意味が分かると怖い話 ~箱~

とりあえず 鳴

意味が分かると怖い話

「意味が分かると怖い話ってあるじゃん?」


「ある」


 それぐらいもちろん知っている。


 とんちの怖い話バージョンみたいなものだ。


「話していい?」


「やだ」


「俺の友達との話なんだけどな」


 こいつは実は耳が聞こえないとかいう意味が分かると怖い話なのだろうか。


 怖い話は得意ではないからほんとにやめて欲しいのだけど。


 まぁ『意味が分かると怖い話』には対処法がある。


 意味が分からなければ怖くない。


「冷蔵庫とかの大きい家電が入るダンボールって人も入れるじゃん?」


「ほんとに話すのな。まぁ入れるけど」


 めったに見ることはないけど、大きい家電や家具を買った時のダンボールは大人でも体育座りをすれば簡単に入れる。


「その友達の好きな人ってのが肌が白い子が好きなのな。ちなみにその子は肌が透き通るみたいに白いんだよ」


「ちゃんとご飯食べてるの?」


「知らない。確かにか弱いイメージだけど、普通に暮らせてるから平気じゃないか?」


 友達と言っておいてそこまで興味がないのは確かに怖い。


 つまりこの話はこれで終わ──。


「んで、その好きな子の誕生日に『プレゼントは私です』をやりたかったみたいなんだよ」


 る訳はなく、そのまま続く。


「実際それやられたら困る気がするけど」


「さすがに裸でリボンを巻くとかはしなかったみたいなんだけど、たまたまあった大きいダンボールに入って、中が見えないように目張りしたんだって」


「用意周到な」


「それで結果的にはその好きな子は白いその子を好きになって今も一緒の部屋に暮らしてるんだよ」


「ハッピーエンドじゃん」


 これなら別に怖いところなんてない。


 怖い話と思わせて、実は怖くないという、逆の意味で意味が分かると怖い話なのかもしれない。


「怖いだろ。まずその子はどうやってダンボールに入った後で目張りしたんだよ」


「それは他に協力者がいたんだろ?」


「それなら覗かれる心配なんかないだろ? もしも協力者がいたとして、その人からのプレゼントだとしたら、本人の前で中身を覗く必要ないんだし」


 それもそうだ。


 中身を覗くぐらいなら開けていいかを確認するはずだから。


「たとえ協力者がいたとして、目張りを頼まれた。でもそうなると場所はどこになる?」


「場所?」


「いくら女の子とはいえ、人が一人入ったダンボールを運ぶのは目立つし難しいだろ?」


「プレゼントってことにすれば出来なくはないだろ? それに、言っちゃえば部屋でなくてもいいんだし」


 ダンボールさえあれば正直どこでも出来ることだ。


「外だといきなり女の子が消えるから無理だろ。それなら直接告白した方のが早いし」


「口より行動派だったんだろ」


「まぁそのプレゼントを貰った人の部屋に置いてあったって聞いたから外は絶対にないんだけど」


「なら最初に言え」


 今までの全てを無駄にされた。


「つまり、大きいダンボールを持って、二人の人間が不法侵入したっていう話か?」


 確かに不法侵入は怖いが、思ってた怖いと意味が違う気がする。


「そこも確かに怖いけどさ、違うだろ。ダンボールはされてたんだぞ?」


「……」


 言いたいことはなんとなく分かる。


 だけどそんなの有り得ない。


「いくらか弱いって言ってもダンボールを突き破る力はあるだろ」


「普通ならあったかもな。でも気づいた時には遅かったとしたら?」


「た、たとえ家主の帰りが遅かったとしても、その人は好きになって、今も一緒に……」


「そう、その人は


 思わず生唾を飲み込んだ。


 しかも今も一緒の部屋で暮らしていると言う。


「一つ聞いていいか?」


「なんだ?」


「お前はなんでそんなに詳しく内容を知っているんだ?」


「……ははっ。そこが一番『意味が分かると怖い話』なんじゃないか」


 その瞬間俺の体に何かが被せられた。


 何か、が。


「次の怖い話になってくれ」


 暴れるがびくともしない。


 どうやらダンボールではなく、もっと頑丈な箱のようだ。


 いくら叫んでも反響するだけで何も変わらない。


 そしてだんだんと意識が薄れていき、そして途絶える。


 その先どうなったかはあいつと、次の被害者にしか分からない。

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意味が分かると怖い話 ~箱~ とりあえず 鳴 @naru539

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