第11話 寮

「加藤楓です。よろしくお願いします。」


チャイムが鳴った後、一年教室へ向かい楓が挨拶を終える。

毛利先生と共に挨拶をしているが

視線は楓の方へ向いているが外で待っている俺に

警戒を向けていた。


(まあ、こうなるよな・・・・。)


授業中に外であれだけの戦闘が起こしていたんだ。

その張本人がすぐそこにいれば何をしでかすか

分からないと警戒をするだろう。


勝手に戦っている俺たちに対して毛利先生と本田先生は

怒る素振りすら見せなかった所を見ると、

こういった出来事が日常茶飯事なのだろうか?

それともこの後たっぷりと怒られるのだろうか?

この後どうなるのかと考え始め

思考が頭の中でぐるぐると回る。


それに俺がどうなったかもこの後楓に聞かなければならない。

この時間に青さんに聞ければ一番良かったのだが

いつの間にか姿が見えなくなっている。

念話を使っても届いている感じはせず

完全に姿をくらましてしまった。


(流石に迷子にはならないと思うけど・・・・・)


自らの意志で戦いを引き受けたはいいが、

結果的には俺の首を絞めてしまってはいるではないかと

思えて仕方がない。


(だけどあんなことを言われれば引けないよなぁ・・・)


あそこで負けていたのなら、国學館を追い出されていたのかもしれない。

そうではなくとも負け犬として周りから扱われたのかも・・・・・。


「龍穂君。」


考え事をしている途中、毛利先生の声に気付き前を向く。


「は、はい!」


意識外からの声に驚き、大きめの声で返事をすると

そこには挨拶を終えた二人の姿があった。


「挨拶を終えましたので、これからお二人が

過ごす寮の案内をします。

外にありますので行きましょう。」


毛利先生はこれからの予定を話すとすぐ歩き出す。

俺の戦いで時間を取ってしまっただろうか?


玄関で靴を履き替えた後、校門の外へ向かって歩いていく。

家族旅行で旅館やホテルなどには泊まったことはあるが

短期間の事であり、ましてや一人暮らしはしたことがない。


(・・・・大丈夫かな?)


ここまで来て一気に不安が押し寄せてくる。

自分でここに来ると選択し、覚悟は決めてきたはずなのだが

勢い任せすぎたかと少し後悔の気持ちが芽生えて始めてきた。


「・・・ここです。」


校門から歩いて五分をしない所に寮らしき建物がそびえ立っていたが


「これ・・・ですか・・・?」


まるで会社のオフィスのような大きな二つの建物を前に

俺は思わず聞き返してしまう。


「ええ。こちらが国學館付属高校の学生寮になります。」


並ぶように建てられたビルはよく見ると下で繋がっており、

U字のような構造になっている。

見た限り生徒数は百どころか五十人にも満たない。

全員が一部屋を割り振られているとしても

一体どれだけの大きさなのだろう。


「中で寮母がお待ちです。行きますよ。」


俺と楓は寮を見上げながら呆気に取られているが

毛利先生は構わず中に入っていく。

俺達も急いで後に続き、自動ドアをくぐったその先のエントランスで

先程俺達の荷物を預かってくれたアルさんが

腕を組みながら立っていた。


「やっと来たわね!」


「お待たせしました。」


「いえいえ!早めのおやつをいただいたから

全然大丈夫よ!!」


Tシャツとジーンズの上に

可愛らしい猫のワッペンを付けたオレンジ色のエプロン姿で

出迎えてくれた。


「さあ、珍しい転校生さん達!さっきも会ったけど

まずは改めて自己紹介ね!

寮母の久良木アル(くらきある)です!

