第8話 制御と慣らし

奴の一言で火ぶたが切られた戦い。


「・・・・・・・・・」


だが、両者の足は動くことなくにらみ合いが始まった。


奴が持っている槍は十文字槍。

刃が前だけではなく、左右に付いている。

突くことだけではなく薙ぎ払うこともでき

対人戦だけではなく敵に囲まれる大軍戦でも

活躍してきた槍だ。


長い柄の先に着いた穂と呼ばれる刃が付いている槍は

当然刀より間合いは長い。

このまま外から攻撃を仕掛ければ近づくことさえ

許されないだろう。


だが長い分刃の内側、間合いの内側に入り込めば

対応が難しくそこに勝機はある。

それは奴も分かっている。

だからこそ、間合いを詰めることなくこちらの様子を伺っているのだろう。


体に魔力を込めるが、魔力が爆発的に上がっているため

いつも通りの感覚で縮地を使えばどこまで

体が飛んでいくかわからない。


(少しずつ・・・・・確かめよう。)


自分で制御できる力加減を掴むため

いつもの十分の一ぐらいの魔力を体に込める。

長い距離の移動を想定された縮地で試すのはさすがに怖い。


鞘に手をかけてに力を込める。

俺が一番上の兄に習った居合は縮地を短距離で使えるように

した特殊な走法を使用した攻めの居合。

その細かい移動法であれば想定以上の移動距離であっても

修正が効くだろう。


「一兎流・・・・・」


俺は片膝をつき、頭を下げる。

今から使うのは古来から伝わる居合術。

特殊な走法を会得する際、

森の中に潜み、素早く急な方向転換が出来る兎を仕留める

鍛錬を行うことから名前が取られた暗殺の居合。


魔力を溜めた足で地面を駆ける。

何回も足を付き移動する縮地とは違い、

一歩のみで加速や方向転換、急停止を行う走法である”兎歩”。

俺の想定以上の強さで駆けるというより

跳ねたと言っていいだろう。


やはり思っていた以上の速度が出ており、

細かい移動と言えど奴との距離はすぐに詰まっていく。


「!?」


居合と踏んで油断していた奴の驚く顔が見える。

あらかじめ速度が出ると覚悟を決めていたが、

予想の範疇内であり、このまま突っ込むため

鍔に指をかける。


このままでは間合い内に入り込まれると思ったのか

槍を縦に構え始める。

兎歩での移動の弱点は細かい移動を可能にするため、

足を着した際にほんの少しだけ減速してしまう事だ。

俺が出している速度は常人では目で捕えられないほどだが、

奴も体に魔力を込めて身体能力や反射神経を高めており

ほんの少しの減速で向かってきていることがバレたのだろう。


それにしてもさすがの反応速度であり、

このままだと防御の態勢が整ってしまう。


(押し込む・・・・!!)


だが、防御を取ったという事は槍の強みである

間合いの広さを捨てたという事だ。

柄が長い分、一度防御すれば迎撃態勢を取る時間がどうしてもかかる。


「居待月(いまちづき)」


奴の懐に飛び込み、腰を捻って刀身をぶつける。

受けると決めた奴の防御は固いだろうと踏み、

切りつけるのはやめ刀身を力任せにぶつけ

体勢を崩そうと試みた。


長い槍の柄を上下不規則に次々と刀を放っていくが、

奴の体幹は強く体制が崩れる気配はない。

それに奴は防御しながら俺の太刀筋をじっと観察している。

どうやら俺の癖を盗み、反撃のタイミングを探ってきているようだ。


(少しずつ上げていけ・・・!!!)


