第43話 EP5 (12) クララ、ニーモに驚く  

 ウォードは透明な小箱に入った小さな青い花をクララに見せた。クララは昔、娘二人とよく花摘みに行った時の事を想い出した。それにしてもこの花は小さすぎる。


「デイジーね。随分小さい……」

「そうです。この地域固有のモリッツデイジーですが、ニーモが小型化したんです」


「小型化? どうやってこんなに小さくするんですか?」

「ニーモには細胞を変形させる能力が備わっています。それを使って小さくしたんです」


「凄い力ですね」

「人間でも応用できます。ニーモ、よろしく」

「はいウォード。クララさん、私を見ていてください」


 そう言うと、ニーモは自分の体を子供に変化させた。クララの目が見開く、今見ているものに驚きを隠せない。

「うわ、ニーモさん、子供になっちゃった」


 十歳程度まで体を縮めたニーモが語った。

「クララさんを子供にするのは無理ですが、多少若返らせることはできます。それからご病気があると思いますが、それを体に触れずに治療することが可能です。今日、その処置をさせて下さい」


「え、そんなことしていただいて……」

「お母さん、せっかくだからやってもらいなよ」


 当惑しているクララにクレアが言った。


「あ、はい……」


 クララが一つ目の提案を受け入れてくれた。さて、これからが本番である。ウォードがクララの顔を正面から見つめて、ゆっくりと話し始めた。


「クララさん。ニーモの処置はとても効果的なんですが、精神面を回復させていただくにはクララさんに内面から変わっていただく必要があります」


「内面から……ですか」


「はい。具体的には、たいへん押しつけがましくて申し訳ないのですが、小学校の教師に再び着任していただけないかと。フルタイムでなくて結構ですので、一日数時間で」


「え? そんな…… 無理です」


「あの、昨日学校へ行って相談してきました。クララさんのことを知っているベテランの先生達が、ぜひ何としてでもクララさんに復帰して欲しいとおっしゃっていました。クララさんが担当した時の子供達の意欲が他の先生の時とは全然違うそうです。また育児休暇をとられている娘さん、クロエさんの穴埋めとしても、クララさんのご協力をいただきたいともおっしゃっていました」


「そうですか……少し考えてみます」


 少し離れたところにいたザックとクレアが小さくガッツポーズをした。

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