よろしくね!!」


結んだ長い金髪に青い眼。どう見ても

日ノ本の生まれでは無い様に見えるが

すらすらと出てくる日ノ本語と見るからにカラッとした

雰囲気はお姉さんと言うよりか文字通り良い母親を思わせる。


「私は一度校舎に戻ります。

時間になり次第戻ってきますのでそれまで

アルさんから寮内の案内と規則の説明を受けてください。」


そう言うと毛利先生は小走りで外へ出ていく。

やっぱり俺の戦いで時間が押してしまっていたみたいだ。


「忙しいみたいね。そんな時に時間が押しちゃ悪いから・・・、

早速この寮の説明をしていきましょうか!」


エントランスの大きなテーブルの上にはティーセットが

置かれており、カップからは湯気が立っている。

本来の予定ではこの後お茶を飲みながらゆっくりと

寮の説明をしてくれたのだろう。


「この学生寮の名前は月桂寮(げっけいりょう)!

強く!高貴で!気品のある人間を育てるための寮となっています!!」


玄関の向かい壁に貼り付けてあるエンブレムの飾りを

アルさんは指をさす。

国學館の校章が生命溢れる青々と書かれた木の葉のに包まれており、

寮の名前からして月桂樹の葉をモチーフに作られていることが分かる。


「月桂寮の歴史はなんと百年以上!

建物自体は建て替えで新しくなっちゃったけど

あのエンブレムだけは代々引き継がれてきたものなのよ!!」


素人目から見てもかなり精巧に作られた飾りだが、

所々が欠けたり色褪せたりしていて

アルさんの言葉が真実だと物語っている。


「歴史を説明したいところだけど今は省きます!

もし気になったらこれを見て頂戴!」


アルさんはテーブルに置かれていた冊子を手渡してくる。

そこには月桂寮と文字と青空を背景に寮の外観が描かれていた。


恐らく入学する際に両親や生徒に寮の説明をするための

パンフレットなのだろう。

急な転校だったので目を通す暇さえなかった俺のために

アルさんが用意してくれていたみたいだ。


「まずは寮の各階の説明をします!

ここは見ての通りエントランス!

あの光輝くエンブレムがここで過ごすみんなを学校へ見送り、

迎えてくれる大切な場所になっています!