崩れないのは力が足りないからだと、

俺は腕に込める魔力を徐々に上げていく。

鋼鉄に打ち込んでいるかのような感覚を刀を握る俺の

手に伝えてくるほどの防御だったが、

力を込めていくと少しずつだが柔らかい感触に変わり

押し込めている実感が伝わってくる。


奴の足が下がり始め、体制が崩れていく所を見て

さらに体に魔力を込め追い詰めようとする。


「・・・!?」


だが腕から伝わるはずの力が刀に乗っておらず、

振るうたびに俺の体勢が崩れていく。

足を強く踏ん張り防御の体勢を取っていた奴も

俺のその姿を見て、縮地で距離を取った。


(あほ。焦りすぎじゃ。今までは腕のだけに力を込めても

魔力量が少なかったからそのままでも行けたが、

膨大な量の魔力を有している今の状態で

今までのような魔力操作を行えば

体と腕の魔力の差が広がり、腕に振り回されるに決まっとる。)


魔力を魔術などに変換する際のコントロールの事を

魔力操作と言うが、魔力量が爆発的に多くなったことで

今までのイメージの操作では大きく誤差が出てしまっていた。


「・・・・修正します。」


それに青さんが言っていたように勝利がほんの少し見えただけで

もぎ取りに行ってしまった焦りもあるのだろう。

一度大きく深呼吸をして再度膝をつく。


体に流れている魔力の粒の一つ一つを動かすイメージを

頭の中に作り上げる。

魔力の大きさを例えるなら、空気中に浮かぶ酸素のような大きさであり

それ単体を全てバラバラに動かそうとすれば

脳が焼き切れてしまうだろう。


俺は青さんの鍛錬により短時間であれば操作を出来るようになったが

魔力で強化され、今まで以上に魔力を感じれるようになった

俺の脳であれば今まで以上の時間で操作が可能なはずだ。


「素材型だと思っていたが、違うみたいだな。」


距離を取った奴は槍を構えながら言ってくる。

警戒は強めているようだが、踏み込む気はない様だ。


俺の再度兎歩の構えをとったのを見ての判断だろう。

縮地より距離が短く、小回りの利く兎歩であれば

直線的に踏み込むことしかできない縮地での槍の一撃であれば回避は容易だ。


「・・・・・・・・」


俺は奴の魔術や神術を警戒して、間を開ける。

近距離での戦闘が不利と判断した敵は中遠距離での戦いに

シフトするのがセオリーのはずだが、

奴はその気配すら感じさせない。


この学校にいて武道しか使えないなんてことは無いはず。

何か狙っているのだろう。


(なら・・・・・)


縮地や兎歩でしか詰めらないほどの距離を取っている今であれば

体の慣らしが出来る。

実戦の中での貴重な機会だ。存分にやらせてもらおうと

兎歩を使って駆け出した。


「・・!!!」


奴の槍が反応する。

小さくだが、兎歩で移動する俺の方へ刃を向けており

足を付いた瞬間に生まれる残像に惑わされていない。

先ほどまでは反応できていなかったが、さすがの対応力だ。


だが、奴の間合いに踏み込むことはなく

残像で惑わすように辺りを辺りを回りはじめる。

奴は俺に背後を取られないよう細かく体の向きを

変えているが仕掛ける気はない。


体に流れる魔力の調整を兎歩で移動しながら行う。

魔力の粒を筋肉に浸透させ、徐々に速度を上げていく。

出したことない速度での移動で地面にくっきりと足跡が付くどころか

足跡が地面に埋まってしまう。


(足裏にも気を配れ・・・・!!!)


