第41話 EP5 (10) ニーモとウォードの作戦会議

 ウォードはクレアに相談を持ち掛けた。クララを分析した結果から、明日いくつかのクララに関する対応を進めたい事があると。それらを進める前提でニーモによるクララの治療を行うと効果が飛躍的に高まると推定していることを説明した。


 クレアからは「ぜひ、お願い」と懇願された。彼女は母を何とかしたいのだ。


 さらにウォードはニーモと作戦会議を開いた。珍しくニーモが会話を主導した。

「クララさんは心身の消耗に加えて加齢による外観の変化がストレスになっているという訳ね」


「そう。悪循環なんだ。変わっていく自分の姿を見て気落ちする。気落ちするとさらに外観が暗い雰囲気になる。その繰り返しなんだ」


 ウォードはそう説明すると、まずは切り札のニーモのヒーリング能力について確認した。


「クララさんの見た目年齢を若くすることはできるよね? ニーモが自分にやっているように」


 ニーモは他人にも若返る能力が通用することは分かっているが、そのレベルが十分では無いことを理解している様だ。


「ある程度若くすることはできると思う。それから病気の方も改善できる。でも、たぶんそれだけだと効果的にクララさんを心身ともに若くすることはできないと思う」


「どうして?」


「薬草の小型化とか今までの経験でわかってきたんだけど、外部から強制的に細胞を変化するだけでなく、人間だったら、本人自身の内側からの精神的な癒しがないと十分な効果が出ないみたいなの」


 ウォードはニーモが自分と同じように感じていることに安堵し、自ら考えていたクララに関するアクションがやはり重要であることを再認識した。


「やっぱりそうなんだ。だとすると何か具体的に彼女の意識を変える手立てはあるかな?」


 ウォードは自分の案を言う前に、ニーモから何か引き出せるか聞いてみた。


「うーん、わからない。何かトラウマをキャンセルできるような手立てとか前向きになるような刺激が必要なんだと思うけど…… ウォードは何かある?」


「一つアイデアがある。少し強引なんだけど、クララさんに仕事をしてもらったらどうかなと思うんだ」


「仕事……どんな?」


「彼女は以前、学校の先生をやっていたんだ。先生は落ち込んでいる様子では務まらない。絶対に効果があると思う。やる気にさせられるかどうかが問題だけどね」


「そうね。それいいかもしれない。他にも無いかな? ……考えましょう」


 ニーモとウォードはこうしてさらなる作戦を練った。

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