そして男女共用の共有スペースになっていて

自由時間にみんなが集まる憩いの場にもなっているから

使う際は後片付けはしっかりお願いね?」


かなりの広さがあるエントランスだが、

磨かれた様に綺麗な理由はここを利用する生徒達が

綺麗に掃除しているのだろう。

長い時間過ごす場所だからこそ、

大切にしているのが一目で見て取れる。


奥の部屋まで足を進めると左右に添えて付けられて

二つのエレベーターの前にたどり着く。


「ここから上は男女別れた施設となっています。

色々多感な時期だからね。期待されて入学した生徒達が

何か間違えが起きないようにしっかりと管理させてもらっています。」


エレベータ―の上には左が男子、

右には女子の現す漢字が刻まれており

一目で男女どちらの寮かわかるようになっている。


「二階は生徒達が寝泊まりする寮の自室。

三階以降は道場や遊戯室など寮生活を充実させる

施設などが各階にあります。

実際に見て回りたいんだけど・・・・」


俺と楓が同性であれば何も問題なく寮の中を見て

回ることが出来るのだろが、男女で別れてしまう。

毛利先生は校舎に戻ってしまったので

別々に説明をするにもどちらかがエントランスで待つことに

なってしまいどうしても時間が

かかってしまい途中で毛利先生がここへ戻ってきてしまうだろう。


「・・仕方ない。楓ちゃんには申し訳ないけど

男子寮に入って各階の説明をします。

”先客”もいるし・・・、

男女のどちらも寮の構造は変わらないから大まかな説明は

変わらないから安心して。」


ここからは俺達が学校生活で使っていく施設の説明をしてくれるようだが

アルさんが面白い事を言ってきた。


「先客・・・・?」


今は授業中であり、誰もここにはいないはず。

もし体調不良などで自室で休んでいるのであれば

先客という言い方はしないだろう。


「見ればわかるわ。とにかく行きましょうか!」


アルさんはエレベーターのスイッチを押す。

扉はすぐに開き、まるで大型のショッピングモールにあるような

広いエレベーターに乗り込むとアルさんは二階のボタンを押した。


「この寮は全八階。生徒達が使うのは

五階までね。」


「五階以降は何があるんですか?」


「ん~、言葉で説明するのは面倒なんだけど・・・・。

簡単に言うと緊急事態が起きた時の様の装置が置いてあるのよ。

時間に限りはあるけど、隠すのもなんだし

一通り見回ったら見に行きましょうか!」


エレベータ―が高い音で二階に到着したことを知らせてくれる。

扉が開き、長い廊下に降りると奥に大きな扉が見えた。


「ここには生徒達が過ごす自室と・・・・」


アルさんが早足で扉に近づき、俺達を招き入れるように

開けて待っていてくれる。

待たせは悪いと急いで扉の先へ足を進めると

そこは長いテーブルと椅子が何台もおかれおり、

食堂という事がすぐに理解できた。


「食堂がありまーす!ここも共有スペースになっていて

みんなで食事をともすることで仲を深めてもらう所になっています!

食事は当然寮長である私が作ります!

腕には自信があるから期待してね!!」


張り切った様子で食堂を紹介してくれるアルさん。

胸を張りながら自信満々で説明をしてくれている所を見ると

料理と言う仕事に重きを置いているのが見て取れる。


「・・・・・」


それを聞いた楓の表情が少しだけ変わる。

眉がほんの少しだけ細められ、アルさんの言葉に

何か言いたいことがあるような表情を浮かべたが

それはほんの一瞬だけであり

すぐにいつのも明るい楓の顔に戻った。


「・・・?」


俺はその表情に疑問を持ちながらも

眼を輝かせながら説明を続けてくれているアルさんの

目の前で何を思ったのか聞くわけにはいかない。


「ここに献立が書いてあるし、

連絡事項を書いておくホワイトボートが置いてあります。

入学前の見学なら私が作った昼食を食べてもらうんだけど・・・、

確か毛利先生はお昼を別に用意してあるって言っていたから大丈夫ね!」


厨房の中を見ると、夕食の準備をしているようで

いい匂いが鼻の中に飛び込んでくる。

自信通りの腕前なのが匂いだけでも伝わってくるが

そんなことより視界に入ったある物に

注目してしまう。


(取り皿デカいな・・・・・)


見たことがないほど大きな大皿がいくつも用意されており、

仕込みをしている鍋も巨大な上に五個もある。


五十人にも満たない生徒数のはずだが

見合わないテーブルの数と大きさ。

それに不自然なほど少ない椅子の少なさを見るに

このテーブルには仕込みをしている料理が全て

置かれる予定なのではないのだろうか?


顔の向きを変えずに視線だけ楓の方へ向ける。

楓もこちらを見ており、俺の考えを察したのか小さく頷く。


俺もかなり食べられる方ではあるが、楓は俺の倍以上の

量を食べる超が付くほどの大食いだ。

毎日毎食どんぶりいっぱいでは収まることなく

最低でも三杯。鍛錬などで動いた時なんて

釜ごとご飯を食べ始め、全て食べきった時を見た時は

流石に驚いた。


なぜ寮のご飯事情を知っているかはわからないが、

大食いの楓が嫌な顔を浮かべてしまうぐらい異常な

ほどの多くの料理を食べなければならないらしい。


「食堂はこれくらいね!

今日の朝に転校生が来るって聞いたばかりだから

献立はいつも通りなんだけど、今日は特別なデザートを

用意させてもらったわ!

・・・ちょっとだけ見ちゃう?」


ウキウキとした表情をこちらに向けてきたアルさん。

厨房へ手招きをして

自らの仕事場へ俺達を迎え入れてくれる。


「こ・・れは・・・?」


厨房の上には狐色までこんがりと焼かれた

スポンジが置かれていた。


「見ての通りケーキを作っていまーす!!」


そうケーキ。ここからスポンジやフルーツなどで

飾り付けをしたらできるケーキ。

それは見てわかるのだが、おかしいのは大きさと数。


(ウェディングケーキでも作るのか・・・?)