兎を狩る鍛錬を行う一兎流。その肝となる走法の兎歩だが

森を駆ける兎の走りを見て考案された。


四足歩行の兎だからこその機動力と方向転換を

二足歩行で再現するには足の動かし方も大切だが

地面に着く足裏や指が肝心であり、

足のつき方や指への力のかけ方が爆発的な機動力と

急転換を可能にしている。


今までは足を思いっきり地面に着き、蹴っていたが

かかとから土踏まず、指と滑らかにつくことで

地面にかかる衝撃を分散し地面に埋まることのない

移動を可能にした。


「・・何がしたいかわからねぇが、

来ねぇならこっちから行くぞ!!!」


周りだけで何もしてこない俺に痺れを切らしたのか、

奴は跳ねている俺に目掛けて縮地を使い槍を突いてくる。


人の目では追えない速度で動いているはずだが、

まだ奴の目には俺が写っていたようだ。


槍の弱点である間合いの内側。

それが一番分かりやすく出る時は槍を突くため腕を伸ばした時だ。

槍の刃が体から一番遠いその瞬間が目の前にある好機。

先程の様に焦ることなく、突きを避けながら奴の懐へ突っ込む。


腕が伸び、がら空きになった奴の体へ一太刀浴びせようと

鞘に手をかけるが、奴の動きに違和感を感じる。


腕が伸びきっていない。

俺を突きためであれば、利き手であろう右手が完全に伸びきっても

いいはずだがどこか余裕を持たせている。


(防御せい!!!!)


青さんから念話で違和感が確信へと変わる。

小回りが利かない縮地でわざわざ隙が大きい突きを放ってきた理由。


「釣れたな・・・!!!!」


腕を曲げ、長い柄を体に付けるように回し、

迫ってきている俺目掛けて十文字槍の刃が飛んできた。

俺を突くために飛び込んできたわけでは無く

わざと隙があるように見せ、俺の隙を作るために飛んできたんだ。


「くっ・・!!!」


思いもよらない反撃で、足裏がべったりと地面に着いてしまっている。

これで兎歩を使うと中途半端な距離の逃げとなり

間合いの広い槍と奴の縮地であれば追いつかれてしまうだろう。

であれば、奴が戦いにくい間合いであるこの距離で

受けた方がまだましと考え、抜刀し槍を受け止めた。


(軽・・・・!?)


片手で受けた槍は思った以上に軽く、

それはこの攻撃が本命ではないことを示している。

奴は打ち込んで来た方向と逆に体を捻り、

柄を頭目掛けて回してくる。


軽い一撃だったため、すぐに柄を刀で受け止めることはできたが

奴の攻撃は止まらない。

槍を体の近くで扱い、柄や刃、槍全体を使って

苛烈で止めどない攻撃を放ってきた。


見たことの無い動きに戸惑いながら、何とか刀で対処する。

奴が使ってきているのは槍術ではない。

まるで棒術の様に槍を使ってきているが

先に着いた刃を意識し、俺へと放ってきている。


前の学校でも槍使いとの模擬戦は

したことはあるが、俺が今まで見てきた槍使い達の技術がちんけに見えてしまうほどの

動きであり、槍使いが抱える弱点の答えだと

感じてしまうほど華麗で苛烈な槍さばきだ。


(足を動かせ!!止めてしまっては距離を取られ

槍術へと変えられてしまうぞ!!!)


奴は意表を突いた棒術でできた隙を狙い、

自らの間合いへ持ち込むため距離を取ろうとしている。

本来苦手である体に近い距離で足を止めてしまいそうになるほどの

攻撃を放つ奴だ。

力を存分に発揮できる間合いに持ち込まれてしまえば

不利どころか勝負が決まりかねない。


棒術を兼ねた隙の無い槍さばきに思わず逃げたくなるが

青さんの声を聴いて奮起し、動かせる範囲で

細かく足を動かし体勢を整えようと試みる。


奴もそうはさせまいと槍を振り回し

俺を押さえつけようとするが慣らした体に

魔力を強く流し込み、奴との距離を離さなかった。


「・・・・ッチ。」


距離を離そうとしてもべったりとついてくる俺を見て

舌打ちをする。

露骨に嫌な顔をして鳴らしたその音が

俺達の選択が正解だったと示してくれていた。


「・・・・・!!!」


槍を振り回している奴の体に変化が起こる。

槍を振るうたび、奴は体の内側から溢れ出るように

強い力を出し始める。


(青さん。)


(ああ、距離を取れ、追いかけてこんじゃろう。)


