群青の果てに

虹のゆきに咲く

プロローグ

雪と君が同時にふってきたよ。僕の中に


雪と私と同じ存在ですか


雪は加奈さんの象徴だよ

白く雪のような美しさ。いつまでも、ふれていたい


優一さん、そのような悲しいことを、おっしゃらないでください

雪はすぐ消えてなくなります。その儚さがわかりますか

どれだけ降っても、消えてなくなります


今日はどうしたの?


ごめんなさい


何を泣いているの


夢をみたのです

私が追いかけても追いかけても、優一さんが次第に離れて行って

私が追い付かなくて、優一さんはどんどん離れていって

私は途中で転んでも、優一さんは気づいていながら

まるで、何事もなかったように、走り去って

どうしても、どうしても追いかけても、追いつけないの

まるで、私の元を去っていくように

それでも、優一さんのことを想い続けて

でも……


どうしたの


いえ……

優一さんごめんなさい、暗い話をしてしまって


いや、悪いのは僕の方だよ

加奈さんに悲しい思いをさせてしまって

泣かないで、大丈夫だよ。僕が温めてあげるから



すべてはこの雪から君へ




  僕と加奈さんはある日スキー場に出かけていた。外は銀世界でスキーを終えたばかりの僕たちは、レストランで食事をすることになった。そして、彼女に話しかけた。



(時は永遠だった。)



「寒いからあのレストランで食事をしよう。そろそろいい時間だね。」

「はい。」

「ここは温かいね。」

「そうですね。」


レストランに到着すると、僕は恥ずかしげに彼女に話しかけた。



(愛とはお金で買えない。)



「ごめんね、お金があまりないからハンバーグ定食でいいかな。」

「優一さんが好きなものなら私も食べたいです。優一さんの楽しそうに笑った顔を見られることが一番幸せです。」



そう、彼女は優しく僕に話し返した。そして、話は続いた。



(時は永遠に続く)



「加奈さん、ありがとう、このハンバーグ美味しいね。」

「そうですね。」

「このハンバーグ定食ね450円なんだ安いよね。」

「美味しいです。」

「加奈さんはハンバーグはつくれるのかな? ごめん、こんな事をいうのは失礼だね。」


失言をしてしまった僕は、申し訳なさそうな表情をしていた。さらに会話は続いた。



(愛とは金ではない)



「はい、他にもいくつかはつくれます。」

「料理自慢なんだね。」

「いえ、大したことはないです。」

「今度ハンバーグ定食を食べたいな。」


 僕が甘えるように話しかけると。



(時は一瞬に輝いたとしても)



「どこで作りましょうか。」

「やっぱり、加奈さんの家かな。」

「そうですよね」……」

「どうしたの? 急に元気がなくなって、何か悪いこと言ったかな。」

「いえ……」


 彼女は突然涙を流し始めた。何かあるのだろうか。



(君を愛する)



「辛いのです。」

「どうして。」

「いろいろありまして。」

「そうなんだ、ごめんね。食べ終わったら寒いけど、外に出ようか。」

「外にでるのですか。」

「そうだよ。」

「寒いのではないですか。」

「寒いけど、大丈夫だよ。じゃあね、加奈さん、5メートル先で前を向いて立っていて。」

「このあたりですか。」

「もう少し奥の方かな。」

「外で何をされるのですか。」


 彼女は僕の指示に不安を感じたのだった。



(時の流れに身をまかせ)



「さあ、なんだろう秘密だよ。」

「怖いですか。」

「どうかな。」

「いえ、駄目です。怖いです。」


不安がる彼女に僕は優しく伝えた。



(悲しみがこようとも)



「大丈夫だよ、僕を信じて。」

「はい。」

「じゃあね、何も考えず後ろをみて。」

「何をされるのですか? 怖いです。」

「少し待っててね。」

「やっぱり怖いです。」

「大丈夫だよ。」


「いくよ。」


「え」


「キャ」


「冷たい、やめてください。」


「冷たかった?」

「はい、びっくりさせないでください。」


 僕は彼女に向かって雪玉を投げたのだ。すると、今度は彼女も投げ返した。



(君を愛する)



「じゃあ優一さん、ほら。」


「わあやめてくれ。」


「ふふふふ。」


「やったな、こら。」


「ほら。」


「キャ」


さらに僕たちはエスカレートしていったのだった。



(時は永遠だった)



「背中の中に入れたな。」

「それじゃあ、じゃあこれはどうだ。」

「わあ、そんなに駄目です。」


すると、突然に僕は真剣な表情になり、話を切り出した。何かあってのことだろうか?



(時は僕に君を教えてくれた)



「加奈さん。」

「どうしましたか? 優一さん、突然。」

「加奈さんの事を想うと、いてもたってもいられないんだ。好きで好きでたまらないんだ。時としてそれがとても辛くなる。」

「恥ずかしいです。」


「加奈さん後ろを向いてみて、もう雪は投げないから。いいから信じて。」

「はい。」

「もういいよ。」

「はい。」

「これを受け取ってもらえないかな? 僕と結婚してください。」

「私じゃ駄目です、私は体が弱いし女性として面白くないです。冗談も言えないのですよ。」

「そういう加奈さんが好きなんだよ。」

「今は自信がないことや事情があります。近いうちに必ず受け取りますから、もう少し待っていただけませんか。」

「わかった。僕もゆっくり待つから。突然でごめんね。」

「いえ、とてもうれしくて。」


 突然のプロポーズだったのである。しかし、彼女はすぐ受け入れられなかった。何か、事情があるのだろうか? 寒かったのでレストランに再度入った。



(愛とは決してあきらめてはいけない事)



「何か飲もうか。僕はコーヒー、加奈さんは。」

「私はお水でいいです。」

「どうして。」

「喉が乾いていないですし。優一さんに、無駄なお金を使わせたくないからです。」


僕の生活は楽ではなかった。そして、何かを伝えたかったのだった。



(時が二人を許してくれないとも)



「加奈さん、テーブルにグラスがあるよね。一番大きいのが僕だよ。中くらいのグラスが加奈さん。小さいのは誰だかわかる。」

「子供ですか。」

「そうだよ、僕たちは、あのグラスになるんだ。小さいグラスは増やしていけばいいよ。」

「はい、心のなかで受け止めます。近いうちにお願いします。」


僕たちに幸せが訪れるのだろうか。



(時が僕を忘れたとしても)



外は雪が不安げに舞っていた。



(僕は君を忘れない)

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