コボルドの牙
何の問題もなくダンジョンを進み続けて三階層。
自分たちの目的であった層へとたどり着いていた。
「よっと」
三階層にまでくれば魔物のレベルもかなり上がってくる。
ゆえに、二階層とは違って僕も魔物と戦うことを許可されていた。
「……ちゃんと無双するのだね」
僕が自分を取り囲む三体の魔物を壊滅させていた最中、一体の魔物を無事に討伐していたミエドが自分に向かって呆れたようにつぶやく。
「ふふん!当たり前ですわ!純粋な身体能力が違いますわ!」
僕はこれまで、自分の美貌を整えるために魔力で自分の骨格や肉付きの成長を捻じ曲げて己の理想とする形を作ってきた。
その過程でついでに戦闘用にも作り変えている。
魔力は本当にすごくて、筋肉密度を常人の三倍にすることとかもできるのだ。
これのおかげで見た目上は筋肉ないけどその実態はムキムキマッチョというう状態になったのである。
「なんか、すごいことをしてそう」
「していますわ!」
僕はミエドと雑談を繰り広げる。
「「……っ!?」」
そんな中、その会話を途切れさせるように一つの大きな銃声が響き渡る。
「あっ、コボルドです」
その銃声の主はもちろんリーベであり、どうやら彼女はダンジョンの中で見つけたコボルドをほぼ反射的に撃ちぬいたようだった。
「私の実力もそうですけど、普通にリーベの力もやべぇーですわ」
「……もしかして、私がこの中だと最弱?」
あっさりと目的を討伐してみせたリーベを前に僕も、ミエドも互いになんとも言えない声を漏らす。
「あれっ!?もしかして私が倒してしまってはダメでしたか!?」
「いや、そんなことないですわ!」
僕は不安げにあげたリーベの言葉を否定する。
「私は平民のくせに手柄をあげやがって、なんて話すほどに器の小さな女じゃないですわ」
「えぇ、そうよ。むしろありがと。しっかりとコボルドを倒してくれて、助かったわ。それじゃあ、あいつの牙を取りに向かいましょうか」
「そうしますの」
「あ、ありがとうございます」
「だから、お礼を言うのはそちらではなくこちらですの。ありがとうですわ。それじゃあ、牙を取りに向かいますの。せっかくだしリーベが牙を採取してみますの、やり方は授業でやったからわかりますわよね?」
「は、はいっ!頑張ります」
「最初のころは大変だと思うけど頑張ってね?」
初めて魔物から素材をはぎ取るリーベにコボルドの牙の採取を任せることを決めた僕たちは彼女が遠距離から近づいて狙撃したコボルドの方に向かっていくのだった。
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