【ラブコメの書きたいところだけ書く】筋肉達磨×胸筋フェチ

二歳児

第1話

リナ…………町娘。ちょっと可愛かったので街に出て冒険者ギルドの受付嬢になったが、都会女子の輝きに負けて意気消沈中(容姿は中の上程度)。外出があまり得意ではないため肌は白く、赤髪、オリーブ色の瞳。胸筋フェチ。


カイト…………異世界転生者だが、転生時に女神などに遭遇したわけではなく、気が付いたら知らない世界にいた。転生先が野蛮人の村で、一応文明人だったカイトは価値観が合わずに村を出る。褐色肌、白髪、銀色の瞳、筋肉達磨。基本的に適当に生きている。


《状況設定》

生活費を稼ぐために冒険者稼業を始めたカイトは、受付嬢であったリナと若干親睦を深める。カクカクシカジカで、二人で街の外に出る機会があり、そこで偶然魔物に襲われている。以下は、それに続く場面(リナ視点)。



――――――――――――――――――




 カイトさんが苛立たし気に瞳を細め、腰に提げた剣に手を伸ばす。音もなくするりと抜けた切っ先をそのまま、目の前で低い唸り声を上げている魔物へと向けた。


「おい、魔物いるじゃねえか。いねぇ、って言ってたよな、お前。えげつねぇ自信満々に」

「いや私もギルマスからの受け売りなので! ギルマスが適当なこと言うからこんなことになるんです。えぇ、あの人のせいです。ちょっと後で絞めといてください。一思いに、キュッとしちゃってください。首とか」


 私はね、普段あんまり外出しないのでね、魔物とかには慣れていないのですよ。こんな凄い殺気放たれちゃったらちょっと近寄りがたいと言いますか、あの、カイトさん、是非とも後ろに隠れさせていただきたいのですが。


「お前おとりな」

「え、いや、ちょっと分かってるんですか、私狙われるほど立派な体つきしてないですよ。例えるならばパスタですよ。フィットチーネとかそこら辺の。あちょっと何してるんですかやめて私を盾代わりにしないで」


 流石にカイトさんに力で勝てる程に私に筋力がある訳もなく。背中に非常に強い力を感じながら、じりじりと前へ前へと体が押し出されて行く。


「酷い酷い酷い、ちょっと流石に酷いですよこれは、レディーファーストって言葉知ってますかカイトさん!?」

「ファーストにしてやってんじゃねぇか」

「あほんとだ!? いやでも違う、そうじゃない、そうじゃないんだ、カイトさん………! 女性は大事にしよう!? モテませんよそんな人の命を使って金を稼ぐような人は!」

「なんでお前死ぬ前提何だよ。だから囮になれって言ってるだけだろうが」

「か弱き女子おなごを囮にする時点で死刑宣告のようなものでは!? ギロチンもかくや…………!」


 鹿の幼子の如く足を振るわせた私を、目の前の魔物は舌なめずりをするように見つめる。その口の端は吊り上がっていて、もはや「ニヤぁ」というよりは「ニチャぁ」になっている。怖い。非常に怖い。決算が合わないときのギルマスよりも遥かに怖い。


 そして後ろから聞こえる笑い声………! さてはおぬし、性格悪いな? 少し悪いとか、悪戯だとかそういうレベルではなく極悪人レベルで良い、、性格をしておるな?


「さぁ私が魔物を引き付けている間に、やっておしまいなさいカイトさん! ちょっとこの状況は非常に心臓に悪いので早いとこ頼みますいや切実に!」

「こんな至近距離で囮使ったところで魔物の注意引ける訳ないだろ?」

「なら尚更なんで私を前に!? 良くないですよ、非常に良くない! カイトさんもこんな下らない事態で人殺しの汚名を被るのは避けたいでしょう? あなたの評判は殆ど私の手にあると言っても過言ではありませんよこの状況。このまま前に突っ込めば目の前で魔物に襲われる女性を助けることができなかった腑抜け冒険者に早変わりですよカイトさん!!」

「…………お前実は余裕だろ」


 笑い声が一瞬聞こえて、直ぐに視界が宙を舞う。何かと思ったらカイトさんに抱えあげられていた。片手で腰を引き寄せられ、そのまま搔き抱くようにして持ち上げられている。身長差があるために片手であっても、十分と持ち上げることが出来ているらしかった。

 にしても、にしてもだ。胸筋が、胸筋がダイレクトで頬に触れているのである。

 もう一度言おう、胸筋がダイレクトに頬で触れているのである……………!!


