第二十四話:ブックマンvs魔物?

 道中、魔物は出現したが、後は平和そのものだった。

 デカいゴブリンをブックした後、エヴィアンが声を上げる。


「ダリス、あなたは本当に規格外ですね」

「どういう意味だ? 今のはただのゴブリンだろ?」

「今のはキングゴブリンです。滅多に現れませんし、ゴブリン百体分ぐらいの強さがあると言われています」


 そう言われてみれば確かにちょっとデカい。

 後、ちょっとだけ強かったか? いや、わからないが。


 ただ安全の為にゆっくり進んでいたので、時間がかかっていた。


「この辺りは、こんな魔物が多い地域なのか?」

「いえ、普段はほとんど出現しないはずですね。出なければ、私一人で行こうとは思わないです」

「確かにな……。どうする? 一旦戻ってユベラやケアルを呼ぶか?」

「うーん、いえ。むしろ急ぎたいですね」

「急ぐ?」

「村が心配です。過去に何度か視察をしたことはありますが、戦える人はごく少数でしたから」

「……それは危険だな。けど、もう暗くなってきたぞ」

「安全はやめましょう。できるだけ急ぐので、魔力感知してもらいながら突破に切り替えます」


 だが俺は、兵士としてエヴィアンの安全を優先したかった。

 村人の事は心配だが、それで彼女に怪我を負わすことはできない。


「ダメだ。引き返すとまではいわないが、野営して朝一で行こう」

「……嫌です」

「嫌って……わかるだろ?」

「わかります。ですが、もしこれで村に何かあれば私は後悔します。ダリス、あなたはしないんですか?」


 ズルい尋ね方だ。

 そう言われてしまえば頷くしかない。


 少しため息を吐いて、ブックを詠唱した。

 具現化し続けていると疲れるので出し入れしているが、だしっぱにしておくか。


「わかった。けど、かなり強い魔物が出てきたら引き返す。それが条件だ」

「ふふふ、でしたら問題なさそうですね。ダリスより強い魔物なんていないでしょうし」


 ……あ。


「一般的に強い魔物、に変更だ」

「ふふふ、自分でもわかってるんですね。それでは行きましょう」


 ふたたび愛馬、ユニちゃんに乗り込み急いで駆ける。


 何事もないと願ったが、その希望はすぐに打ち砕かれた。

 魔物の出現があまりにも多すぎる。


 すべてを倒すわけではなく、邪魔な魔物だけブックで倒していく。


 既に外は真っ暗だ。

 しかしそこで、明らかに異変を感じ取った。

 

 立ち上る赤い炎、更に強い魔力を感じる。


 襲撃か、魔物か、おそらく村が襲われているはず。


 だが優先すべきはエヴィアン。

 しかし――。


「ダリス、お願いします。私は――見捨てたくありません」

「……ああ、俺もだ。その代わり、絶対離れるなよ」


 彼女の眼は、声は、退きたくないと訴えていた。

 

 それを理解し、俺たちは村へ向かった。



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