サイバーパンク学園 〜元伝説の兵士がサイボーグ女子校で教師生活〜
飴と無知@ハードオン
第一章 『先生』の第一歩
第1話 透き通るようなセカイ?
『理解不能……!理解不能!理解不能!理解不能!!!何故、私ノ《アンドロイド軍団》トホボ変ワラナイ、95%ヲ機械化シタ《フルカスタム・サイボーグ》ニ勝テナイ?!何故!何故?!』
『決まってんだろ、そんな事は』
『理解不能!有リ得ナイ!貴様ト同等ノ性能ヲ持ツ《ハイエンド・アンドロイド》ガ三体イテ、何故敗北スル?!有リ得ナイ!演算ト違ウ!何故、何故、何故、何故ダアアア?!!!』
『《魂》がある人間様と、テメェら鉄クズが同等の訳があるかよ。《魂》が篭ってない奴らに、俺は負けねぇよ』
『理解不能!理解不能!理解不能!《孫行者》!《沙和尚》!《猪八戒》!何故?!立ツノダ!私ヲ守レ!私ハ、私ハ……!世界ヲ支配スル帝王、《光芒》ダゾ?!!!』
『知らねーよボケ。俺からすりゃ、お前は……』
『単なるポンコツロボットだよ』
………………
…………
……
ああ、良いね。
流石は、日本軍の『元帥』様だ。
陸、海、空、全ての軍隊の頂点に立つ超VIP……。
今みたいな時代だと、軍の権限はとんでもなくデカい。
下手すりゃ、総理大臣よりも力を持っている元帥様だけあって、良い店を知っている。
今時見ない天然木材のバーカウンターに、旧世紀の高級ブランデーがずらりと並ぶ。
戦場の酒保で買えるような合成アルコールとは格の違う、天然物だ。
店内に客がいないって事は貸切か?
受付の形式からして、完全紹介制のバーのはずなんだが。
金持ちだねえ。
「久しいな、特務大佐」
白髪混じりの黒髪をオールバックにした、カーキーのツーピーススーツを着込んだ中年。
「はっ」
思わず笑っちゃったよ。
老けたなあ、こいつも。
今時、インプラントでいくらでも見た目は弄れるんだから、少しは若作りすりゃ良いのに。
にしても……。
「初陣でクソを漏らしてたガキが、よくもまあここまで偉くなったもんだな?えぇ?」
俺はそう言って笑い、バーカウンターの前の椅子に腰掛けた。
「ああ、もう……。やめてくれ、特務大佐!お互い、立場があるだろうに……!」
「そうかね?俺からすりゃ、お前が元帥になって、軍人というよりかは政治家になったとしても……、まだ可愛い後輩だと思ってるよ」
「本当に、勘弁してくれ……。軍に、第三次世界大戦前から現役の者なんてもういないんだ。軍人と見るや否や後輩扱いは困るんだよ」
「そうは言われてもなあ、実際後輩だろ?」
「貴方の顔を知っている老人達も、ぼちぼち引退しつつあるのだから……」
「じゃあ何だ?今日はお前の後輩に、俺を紹介してくれんのか?自慢の先輩ですって」
「自慢の先輩である事は否定せんよ。二度の世界大戦を戦い抜き、世界を滅ぼそうとした狂AI『光芒(グアンマン)』を倒した、世界救済の英雄……」
「あーやめろやめろ。背中が痒くなる」
「いやいや。本来なら、この元帥の席に座っていたのも、貴方の筈だったんだ。貴方はそれくらいに、国に貢献した英雄なんだからな」
英雄、ねえ……。
そんなもんに望んでなった訳じゃねえんだがな。
ただ、がむしゃらにやっただけだ。
「あ、てかさ、酒頼んで良いか?お前金持ってんだろ〜!先輩に奢ってくれよ〜!」
「……私の前で、わざわざ道化を演じずとも良い」
……流石に、理解されてるか。
「貴方は、ただの猪武者ではなく、色々と理解している。大戦の英雄として名乗り出ることもなく、戦馬鹿の道化を演じて、政治の世界からは一線を引いている……」
「そうかもな」
「そうでしょう。何故なら、貴方の影響力は大き過ぎるからだ。二度の世界大戦……、ロシア、中国。当時存在した大国と対等に渡り合い……」
元帥は、高級ブランデーを一口舐める。
「……そして、地球滅亡の危機とまで言われた、あの『光芒』を、ほぼ一人で倒した。最近では欧州で、『光芒』の残したアンドロイド共の後始末だったか?とにかく、世界最強のサイボーグにして、百年以上前から生きる伝説の兵士だ」
「買い被りすぎだ」
「貴方が、自らの功績を大々的に喧伝し、そしてこの国の頂点に立ちたいと言えば、我々は配慮して、総理大臣の席を空けざるを得ない。貴方には、それくらいの力がある」
「やめてくれ」
「ああ、そうだ。貴方はそんなことを望んでいない。だからあえて、間抜けな道化のフリをして、権力を持たないようにしている……。立派だよ、貴方は」
はぁ……。
困るなあ。
「あのクソ漏らしが、よくもまあここまでの政治家なったもんだ」
「ははは、政界で大分揉まれたからな。貴方の教導よりも厳しかったくらいだ」
ったく。
「おいマスター、この店で一番高い酒!」
「あっ!勘弁してくれ!この店の酒は本当に高いんだぞ?!」
「るっせぇボケ!休暇中に呼び出しやがって!酒くらい奢れ!」
「いや、貴方は金なんて腐るほど持っているだろう?それに、星の数ほどある勲章の年金で遊んで暮らせるだろうし……」
「良いか?先輩からの教えだ、よーく聞け。『他人の金で飲む酒は、三割増で美味い!』だ」
「最低?!!」
んー……、流石は戦前の酒だ。
響100年……、美味いなあ。
肝臓のフィルターインプラントが強過ぎて酔わないが、飲むとテンションが上がる。
「ああ……、懐かしいな。第四次世界大戦の頃を思い出す」
「んー?そうだな。あの時はもっと仲間がいたけどなー」
「ハハ……、上杉と朝倉は引退して、石田と明智と黒田は老衰で死んだがね」
「老衰ぃ〜?お前らサイボーグだろうが、何寿命で死んでんだ?!」
「世の中の人間は、貴方のように、百年間も戦場に立てる異常者ばかりではないんだよ」
そうかねえ?
「楽しいぞ、戦場は?まあ、もう段々なくなってきたが……」
「それだ」
ん?
「今日呼んだ理由は、それなんだよ、特務大佐」
ふむ……?
「もう、戦場はないんだ。我が国は、貴方を持て余している……」
「で?どうする?殺すか?」
簡単に殺されてやるつもりはないがな。
「ハ、英雄は殺せんよ。立場的にも、物理的にもな」
「じゃあどうする?」
「話は変わるが、特務大佐。やりたい事はないかね?例えば、バイク弄りが好きだったな?バイク開発の企業が……」
変わってねーよ。
はあ、要するに、厄介払いの行き先を選ばせてやるってことか……。
んじゃ、まあ……。
「そうだな……、じゃあ、女子校の先生になりたい。若くて可愛い女子高生に囲まれながら、生徒とイケナイ恋愛とかしてぇーわ!!!!」
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