第45話 EP5 (14) 孫クラリス、クララを説得する

 クララが考え込みながらもクロエに抱かれて近づいてくる可愛らしい三ヶ月の孫の顔を見つめる。クララがふと漏らす。


「クラリス、どう思う? 私やるべき?」


 答えがあるはずの無い無垢の顔をじっと見る。すると……


「クララおばあちゃん」

「ひっ!?」


 赤子のクラリスが突然しゃべった! クララは思わず悲鳴を上げた。クロエはその様子に笑いをこらえる。


「私、おばあちゃんならできると思うなー」

「しゃ、しゃべったわよ、この子!」


 困惑した顔をクロエに向けるクララ。クロエは吹き出すのを必死にこらえて言う。


「お母さん、びっくりね。でもクラリスの言う事を聞いてみて」

「え~」


「クララばあさん。やんなよ! 今やんなきゃいつやるの?」 


 クラリスの口調が変……


「ん、んん!」

 ザックが咳払いする。 クラリスのあたりから聞こえる声が訂正する。


「あ、いや、クララおばあちゃん。わたち、やって欲しいなあ、バブー」


「へったくそだな、あいつ!」

 ザックが小声で言う。


 ようやくクララが気付いた。クラリスの陰にコロが隠れている。クララは大きな息を吐いたあと、背筋をしゃきっと伸ばした。クラリスからまた声がする。


「私のためにやってくれますか? バブー」


 コロの演技に気が付いたクララの目は優しくなり安堵の溜息を小さく吐いた。そして数秒置いてから答えた。


「クラリス、ありがとう。あなたにそこまで言われたらやるしかないわよね。ウォードさん、ニーモさん。私引き受けます、全部」


 ニーモは飛びあがり、ウォードはガッツポーズ。そしてクララの目に強い輝きが灯った。ウォードはその目力に驚いた。数分前とは明らかに別人である。最初の作戦は成功した。


 するとコロがクラリスに捕まった。赤ちゃんのクラリスは小人のコロを握りしめ、つまんだりなめたりしている。


「やめろ~。誰か助けて~」


 みんな、大笑いだった。

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