文字に起こせば

ねみ

春の日差し

カーテンの隙間から春の日差しが降り注ぐ。体が、動かない。なぜだか涙も止まらない。ありきたりだと思っていた日常が崩れていく瞬間。春の匂いを感じることだけが、今の私にできることだった。これは確実に何かがまずい。布団にくるまってただ涙を流している私は、精一杯脳みそを働かせて考える。病院にいかなくてはいけないのではないだろうか。それだけが頭によぎった。この涙を止めるために、何かできることはないだろうか。重たい体を動かして、周りを見渡す。視界に入ったのは日記だった。嬉しいことがあったとき、悲しいことがあったとき、その時の感情を書き留めるための日記だ。手を伸ばし、開いてみる。高校に入ってから使い始めたこの日記も、一年の付き合いになる。何枚もページを捲っているうちにぽたり、と涙がノートに落ちる。そうだ、辛いときは文字に起こしてみよう。いつもそうしているじゃないか。そう思い、立ち上がるために一度、深呼吸をする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る