第39話 人間早々に【当たり前】と思ったことは変えられない
国王が変わったからと言って、国民に何かあるかと言うとそうでもなく。
ただ、止まっていた政策が進んで、「一人っ子政策」は撤廃となった。
おかげで一人っ子では無くなったので二人以上いても罰金は取られず済むため、田舎や地方では子供を増やす方向で進み始めたが、これが遅すぎる政策だったかもしれない。
それでも無いよりはマシ程度ではあった為、まだ子供が生める親は子供を増やす方向で行っているし、俺も「一人っ子政策」が無くなったことにホッとしている。
ヘロスもミルキィの護衛人形として側にいてくれるし、料理も作ってくれる為ちょっと俺にも余裕が出てきました。
余裕が出来ると、やはり気になるのは【応用人形】の事なのですが……余り派手に人形を作っても問題があるので、今はストップ。
其れよりは確実に稼げるメンテナンスの仕事をしている所です。
「ファンナルさんの所のロリシーのメンテナンスも終わった事ですし、今日の仕事はこれにて終了ですね」
「今後、奥さんに似せた人形作りは少なくなっていくのかねぇ……」
「いえいえ、需要はそのままでしょう」
「そうなのかい?」
「人間一度ついた【当たり前】と言うのは中々治りませんからね。一つの癖の様なモノでしょう」
「ふーん」
「娼館通いも今まで通りでしょうし、少し変わるとしたら、男性用避妊具が売れるというくらいでしょうね」
「そういうものかねぇ」
「少なからず俺はそう思いますよ」
そう、人間【こうするのが当たり前】と言うのが根深く残ると、それが【周囲の当たり前】だと認識し、行動するのが普通だ。
人にとっては当たり前でも、自分達にとっては当たり前でないとしても、多勢に無勢、少数派と言うのは何かとアレコレ言われやすい。
俺がミルキィの人形を作らなかったときもそうでした。
『奥さんの人形何で作らないの?』
『あった方が便利だし、皆作ってるよ?』
そう言われるのが【普通】なのです。
そこから外れるという事は、余程のことがない限り難しい。
俺のように『妻だけを愛しているので』と言う言葉が聞き入れて貰えない場合もある。
そういうのが【可笑しい】【変わっている】と捉えられる場合もあるのです。
普通でなくて大いに結構。
他人に迷惑をかける訳でもないし、言いたい奴には言わせておけばいい。
それが俺の本心ですが、ミルキィに対して攻撃されれば、俺だって牙を剥く。
妻を守るのは夫の役目。
夫を支えるのは妻の役目。
それは今も昔も変わらない。
ただ、俺達は『お互いを守りあい、お互いを支えあえる仲になれたら素敵だ』という考えでもある為、『普通一般的な』からは外れるのだろうなと思います。
「それに、昔からあるアレコレを変えるのは難しいですよ。男は自分の欲に忠実ですし、それを正当化するのも得意です」
「確かに言えてるね」
そんな事を言いつつ買い物を済ませ、ダーリンさんの所に持って行く分も済ませると、明日の朝にでも持って行こうと思いながら家路に着き、冷蔵庫にアイテムを入れていく。
この冷蔵庫はシュノベザール王国からの輸入品で、大体どこの家庭にもある一般的なもの。
数十年前、賢王と呼ばれた飢えた国民ばかりだったシュノベザール王国を何とかしようと頑張った国王がいるらしい。
今の国王の兄だと聞いているが、テリサバース教会が難癖をつけて神々の島に亡命したのは有名な話だ。
あの時、テリサバース教会に不信感を持った者はそれなりに多く、一国の王を亡命させるほどの嫌がらせをしたのだという噂はあっという間に広がった。
火消しに必死になったテリサバース教会だったが、今も尚その噂は燻っている。
『テリサバース女神の御威光でこの土地は光り輝く土地で――』
と言っていたテリサバース教会の総本山は、ここ10年程雷雨が続いている。
御威光も何もあったものじゃない。
それだけ女神を怒らせたのではないかと言われているのだ。
酷い言いがかりと嫌がらせだったと聞いているし、神が怒るのも仕方ないだろう。
「よし、仕舞い終わりましたね」
「なんじゃ、帰ってきっとったか。部屋の掃除は終わらせておいたぞ」
「ありがとう御座います。今日は鶏肉を使った料理にしようと思うんですが」
「なら私が箱庭に行って鶏用意してくるよ」
「助かります……出来れば妖精さん達の見てない所でお願いします」
「あいよ」
「首の無い鶏が駆け出して阿鼻叫喚になったことがあるからのう……マリシア頼むぞ」
「う……アレは手が滑ったんだよ。悪かったって」
そう言うとマリシアは鶏を絞めに向かった。
正直不安はあるが、この手の事はマリシアにしか頼めない為頑張って貰いたい。
「しかし、3月だというのに冷えますね。そろそろ温かさが恋しくなります」
「じゃが、温かくなったら途端に暑くなるからのう……」
「シュノベザール王国からの輸入品の『扇風機』を出さないとですね」
「アレはええのう。夏は冷たい風が吹いて、冬は温かい風が吹いて」
「改良を重ねて今があるって言う話でしたね。あれを考えたのも亡命した賢王だったとか」
「全く、そのままいて貰えたらもっと色々とあっただろうに、テリサバース教会は碌な事をせんのう」
「今では『テリサバース女神は信じるが、教会は信じない』なんて言葉もありますからね」
「いい気味じゃて」
そう思っていると家をノックする音が聞こえ、メテオは即座に隠れると俺はドアを開けた。
するとそこにはモリシュとモシュダール国王が立っていて、どうしたのだろかと思っていると――。
「夜分遅くに申し訳ない。古代人形達に知恵をお借りしたく」
「はぁ、ではご案内します」
「ごめんねぇ~~晩御飯時に来ちゃってぇ」
「急な案件なのでしょう?」
「ああ、私が国王になって早2か月だが、少々問題がな」
「直ぐご案内しましょう」
そう言うと地下室に降りて行き人形保護施設へと続く扉を潜り、俺が来た事を知らせる音が鳴り響くとダーリンさんが出て来てくれた。
そこで、明日渡そうと思っていた調味料などが入った袋を手渡すと「大変有難いです」と笑顔で受け取ってくれて、そのまま皆さんのいる大部屋へと向かった。
――陛下の顔色もあまりよくない。
――何か悪い案件なのだろうか?
そんな不安を感じつつ大部屋に到着し、会話がされる事となったのだけれど……。
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