抜刀した刀を切り払うと同時に兎歩を使い

奴との距離を取る。

青さんのいう通り、追いかけてくる素振りすら取らず、

逃げる俺をただ睨みつけてくるだけだった。


「・・武術しか使わん理由はこれか。」


青さんが俺の中から出て奴を見ながらつぶやく。

間合いから遠く、縮地で飛んできても対応できる距離で

奴を眺めているがその間にも神力は増すばかりだ。


「あれは・・・?」


「神力の込め方を見る限り、”神降ろし”じゃな。」


聞いたことの無い単語が青さんの口から出てくる。


「神降ろし?」


「契約した神の力を借り、自らの体に降ろす術じゃ。

神が使う神術はもちろん、身体能力も上がり

強い神であればあるほど手が付けられん。」


「じゃあ、阻止しないと・・!!」


青さんの言葉に俺は焦るが、まるで耳に届いていないように

黙って奴の事を見つめている。


「・・・・・・・・・・」


奴の神力は体がはち切れるのではないと思うくらい

高まっており、両手をついて何かをつぶやいている。

恐らく神降ろしを行うための詠唱をしているのだろう。


「・・・いや。神降ろしをした奴と戦え。」


厄介になると分かっている奴を何をせずに

わざわざ戦う必要はない。

そう思い、攻め入る準備をしていた俺の前に

青さんを腕を伸ばし止めに入る。


「いや、それじゃ・・・」


「負けるかもしれん。だがな、

魔力操作が得意な龍穂が操れないほどの魔力で

放つ魔術であれば対抗できると思わんか?」


青さんの提案は奴の神降ろしとの真っ向勝負。

確かに高まった魔力で放つ魔術であれば

奴に対抗できる可能性はあるが、それは魔術操作を

正確にできればの話だ。


体内の魔力は形を掴むのが比較的楽ではあるが、

体外に魔力を放つ魔術の操作は難易度が上がる。


簡単な魔術であれば、操作の範囲を大きくすることでの

操作でも放つことが出来るが奴に対抗できる強力な

魔術はかなりの魔術操作が必要になる。


「大きな変化、そして成長にはリスクは当然はらむ。

今であれば縮地を使えば神降ろしの阻止は可能だろう。

だが、長年わしが見てきた龍穂の一族を狙う刺客全員が

わしらを襲ってきた鬼とは比較にならん強さだった。

もしそういった強さの奴らが今襲ってきたら

太刀打ちできんだろう。」


歴代の賀茂家に仕えてきた青さんが真剣な顔で

俺にどうするかと尋ねてくる。


つい先日俺の生まれの話を簡単に聞いたばかりで

詳しいことは何一つ知らないが、

人生の大半を共に過ごし、師として仰いできた。

その中で冗談はいうものの、真剣な顔で俺に伝えてきた時の

言葉に嘘はないことだけは知っている。


あの時戦った鬼に対して傷を負わずに勝利することは出来たが、

木霊がいなければ不意を喰らいどうなっていたかわからない。

青さんのいう通り、この先あれ以上の実力の奴に襲われれば

多少の善戦は出来るかもしれないが、

扱いなれていない魔術の隙を突かれ

殺されてしまう可能性が高い。


「・・・・戦いましょう。」


俺は青さんの提案に乗り、抜刀した刀をしまう。

この戦いはあくまで俺がこの国學館にふさわしい生徒かどうか

奴が見定めるための戦い。

激しい戦いの中で受けた槍の刃先は俺の急所を狙ってはおらず、

俺の命までは取らない立ち回りに徹しているのだろう。


当然油断をすれば命を落としかねないが、

この戦いの根底に命をやり取りがない証拠だ。

それだけで実戦とは程遠い。

その模擬戦の中で爆発的に増えた魔力の

慣らしが出来るというのだから、この提案に乗らない手は無いだろう。


俺達が詠唱の隙を狙わず、戦う選択肢を取ったことを奴も

悟ったのか、こちらを見ることを止め

詠唱しながら胸元から札を取り出し自身の胸に張り付ける。


「あれだけの神力を持ってしても

札による補助をつけるか・・・・・」


「それは・・・・それだけ強い神を降ろしていると

いう事ですか?」


「それもあるが・・・、

詠唱の補助も兼ねておるようじゃ。

