


「……そ、そうですね。明らかに他とは違う気がします」


「それであの魔物が得意とするのはおそらく毒魔法ですわ。この場に出現すると共に浮かび上がった魔法陣を分析した結果ですから間違いはないですわ」


「えっ?あの魔法陣はこの場に出現するためのものじゃなかったの?」


「それを私の魔法で封じましたわ」


「「おぉー!」」


「それでもそのせいで僕たちも魔法が使えなくなりましたわっ!」


「「えぇ……」」

 

 僕の言葉に歓声を一度は上げたリーベとミエドは一瞬でその気持ちを萎えさせる。


「ゆえに私はそこまでの強さになってしまいましたわ!それと、二人には魔法は使わずに魔力による身体強化と己の体術のみで戦ってもらう必要があるですの」


 ここでアンチマジックを解くのは得策でもないだろう。

 そこまで魔法が得意ではないミエドなんかはこの魔物のの毒に対処なんてできないだろうし。

 多分だけど、リーベだって無理だと思う。

 この魔物、ドラゴンとまでは全然言わないけど、普通に一つの街に大きな被害を与えられそうなくらいの強さは持っていそうである。


「……」


 そんなことを僕が考えていた中、急に銃声が響き渡る。


「はっ!?」


「えっ……?」


 僕が慌ててリーベの方へと視線を向ければ。


「……あれ?使えましたけど」


 そこには魔法によって作られる二丁拳銃をその手に持ち、呆気にとられたような表情で言葉を漏らしているリーベの姿があった。


「……いや、なんで?」


 平然とアンチマジック下においても魔法を発動させたリーベを前に僕は素を漏らしながら疑問のことを上げるのだった。

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