「ふぁー! ちょっと、ちょっと、ちょっと良い胸筋してるなとは思ってましたけどここまでとは思ってなかったですよカイトさん! 吸って良いですよね!? こんな至近距離ってことは胸筋撫でまわされるのも吝かではないってことですよね!?」

「急にうるせぇなおい」

「吸いますね、吸いますよ…………!」


 最早こんな状況で我慢しろという方が健康に良くない。好きなことは好きな時にしろって、おばあちゃんも常日頃に言ってたからね。後悔のない人生を生きるのだ私は!

 胸いっぱいに胸筋を吸う。これは素晴らしい香り。胸筋の強健さを感じさせる香ばしい香りがしますね!


「良い形、そして良い張り。これは良い胸筋。百点!」

「くすぐったいだろ、動くなよ」

「分かりますよ私には。カイトさん実はこんな魔物余裕なのでしょう。だから私を囮にするとか謎のノリを展開したんですよね、そうですよね。こんな良い胸筋の人間がたかが魔物畜生ごときに遅れを取る訳がない…………!」

「胸筋だけで倒せる倒せないの判断がされてたまるかよ」


 とは口で言いつつも、カイトさんに焦った様子はない。片手で私を抱えたまま、難なく魔物の攻撃をいなしつつ、隙を見ては魔物に対して剣戟を返していた。

 体躯の大きな魔物の攻撃を受けても、私に衝撃が来ない程には安定して受け止められていると言えば、どれ程の安定感かが分かるだろう。やはり良い胸筋は強いのである!


「さぁ、やっておしまい、胸筋さん!」

「俺の事を胸筋って呼ぶんじゃねぇよおい」

「これは二つ名のようなものですよ! モンブランを栗と呼んでいるようなものです、何か美味しそうに聞こえるでしょう?」

「いや全然聞こえねぇな。栗は栗だわ」

「…………闘っている最中なのに余裕ありますね?」

「テメェだけには言われたくねぇ」


 結局、カイトさんが魔物を倒すまでに時間は掛からなかった。私を抱えているということで普段よりも時間が掛かったらしい旨を、戦闘直後に小声でぼやいていた。カイトさんが。ただこの胸筋に張り付いた位置だと全ての呟きが聞こえるんですね実は。

 ただ、闘っている最中に適当にほっぽり出さないで私を抱き抱えたまま戦い続けたのは優しさなのでは? 女子に優しくするけど不器用すぎて態度には表せないタイプの拗らせ男子では………?


「いつまで張り付いているつもりだ、おい」


 ………こんな素晴らしい胸筋と離れ離れになれと?

 この状況で魔物との戦闘を体験したということはもう殆どこの胸筋と生死を共にしたと言っても過言ではない程だと思うのですがそこら辺はいかが?


「どうすんだよ俺がこれでお前のこと襲ったら」

「そういうの真面目に助言しちゃう人がそんな暴挙に走らないことを私は知ってますので。あ、いや、ちょっと引き剥がさないで私はその左胸筋と結婚するんです右胸筋は愛人で!」


 べり、っと引きはがされる私。そして持ち上げられたと思ったら、そのまま俵担ぎをされた。


「え、どこ行くんですか?」

「連れ込み宿」

「いや、ちょっとまって、私まだ生胸筋見る覚悟ができてないっていうかちょっと鼻血でて凄いことになる自信が」

「…………ツッコミどころそこじゃなかっただろ絶対」


 カイトさんは深いため息を吐いた。




 その後私は、ちゃんとそのまま宿に連れ込まれ、ちゃんと鼻血は出て、その後は胸筋と一緒に幸せに暮らしましたとさ。





―――――――――


諸連絡。更新が滞っている作品を読んでくださっている方へ。

こんな短編書いてねぇで更新しろよと思われたことでしょう。私もそう思います。そろそろ繁忙期終わります。ちょっと向こうは続きを書くのに気合が必要なので、あと一週間ほどお待ちください。

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【ラブコメの書きたいところだけ書く】筋肉達磨×胸筋フェチ 二歳児 @annkoromottimoti

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