本来であれば一人で神降ろしすること自体が難しい神を

呼び出せる実力を持っている・・・・。

武道だけが優秀な戦士ではないらしい。」


胸に張られた札から文字が出てきており、体を這うように

蠢いている。

あの文字が奴の詠唱の補助を行っているのだろう。


あのような神術は見たことが無く、

奴の神術の実力が相当なものだと示している。

そんな奴が降ろす神とは一体どれだけの強さを

持った神なのだろう。

覚悟を決め、いつでも魔術が使える体制をとる。


「・・・・・・・・・誉田別命(ほんだわけのみこと)。」


奴が名前のような言葉をつぶやくと体の中にある

神力が爆発的に増え、体が光に包まれると別の力が体に宿った。


降ろした神の名前さえ分かれば簡単な対策を打てるかもしれない。

だが、奴が発した名前は俺が知らない名前であった。


「そっちの名を使うか・・・・。

かなり深い縁を持っている奴みたいじゃな。」


俺が想像もつかないぐらい永く生きてきたからこその知識なのだろう。

聞いたことのない名前に覚えがあるようだ。


「・・・どんな神様なんですか?」


「お主でも聞いたことのある有名な神の別称じゃ。

この国を治めていた武士達の信仰を強く集めた武家の神。

年月が流れ、武家は形を変え今では政に関わることなく

今では”華族”として三道省を支えておるが、

その影響か今でも日ノ本の各地に神社があり

多くの信仰を集めておる。」


武家の神様。歴史の長い日ノ本だが、

将軍としてこの国を治めてきたのは武家であり

その信仰を受けてきたという事は

全盛期では日ノ本の神の中でも最上位の力を有していたのだろう。


それだけ有名な神であれば、さすがの俺でも

心当たりがある。


「今でも日ノ本有数の力を持つ神だ。

その神の依り代であるような特殊な体ではない限り

降ろすことさえ困難だろう。

だが、知名度の低い別称であれば力は抑えられる。

あえて別称での神降ろしを行ったようじゃ。」


奴の体から放たれる光が弱まっていく。

徐々に姿が見えてくると制服姿だった奴の体には

時代が進んだ現代ではまず見ることない

日ノ本式の鎧が備えられていた。


海に囲まれ、独自の文化を形成していた日ノ本の戦の歴史を

象徴する重装弓騎兵の鎧。

長弓を引くための動作を邪魔しないように設計された鎧は

自らに降ろした神の力を存分に発揮できるように

身にまとったのだろう。


「・・・・おい。」


手に槍を、背に長弓を背負った奴が口調で俺を呼ぶ。


「お前・・・名前はなんつーんだ?」


苛立ちを見せた顔と強い口調から悪態を突かれるかと思ったが、

声のトーンを落とし俺の名前を聞いてきた。


先程教室で自己紹介を済ませたはずだが声が小さかったのだろうか?

いや、今までの言動からして

自分が認めた者しか覚える必要がないと思っているのだろう。

あの時点でどれだけ大きな声を張ろうとも、

奴の耳に届かなかったはずだ。


「・・・上杉龍穂だ。」


俺は改めて名を名乗る。


「俺は北条綱秀(ほうじょうつなひで)だ。

・・・覚えとけ。」


俺の名前を聞いた奴は自らも名を名乗り

手に持っていた槍を地面に刺し、背負っていた弓を取り出し始める。


奴の姓である北条。

かつて築かれた幕府の執権を握っていた武家や、

戦国時代に活躍した武家と同じ姓だ。

もしかするとこの男はその武家の血を引いているのだろう。


北条家は武家が信仰する八幡神(やはたのかみ)を祀る

鶴岡八幡宮に深く関係している。

その血筋を引いているのであれば神降ろしが出来てもおかしくはない。


青さんの言うとおりであれば、八幡神の別称が誉田別命。

弓矢八幡と呼ばれ、その影響は神降ろしをした奴の姿に

しっかりと現れていた。


「龍穂。」


青さんが俺の名前を呼ぶ。

北条との戦いはここからだと言っている様だった。




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