クッションと言われても違和感のないほど大きな

スポンジがまず目に入り、

まるでマトリョーシカの様に一回り小さなスポンジが

何と合計で五枚も置いてあった。


「張り切って大きく作っちゃったのよね~。

でも・・いつも夕飯をぺろりと食べちゃうみんななら

これくらい大丈夫だと思うわ!」


「あの量を・・・・ぺろり・・・・・」


俺は思わず火がかけられている鍋の方を見てしまう。

全部で百人前以上ありそうな量をぺろり・・・・。

本当なのだろうか?


「いざ目の前にすると仕上げの事を考えちゃうわね・・・。

早く寮内の説明を終わらせちゃいましょう!」


厨房の中を見渡しながらアルさんはつぶやき、

早足で次の場所を向かい始める。


俺達への説明をしていても頭の片隅には

料理のことを置いてあるようでもはや職業病と言っていいだろう。

相当な量を夕飯前に仕上げなければならないので

当然のことかもしれない。


胸の中に実った不安をひとまず置いておき、

食堂を後にする。

するとすぐ先に小さな機械が付けれられた

厳重な扉が現れた。


「ここから先は生徒手帳が無ければ入れません。

男子寮には男子の生徒手帳。女子寮には女子の生徒手帳に神力を流し込んで

この機械にかざすことによって扉が開錠する仕組みになっています。

オートロックになっていて、扉が閉じた瞬間に施錠するから気を付けてください。

もし逆の扉にかざすと私へ連絡が入る仕組みになっていて、

変なことを企んでいるとバレたら担任の先生やご両親にまで

連絡が行くことにもなるからおかしな気は起こさないようにね?」


アルさんが青と赤の色の異なる生徒手帳を取り出し

青い手帳で機械に触れる。

手帳には何かが埋め込まれているのかピピっという

機械音がなり、扉の鍵が開く音が鳴り響いた。


「まだ生徒手帳の登録が済んでいないから

毛利先生からもらってから自分で試してください。

昔ははその各生徒の神力に反応して開閉する扉だったんだけど

他人の神力を模倣する輩がいてね。

そいつが色々悪さしたせいで生徒手帳に

各生徒の神力のデータを取り込んで変換できないに

細工をするようになったのよ。」


「神力のデータですか・・・」


「ここに来る前に魔力と神力の数値を測ったでしょ?

その数値を生徒手帳に取り込んでいるの。

学校に戻った毛利先生が丁度取り込んでいる所だと思うわ。」


開かれている扉に触れるがかなり固そうな扉で

ハンマーなどの鈍器を叩きつけても穴すらあけられないだろう。


「ちなみにこの扉の表面は魔力と神力を通さない特殊な

作りになっていてね。

打撃を通さないほどの強靭なつくりになっているから

破壊はそうとう難しいわ。

まあ、もし破壊したその時は学校の先生達と

対峙することになるからおすすめはしないわよ?」


この学校の先生達と戦う・・・。

誰が好き好んでそんなことをするのだろう?

