第二章 無貌のオールド・ワン

第23話 ドキドキ?トラブル!

トラブルシューター学……。


ガイダンスを終え、やっと本格始動だ。


早速だが、学園長からの指令が降りてきた。


《任務》

《学園内にて、誘拐事件が起きているのじゃ。誘拐犯は良くいるが、この存在は組織規模のようじゃの。

今回の依頼は、学園に巣食う誘拐組織の殲滅じゃ!》


とのこと。


「誘拐か……」


俺は呟いた。


男の場合、誘拐されてもパーツを抜かれて海に脳核をポイされるくらいのもんだ。


だが、女の場合は、死ぬよりも苦しい違法AVR行きが待っている。


AVR……、アダルト・バーチャル・リアリティ。


脳核を直接コンピュータに接続し、バーチャル空間に意識を転送され、そこで地獄のような陵辱を受けるとか。


基本的にこれは、脳核を圧倒的な演算力を持つ大型の外部コンピュータに接続され、そこからの信号入力によって操作されるので、防ぐ術はない。


快楽物質を供給するプロテクトを破壊され、廃人になるレベルの脳内麻薬で脳味噌をスカスカにされるならまだマシな方。


異常性癖持ちの顧客が相手なら、脳に電気信号を与えて感覚を無理矢理拡張し、痛覚を何百倍にも高めた状態で、バーチャルリアリティでしか不可能な拷問を何度も繰り返される……。


それこそまるで、ブッディストが語る地獄のように、体を切り刻まれて殺されるような死の苦痛を、何度も復活させられて、何度も体験することになる訳だ。


いかに電脳化したサイボーグでも、萎縮した大脳の替えパーツは存在しない。


極度の拷問で精神が破壊されれば、二度と元に戻ることはないのだ……。


だから、早急に誘拐犯をぶち殺す必要があるんですね。


俺は、トラブルシューター学受講者用の電脳ネットワークに、掲示を出した。




×××××××××××××××


トラブルシューター学受講者各位へ。


学園長からの特別依頼が来た。


学園都市を騒がせている誘拐犯に対処しろ。


調査及びパトロール:一日につき3点(レポート提出必須)


パトロール要因のサポート:一日3点(レポート提出必須)


有力情報:10点


被誘拐者救助:一人につき15点


誘拐阻止:20点


誘拐犯特定:30点


誘拐犯逮捕:50点


×××××××××××××××




「ねえ、アンタ」


おや、そんな文字を書き入れた瞬間に、それを読んだらしい三人が来たな。


ナナオ、カルイ、ミコシの三人だ。


「おはよう、ナナオちゃん。今日もいいケツだね」


「ナチュラルにお尻を揉むなッ!!!」


おー、めっちゃ足踏んでくるやん。


かわいいね。


「で、何?」


「あっ、そうだった!この特別依頼って何よ?」


「そのまんまだが」


「……つまり、誘拐犯を見つける為の行動で、トラブルシューター学の受講者に加点されるって認識で良いのよね?」


「そうなるな」


「分かったわ。風紀委員としても、誘拐事件は優先的な捜査対象だったし、そのついでに点ももらえるなら言うことなしね!」


ふむ?


「風紀委員として、ってのはどう言うことだ?」


「え?」


「普通に、警察は……」


「何言ってんのよ?学園都市には本土みたいに警官はいないわ。私達、風紀委員が警察の代わりをしているの」


はえー、そういやそんな話をあったな。


「ではお前らは、アイリス学園風紀委員会本部という名の警察署に勤める警官だ、と?」


「そうなるわね」


しかしそうなってくると……。


「じゃあ、生徒会は何なんだ?生徒会も、学園の治安を乱す存在に対して武力行使をしているんだろう?」


「ああ、それはね、管轄が違うのよ。例えるならば私達風紀委員会は警察、生徒会は軍隊みたいな?」


なるほど……。


風紀委員会は、捜査して逮捕する。


生徒会は、外敵と戦ったり災害救助したりする。


そういう感じになっているらしい。


大体分かった。


とりあえず、調べるのは風紀委員会の仕事らしいので、三人でチームを組んで捜査を始めるとのこと。


暇なのでついていこう。




「まず、アイリス学園風紀委員会の本部で、誘拐事件の情報を集めるわ。闇雲に探し回っても見つからないもの」


お、偉いな。


アホの子は武器を振り回しながら飛び出して行ったのに、この子達はしっかり考えている。


「……まあ本当は嫌なんだけどね」


「ん?どうしてだ?」


「だって、本部の情報処理担当は……」


「ナナオくぅ〜ん♡」


「サナキ先輩だから……」


サナキ先輩、ね。


猫撫で声でナナオに擦り寄ってきたのは、長身に伊達メガネをかけたボブカットの美女。


泣きぼくろがセクシーだ。


なのだが……。


「ハアハア……、ナナオくん、今日もエッチなお尻だねぇ……♡」


このサナキ……、望月サナキとかいう女は、ニヤつきながらナナオの尻を撫で回している……。


「あー、お前、セクハラされ慣れてるなーとは思ったが、こういうことか」


俺がそう言って納得していると、ナナオはイラッとした顔で言った。


「はあ……、そうよ。サナキ先輩は優秀だけど、同性愛者なの」


アッハイ。


「君は……?ああ、男か……」


俺の方を見てそう言ったサナキは、すぐに視線を外し、ナナオの尻に自らの顔面を押し付けた……。


「すぅう……、はぁあああ……♡三徹の身体に染み渡るゥッ……、濃厚な少女臭……♡」


まあ別に変じゃない。


同性愛者なんて、今の時代ありふれている。


ナナオは、額にビキビキに血管を浮かび上がらせながら、サナキに訊ねた。


「先輩、誘拐事件について情報はありませんか?今までの事件発生地点や回数、現場の痕跡など……」


「んんぅ……、あと五分吸わせてくれ。そうすれば答える。……むむっ?!この匂いは?!」


急に叫んだサナキ。


どうしたんだ一体?


「貴様……、私のナナオにセクハラしたな?!ナナオの尻から貴様の匂いがするぞ!!!」


と、サナキは俺に指を突きつけてきた……。

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