もしいたとするのならそれは頭のネジが飛んでいるか、

それとも相当な戦闘狂かどちらかだ。


「龍穂の部屋は・・・・ここね。」


扉を抜けて廊下を歩き、一番の奥の扉でアルさんは立ち止まる。

各自室の扉は食堂から抜ける扉とと同じ作りの扉であり

セキュリティーは万全のようだ。


「お邪魔しまーす・・・・」


誰もいないはずの部屋の扉をアルさんがゆっくりと入っていく。


「・・ん?」


まだ陽が高いはずだがなぜか部屋の灯りが点いている。

そして中から布がこすれ、何かが動いているような動きを

楓がどこかに隠していたクナイを取り出し前に構える。


「わしじゃ。警戒するな。」


誰もいないはずの俺が住む部屋の奥から

聞きなれた声が聞こえてきた。


「あら、一人?」


「ああ。一通り話終えた後、用事があると言って出て行ったぞ。」


声の主は途中から姿を消していた青さんであり、

ソファーから立ち上がり手を伸ばして背伸びをしていた。


「なんだ・・青さんですか・・・・」


楓が青さんの姿を見て安心したのか構えを解く。


「誰にも何も言わずにどこかへ行ったと心配していたんですよ?」


「すまんな。少し話がしたいと声をかけられたんじゃ。」


「話がしたい・・・。誰にですか?」


いなくなる前まで青さんは俺の近くいたはず。

声をかけれたのならその姿を俺が

見逃すはずがない。


「・・なんで会いに来たのかを先客に説明してもらおうと

思っていたんだけどね。用事か・・・。

自分で会いに行くと言っていたのに相変わらずね。」


「・・・?」


少し前に言っていた”先客”。

青さんに声をかけることが出来、着いていくということは

面識がある人物なのだろう。

それにアルさんの言いかたであればこの部屋で

俺と会う予定でいたようだ。


それを青さんが止めに入らない所を見ると

恐らく俺と楓も面識がある人物。

一体誰なのだろう?


「先ほどまでここにいたのは

お前の一番上の兄の兼定じゃ。急に入学を決めたという事を

聞いて何が起きたか聞きに来た。」


「え・・兼兄が・・・・?」


もう一人の十歳上の兄である上杉兼定(うえすぎけんさだ)。

東京に住んでいる事だけは分かっているが

何の仕事をしているかは聞いても教えてくれず

実家に帰ってくることも一年に一度あるかないかだ。


「ほんの少しだが龍穂の戦いを見ていたようでな。

成長したなと褒めておったぞ。」


激しい戦いだったので周りを見る余裕はなかったが

まさか俺の様子を見に来ているとは思わなかった。


「兼兄と・・・なんの話をしたんですか・・?」


いきなり国學館へ入学した事情を

張本人が近くにいるのにわざわざ青さんに声をかけ

話をしたのだろう?

二人が話した内容が気になって仕方がなかった。


「・・”龍穂の状況”を話しただけじゃ。

急いでおったようじゃから簡潔に伝え、すぐに出ていったぞ。」


何か後ろめたいことがあるのか

逃げるように俺から目を逸らしながら

何があったのかを伝えてくる。


「本当にそれだけですか?」


明らかに俺に内容を隠す様な素振りに

思わず強めの口調で青さんを問いただす。

俺の人生の大半を共に過ごしてきた青さんだが

今までこんなことをする人ではなかった。

念話を無視してまで話さなければならず、

隠すさなければならない内容を俺は逃す気にはならない。


「それだけじゃ。そんなに気になるのなら

また会う時に聞けばよい。」


「なかなか会えないから言っているんです。

それは青さんも知っているでしょう?」


「奴は今近くを拠点に動いていると言っておった。

八海にある実家よりかは会いやすいじゃろう。

それに・・・・」


青さんは逃がした視線を俺に合わせる。


「近々もう一度龍穂の戦いが見れる機会があるとも言っていた。

そうなんじゃろ?毛利先生?」


青さんの言葉で俺を見ていたと思っていた視線が

その先を見ていたことに気が付く。

その視線を追うために振り向くとそこには

手に二つの手帳を持った毛利先生の姿があった。


「・・・ええ。お二人には午後の時間を使って

その説明をしようと思っています。」


「だから兼定は簡潔に事を済ませたんじゃ。

・・これでいいか?」


何も説明になっていない。

そう言いかけたが、毛利先生が近くにいて口げんかを

するのはまずいと言葉を放つのを思い留めた。


「・・・・・・・」


「龍穂。お前がこれ以上何を言おうと

わしからは何も出てこない。

気になることがあるのなら直接聞け。」


青さんは俺の元へ近づき、胸に手を当て俺の中へ戻っていく。

戻っていく際、一瞬だけ見えた表情は

どこか疲れたような、何か思いつめたような表情だった。


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